p.103 抽出テキスト
手術到達率は70% 前後とprimary Norwood 手術,左心低形成症候群に対するhybrid 手術のいずれの治療戦略においても,いまだ良好とはいえない575, 576)(図34A,B).近年,本疾患群に対する積極的治療として,心機能や合併した形態異常から患者層別化を行い,早期のVAD 装着から心移植を目指す報告もある577).単心室におけるVAD 治療成績は,未手術血行動態で比較的安定した成績が報告される.一方,おそらくは低酸素血症の進行のためGlenn血行動態(図34C)で不良で578, 579),shunt 血行動態へのtake-down あるいは,Fontan 循環(図34D)へのアップグレードの同時施行が必要と考えられている. 4 心臓移植手術 4.1 手術の特徴 小児心臓移植の手術手技は基本的には成人の心臓移植手技と同様であり,biatrial 法(Lower-Shumway 法) 580)またはbicaval 法581)が基本となる.しかし小児心臓移植は,成人心臓移植と異なる下記のようないくつかの特徴を有するため,それらに対応した移植手技が必要になる. 1小児心臓移植の対象疾患は心筋症以外に先天性心疾患,特に複雑心疾患症例が多く,その解剖,病態が成人に比べはるかに複雑であり,各症例の解剖学的特徴に応じた手術手技が求められる. 2ドナーとレシピエントの体格差については,小児心臓移植のドナー不足は成人以上に深刻であり,より長い総虚血時間やサイズミスマッチなどを許容せざるを得ないことがある.体格の指標としては一般的に用いられている体重, BSA のほかにpredicted LV mass(PLM) 582),total cardiac volume(TCV) 45, 583)などが提唱されているが,もっともよい指標がどれであるかは,明確なコンセンサスはない.また,特にレシピエント側は栄養状態不良のため,本来の体格に比して体重が不均衡に軽いことも多く,マッチするドナーの選択には注意を要する. 小児においてはおおむね,レシピエント側の心臓が拡大して心嚢が大きいことが多く,ドナー・レシピエント体重比で最大300% までの体重サイズミスマッチが許容されることがある584).また,ドナー・レシピエント体重比80 ~ 200%,TCV 比100% 未満では,術後急性期死亡のリスクが低いことが示されている583).逆にドナーが小さい場合は術後の拡張障害,心不全に注意する必要があり,ドナー・レシピエントの体重比で85 ~90% 以上が望ましい582).特に,Fontan 患者などでは側副血行路が多く,術後の心拍出量を維持するために大きめのドナーを選択するのが望ましい. 4.2 手術手技 小児では上記の特徴を十分理解したうえで,綿密な手術計画を立てる必要がある. ドナー心摘出においては,小児ドナーでは卵円孔や動脈管開存例が多いため,必ず確認しなければならない.疾患によっては,大動脈,肺動脈,大静脈などの再建を要するので,レシピエントの欠損部分をドナーから採取する必要があり,肺摘出チームとの連携が重要である. 移植手術においては,心筋症ではあまり成人と差はないが,小児では肺血管抵抗の高い症例が多いため,biatrial法よりも移植後の三尖弁逆流が少ないbicaval 法が多く用いられる.しかしサイズミスマッチのある症例ではbiatrial法も有用である. 図34 左心低形成性症候群に対する手術 Norwood 手術(A),hybrid 手術(B),両方向性Glenn 手術(C)および心外導管を用いたFontan 手術(D) A B C D