p.102 抽出テキスト
3.2.3 長期入院 EXCOR R体外設置ポンプは血液chamber と空気chamber が3 層の膜で接しており,血液chamber は送脱血管を介して左室心尖(または左房)と上行大動脈につながっている.血液は左室→EXCOR Rポンプ→上行大動脈の一方向に流れるように血液chamber と送脱血管の接続部には一方向弁が付いている.駆動装置であるEXCOR ® Ikus (Ikus 駆動装置)内のコンプレッサーから空気圧が空気chamber 内に送られることで血液chamber 内の血液が駆出される.このIkus 駆動装置は重量が100 kg 以上あり,またバッテリー駆動時間は30 分と移動に適さない.そのため長い移植待機期間中,患児(と施設によっては付き添いの家族)は院内で過ごす必要があり,集団生活や社会体験の欠如が,移植後の社会復帰や登校の妨げとなることが懸念されている.Ikus 駆動装置はすでに2023 年末の時点で製造中止になっているが,同時点ですでにEU38 ヵ国では後継機であるEXCOR R ACTIVE 駆動装置の臨床使用が開始されている.わが国でも2024 年11 月に薬事承認されたこのEXCOR R ACTIVE はバッテリーを含めた総重量が15 kg とコンパクトで,キャンディーに乗せて固定することができる.バッテリー駆動時間は両心サポート状態でも6.2 時間,左心補助では約10.7 時間とされている.メーカーの推奨はないが,本システムを用いた「在宅体外設置型VAD プログラム」の試みも紹介されており569),体格や血液型によっては,長期のVAD 装着下移植待機を強いられる患者とその家族に対応するための1 つの解決策となる可能性がある.実臨床使用が期待されていた小児用植込型VAD であるJarvik 2015 に関する臨床治験は,製造元の経済的理由などで7 例目をもって保留となっている570). 3.3 両心室補助人工心臓(BiVAD) 従来その治療成績は,LVAD に比し不良とされてきたBiVAD 治療に関し,患者背景を傾向スコアによるマッチングを行うことで,生存率に有意差を認めないことが報告された571).しかし,本検討結果は,2:1 マッチングによりサンプルサイズが小さいこと,追跡期間が6 ヵ月と短いこと,そしてマッチングを行うことで,結果的に「拡大適応として」不要なBiVAD 治療を選択された症例が多く含まれる可能性があることなどから,懐疑的な見方もある.実際BiVAD 治療が選択される症例は年々減少しており572),最新のPedimacs,paedi-EUROMACS の両解析でも治療成績は劣性であることから,その適応と治療効果に関し,今後の検討が待たれる573, 574).現在のところ,実臨床においては長期に渡るBiVAD 装着下での心室間相互作用調節の複雑さと,LVAD 治療長期化で増悪する右心不全の存在も考慮したVAD 治療戦略が必要となる. 3.4 単心室補助 先天性心疾患に対するVAD 治療において,単心室血行動態に対するVAD 治療成績が二心室血行動態に対し非劣性であることが報告されている573).Fontan 循環成立後の単心室機能不全へのVAD 治療成績は,比較的良好であると従来から報告されてきたが572),段階的Fontan 治療戦略におけるinterstage でのBTT としてのVAD 装着も,その治療成績が向上している.単心室,とりわけ左心低形成症候群に対する治療成績は向上したが,5 年生存率とFontan 1.0 0.8 0.6 0.4 0.2 0.0 1 year: 95.9% 2 years: 89.1% 3 years: 71.4% Overall survival Pt at risk 133 0.00 67 1.00 27 2.00 10 3.00 2 4.00 2 5.00 6.00 Years after Excor implantation 図33 EXCOR R Pediatric 装着後生存率株式会社カルディオ.EXCOR Pediatric Summary Report in Japan【No.27】より解析.