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問題,さらには就職先が心臓移植患者に対する理解が十分ではないこともあり,移植後の就労への壁は低くない605). しかし,移植前のVAD 装着中から就労を継続できていた患者は,移植後も復職できることが比較的多いため,移植前から可能な範囲で社会との繋がりを残しておくことが肝要と考えられる529).身体障害者の枠を利用したり地元のハローワークを積極的に利用したりすることも有効である.障害福祉サービスによる就労支援事業などを利用するのもよい.一方で心臓移植後の患者に対して一定の配慮が必要なことも事実であり,社会への啓発活動に力を入れていく必要もある. 2.2 身体活動 心臓移植後は心機能が劇的に改善するため,日常の身体活動は大幅に広がることになる.移植前にVAD を装着していた場合はドライブラインやデバイスの管理などさまざまな制約があったため,これらの制限からも解放されることになり,さらにQOL が向上する606).一方で,長年心不全を患っていたために全身の骨格筋筋肉は著しく低下しており,心機能が改善している割に運動耐容能はかならずしも期待通りではない点にも注意を要する607).心臓移植によって心臓は除神経化されており,運動中に心拍数追従が不十分であったり,また運動後の心拍数の低下に時間がかかるため,注意を要する608).これらの問題は積極的に運動に従事したり,心臓リハビリテーションプログラムに参加したり,時間経過とともに心臓神経が発達するにつれて改善していく502, 609).家族や職場は,心臓移植後,ただちに運動耐容能が健常人と同等になる訳ではない点を理解する必要がある. 2.3 日常生活 日常生活を送るうえでの注意点や禁止事項を表32 に記す.心臓移植後,心機能自体は改善していても運動耐容能や骨格筋筋力はかならずしも正常化しておらず,健常人と同等ではない点に本人も周囲も理解しておく必要がある. 健常人との相違として重要なことに,免疫抑制剤を終生にわたって内服することがあげられる. 生活面では,禁酒禁煙を遵守して規則的な生活を送り,免疫抑制剤をはじめとする内服を決められた時間に服薬する必要がある.また周囲もその配慮が必要である.移植後は,易感染性の状態にあるため,特に術後早期の免疫抑制剤の服用量が多い時期には表32 に示す,生ものの摂取やペットの飼育などの禁止事項のみならず,手洗い・うがいの励行,また住居や職場も清潔に保つなどの注意事項も徹底が望ましい. 免疫抑制剤としてEVL を内服している場合は創傷治癒が遅延しており,侵襲的な治療を行う際には配慮が必要となる610).妊娠や出産に関しては専門医との十分な事前協議が必要であり611),免疫抑制剤によっては胎児へ悪影響を与えるものもある.具体的には,MMF は形態異常誘発性をもつことが知られており,妊娠初期への投与は行うべきでないと考えられている.CNI は形態異常誘発性・胎児毒性のいずれも強くはなく,かならずしも禁忌とは考えられていない.一方で,心臓移植患者における妊娠・出産は拒絶反応の発生率を上昇させることが知られており,妊娠・出産の可否について主治医と十分に検討したうえで計画する必要がある. 表32 心臓移植後の注意・禁止事項 注意事項 免疫抑制剤の定期的な内服手洗い・うがいの徹底住居や職場を清潔に保つ妊娠・出産は主治医と相談するバランスの取れた食事を心がける適度な運動習慣を心がける禁止事項 生もの摂取飲酒・喫煙や暴飲暴食免疫抑制が強い時期のペットの飼育グレープフルーツジュースの摂取