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p.14 抽出テキスト

1980 年代後半から国内での脳死臓器移植実現への動きが活発化したものの,社会的議論が尽きない状況が続いた. 1990 年に,政府は臨時脳死および臓器移植調査会(臨調)を発足させ,1992 年に「脳死及び臓器移植に関する重要事項について」の最終答申で,脳死を人の死とすることにおおむね賛成し,臓器移植も容認するという内容が公表された.法制度化に向けて,1994 年に「臓器の移植に関する法律案」が国会に提出され,紆余曲折を経て1997 年6 月に成立に至った.1997 年10 月16 日に「臓器の移植に関する法律(以下,臓器移植法)」は施行され,わが国の心臓移植は法制度のもと再開となった.あわせて同年に日本臓器移植ネットワーク(JOT)が発足し,移植希望者の登録が開始された.

1999 年2 月28 日,臓器移植法に基づく再開心臓移植第1 例目が大阪大学で行われ12),同年5 月12 日,6 月13 日に国立循環器病センターで第2 例目,第3 例目が行われた13).以後も,年間5 例前後の心臓移植実施数が続いた. 2006 年に初めて年間10 例が実施されたが,移植希望者は増加する一方で,待機期間ばかりが延長する心臓移植医療では,依然として米国やドイツなどへの渡航移植が行われた.2008 年5 月に,国際移植学会は「移植が必要な患者の命は自国で救えるよう努力をすること」というイスタンブール宣言を表明し,これを機に国内での臓器提供数の増加に向けて,臓器移植法改正への動きが高まった. 2009 年7 月13 日に改正臓器移植法が成立し,2010 年

7 月17 日に施行された.旧臓器移植法では,臓器提供には本人の書面による提供意思表示と家族の同意が必須とされたが,改正臓器移植法では,本人の意思が不明な場合は家族による承諾のみで臓器提供が可能となり,また, 15 歳未満の小児からも臓器提供ができるようになった.この結果,改正前の12 年間で69 例であった心臓移植実施数は,法改正を契機に着実に増加し,2016 年には年間51 例,2023 年には年間115 例の心臓移植が実施され(図2),2023 年12 月までに累計819 例の心臓移植が実施された14).

1981 年のISHT 設立を受け,1982 年に日本心臓移植研究会が設立され,以後長らく日本の心臓移植において重要な役割を果たし,2024 年に日本心臓移植学会へと移行した.国内レジストリ報告によると,1999 年2 月~2022 年12 月まで704 例(成人および小児)において,死亡は62例(うち30 日死亡は5 例)で,5 年生存率は92.7%,10 年生存率88.7% と,長期生存率はISHLT からの報告と比べ,はるかに上回っており,日本の心臓移植の成績は世界的にみてきわめて優れている(図3)

14).18 歳以上の成人心臓

移植(636 例),18 歳未満の小児心臓移植(68 例)に分けてみても,同様にISHLT 報告をはるかに上回っている14).移植待機患者は2024 年6 月時点で835 人で15),そのほとんどが植込型VAD を装着した状態で待機している.移植

1988 1989 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017

その他北米欧州

6000 5500

5000 4500

4000 3500

3000 2500

2000 1500

1000 500

0

移植実施数

(年)

図1 世界の心臓移植実施数(成人および小児)の年次推移注:レジストリ登録された心臓移植実施数であり,必ずしも世界の心臓移植実施数を正確に反映していない可能性がある. (International Society for Heart and Lung Transplantation (ISHLT). 2019

7)より)