p.101 抽出テキスト
療のデバイス選択は40 kg 以上の思春期・若年成人(AYA)世代では成人に準じ植込型を選択する.40 kg 未満,特に30 kg 未満またはBSA 1.0 未満の小児例へのHeartMate 3 R植込みは可能ではあるが,検討を要する562).小型軽量で小児例への適応を考慮されるEVAHEART ® は従来品の問題点を解消したEVAHEART2 Rの,HeartMate 3 Rに対する非劣性を比較検討中である563).それ以下の体格では新生児から使用可能な体外式拍動流型VAD であるBerlin Heart 社製のEXCOR R Pediatric を装着する(図32) 564). 3.1 EXCOR R Pediatric 2010 年に改正移植法が施行され,小児心移植の増加とその橋渡し(bridge to transplant: BTT)治療の必要性に対応するため,体格の小さな小児用VAD の臨床使用が急務となった.EXCOR RPediatric は2012 年から施行されたわが国における臨床治験9 例でその安全性が確認された後,2015 年6 月保険承認,同8 月償還に至った565).2024年5 月までの9 年間に,上述治験9 例を含む延べ127 例(3 例は同一症例の再装着)に対し植込みが行われ,装着時年齢は0 歳53 例(41.7%)ともっとも多く,以降1 ~2 歳36 例(28.3%),3 ~5 歳18 例(14.2%),および6 歳以上20 例(15.7%)であった.このうち58 例(46.8%)が心臓移植に至っており(国内41 例,渡航17 例),国内移植までの装着期間は平均577 日(範囲:45 ~1851 日),1 年7 ヵ月であった.2024 年6 月1 日時点で22 例が機械的循環補助を受けながら心臓移植待機中である.期間内の離脱は再装着の3 例を含む25 例,死亡は12 例であった.生存率は1年95.9%,2 年89.1%,および3 年71.4% と良好である(図33). 3.2 EXCOR RPediatric 補助下での心臓移植待機の問題点 体外設置型VAD 装着下の心臓移植待機では,人工臓器材料と血液の接触による血栓形成促進に伴う合併症のほかに,体表を貫いて送脱血管が体外に露出することによる感染症,および長期入院管理に伴う諸問題がある. 3.2.1 抗血栓関連 術後急性期のヘパリン持続静注による抗凝固治療の後,ワルファリンによる抗凝固療法とアスピリンによる血小板凝集抑制療法を継続するが,過凝固に伴う遊離血栓による(主として脳血管)塞栓症と,PT-INR 過延長による出血が問題となる. 脳血管関連イベントは装着早期に多く566),遠隔期の発生はポンプ交換に伴う傾向がある567). 3.2.2 感染 送脱血管が腹壁を貫通する部分(刺入部)の感染は,深刻化すると縦隔洞炎や血流感染から敗血症や心尖カフ縫着部・送血管- 大動脈吻合部の破綻に至る致死的合併症となる568).刺入部の清潔を保つとともに同部の皮膚の安静を保つことも重要で,デバイスの固定やポンプの振り子運動の防止に工夫を要する.待機期間の延長から長期VAD 装着を余儀なくされる患者での刺入部感染は,増加する傾向にある567). A B 図32 EXCOR R Pediatric のポンプ(A)と駆動装置(Ikus) (B) (B はToda K, et al. 2024 564)より抜粋)