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p.60 抽出テキスト

血行路の発達による右左短絡が生じ,軽度チアノーゼの原因となる.これらの問題が永続することにより,フォンタン循環に特有の合併症/続発症が発生する190). a. 心機能障害

術前の低酸素や容量負荷の影響,複数回の周術期の侵襲による心筋障害,刺激伝導遅延や心臓同期不全(房室間,心室間,心室内),房室弁逆流などさまざまな要因で,フォンタン術後早期から慢性心不全状態が持続する.また頻脈性不整脈(上室性頻拍が多い),徐脈性不整脈(洞機能不全,房室ブロック)も生じやすい.フォンタン循環の破綻を防ぐためには,成長に合わせて心機能を評価し,積極的に心不全治療,不整脈治療を導入する必要がある. b. 血栓症と出血

フォンタン循環では血栓形成のリスク要因である血液凝固能亢進,血管内皮機能異常,血流性状異常(Virchowの三徴)を満たしやすい状況にある.血栓/出血の合併率は6 ~7%と比較的多い.血栓形成は術後1年以内と術後15年以上の遠隔期に多く195),大規模な血栓症発症時の死亡率は25%にも達する.出血は体肺側副血管が原因となる喀血や脳出血が多く,術後遠隔期に増加する.術後早期には血栓予防は必須であるが,抗血小板療法と抗凝固療法に有意な差はないとされる196).ただし,心機能低下や不整脈,狭窄など,フォンタン循環になんらかの不都合がある場合には,抗凝固療法が推奨される.長期管理においてはいまだ決まったプロトコールは存在しない.成人では,フォンタン術後も含む先天性心疾患で直接経口抗凝固薬(DOAC)の有効性が示されつつあるが197),小児では有効性,安全性ともに使用経験が不足している. C. 蛋白漏出性胃腸症

リンパ流のうっ滞により腸リンパ管から蛋白質が腸管内に漏出する病態である.中心静脈圧の上昇と小腸毛細血管の炎症が主要因とされる.発症率は5~15%で,非心血管合併症/続発症の中ではもっとも頻度が高い.蛋白漏出による低栄養,易感染性が問題となる.以前は発症後の5年生存率は50%未満で予後不良とされたが,近年は90%以上に改善している198).ただし,再燃と寛解を繰り返して難治となることも多く,最終的に予後不良となることも少なくない. D. フォンタン関連肝臓病(FALD)

肝うっ血による類洞の拡大および微小血栓形成との関連が推定され,肝線維化にはじまり,肝内結節,肝硬変,門脈圧亢進や肝臓癌に進行する続発症である199).肝硬変の合併率はフォンタン術後10年,20年および30年にそれぞれ1%,6%,43%,肝癌合併率は術後20年,30年で1.6%, 5.7%であり,いずれも予後不良である200, 201).発症/進行を抑制するには,低い中心静脈圧を維持し,肝うっ血を軽

減する.早期発見,介入のために,血液検査による肝臓線維化マーカー,肝臓超音波検査での監視が望ましく,就学後は小児循環器医のみならず消化器専門医による定期的な経過観察が望まれる202).

5.1.3 学校心臓検診での注意点

新生児~乳幼児期までに診断され,就学前までには大部分がフォンタン循環まで到達する.一部の症例では条件が整わずに最終手術まで到達できていないこともある.いずれにしても就学以降も専門医による厳格な定期検診が継続されているはずであるが,さまざまな事情で定期検診が途絶えている可能性がある.学校心臓検診では未治療,姑息術後,フォンタン到達の有無にかかわらず,全例が抽出対象である.問診票の記載内容を十分に確認し,定期検診の記載に関して不確実な部分がある場合には,安易に「経過観察中のため精検不要」とはせずに,2次検診もしくは管理している病院での受診を指導する.

5.1.4 学校生活管理指導

区分の決定に際しては,治療経過や現在の血行動態,合併症/続発症の有無も含めて個々に検討する必要がある.フォンタン循環患者では低心拍出量と心拍数増加不足がおもな要因となって運動耐容能は低下しており,心肺運動負荷試験で測定できる最高酸素摂取量(peak VO2)は通常60%程度とされる203).それぞれの運動耐容能に応じて運動強度を設定するが,安易な運動制限は避けなければならない.適切な運動習慣の確立により得られた骨格筋の筋肉ポンプや心肺機能の向上は,良好なフォンタン循環の維持に有効に働く.また,肥満,高血圧や糖代謝異常などの生活習慣病予防は良好な心血管機能維持につながる.ただし,マラソンなど長時間にわたって強い心負荷がかかり続ける競技は,フォンタン循環の破綻を助長するので留意する.また,不整脈を有する場合には,発作により血行動態を悪化させやすく,突然死の原因ともなりうるため,しっかりとした監視体制のもとでの活動が望ましい.ペースメーカ植込み手術や抗血小板/抗凝固療法が行われている場合には,外傷を受けやすい競技,他人と接触の多い競技(コンタクトスポーツ)は控えるよう指導する(推奨表21).