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6 慢性期管理

小児心臓移植を受ける患児は,幼少期からの心不全症状に伴う身体的・精神的抑圧を経験し,繰り返す入院・検査・治療に伴う苦痛などがその発達・発育に与える影響は小さくない.本来,毎日経験すべき集団生活での同世代の友達とのやり取りは極端に減少し,医療者(大人)とのやり取りが主体となってしまう.その結果,言語性認知能力は維持される傾向にあるが,非言語性認知能力の停滞が問題となる.このような身体的・精神的な後退を心臓移植後に取り戻す努力も重要だが,心臓移植待機期間中に医療者が意識して患児たちと向き合っていく努力が必要である.院内の循環器小児科・心臓血管外科以外の専門医,看護師,チャイルド・ライフ・スペシャリスト,臨床心理士,院内学級スタッフはもとより,地元の小児科医,教育機関との連携も重要である.

幼少期に心臓移植を受けた患児にとっては,移植後の経過年数が長くなればなるほど移植医療を受けたこと,命をつないできた気持ちは遠い記憶となってしまう.中学,高校と進学支援をしていくことと同時に,成人診療科への移行を念頭に,自身の体調を自分で管理できるように,保護者と相談しながら進めていく.診察時の説明を自身で聴取し,家人に説明できるように進めていく必要がある.保護者はこれまでの大変であった闘病生活のため,無意識のうちに過剰な保護につながる傾向がある.この傾向は決して患児の自立を支援するものではないことを誤解なく保護者と共有し,成人診療科への移行を進めていきたい.また,性教育についても感染経路や予防方法を含めて理解できるよう,チームで取り組んでいく必要がある.

なお,感染症,合併症,精神的ならびに身体的成長の問題593)に関しては,1.6 感染症,1.7 合併症,1.8 精神的・身体的成長の問題にそれぞれ詳述した.

第8章 心肺同時移植

1 歴史的側面

世界最初の心肺同時移植手術成功例はスタンフォード大学のShumway とReitz らのグループにより1981 年に実施されたが,それ以来,心肺同時移植は末期重症心肺機能不全に対する確立された治療として行われている594, 595). ISHLT におけるレジストリデータ7)によれば,1982 ~ 2015 年に成人症例に対して実施された心肺同時移植総数は3,879 例に達した.その間,1989 年は年間226 例実施され最多年度となったが,その後は減少に転じ,2005 年以降は100 例未満で推移していた596)(図35) 7).また小児心肺同時移植数についても同様の傾向がある(図36) 7).その理由として,肺高血圧症と心不全のそれぞれの治療が進化したことで,それらの内科的治療と心臓,または肺移

植の組み合わせが可能となり,それにより心肺同時移植を回避できる症例が増えたためと考えられている.

しかしながら,このガイドラインの前身である「2016 年版心臓移植に関する提言」1)が発表されて以降,世界では心肺同時移植実施数が少しずつ増加に転じており,特に症例数の多いハイボリュームセンターにおける年間移植数の増加が報告されている597).2020 年以降には,脳死ドナーからの臓器提供に加え,DCD からの心肺臓器提供が加わっていることも影響している.一方で小児では, 1987 ~2018 年の期間に573 例の心肺同時移植候補者がUNOS に登録されたが,移植実施は209 例であった.この数字は移植待機期間における治療の困難さを物語るものである598).

心肺同時移植の適応としては,成人では特発性肺動脈性肺高血圧が約40% ともっとも多い597).小児でも同疾患が