p.56 抽出テキスト
4 左右短絡性心疾患の管理 4.1 心房中隔欠損症(ASD) 4.1.1 概要 先天性心疾患は,多くが乳幼児期に診断・治療される.就学以降ではじめて診断されることは少ないが,心房中隔欠損症(ASD)は早期診断されにくい代表的な先天性心疾患である.学校心臓検診制度が確立したわが国では,小児期に治療を受ける患者の約40%が心電図スクリーニングにより診断され,就学期以降にしぼると約90%が学校心臓検診の心電図により発見されており178, 179),ASD診断において学校心臓検診が果たす役割は大きい.一方で,治療適応のASDが小児期には発見されずに成人まで持ち越す症例も少なくなく,わが国では約15万人以上の成人ASD症例が存在すると推定されている180). ASDの自然歴については不明な点が多いが,治療適応例が未治療の場合,20歳までは年間死亡率0.6~0.7%と経過は良好であるものの,その後は悪化の一途をたどり, 27歳までに25%の症例が,36歳までには50%の症例が死亡し,60歳では90%が死亡する181).また,外科手術を行う場合には25歳までに行ったほうが手術後の成績が良好との報告がある182).可能であれば成人までに診断,治療されることが望ましいことはまちがいなく,学校心臓検診におけるASD抽出のいっそうの精度向上が望まれる. 4.1.2 治療の変化 2005年にわが国にカテーテル手術が導入されてから20年が経過しようとしており,二次孔欠損に対する手術の第 一選択は開胸を伴う外科手術から低侵襲のカテーテル手術に置き換わった.近年では,年間1,500件程度が施設および術者基準を満たした認定施設で施行されている.2024年時点で,わが国ではワイヤーメッシュ型デバイスであるAmplatzerTM Septal Occluder(Abbott,USA,2005)およびOcclutech Figulla ® FlexII Occluder(Occlutech,ドイツ, 2016),ワイヤーフレーム型デバイスであるGORE ® CARDIOFORM ASD Occluder(GORE,USA,2021)の3種類が使用可能であり,欠損孔の特徴(位置,大きさ,周囲縁の有無など)によって適切なデバイスを選択する183). 治療適応としては肺体血流比 ≧ 2.0 が絶対的治療適応とされてきたが,カテーテル治療の普及により治療基準は引き下げられる傾向にあり,肺体血流比 ≧ 1.5もしくは心臓超音波検査で明確に右心系の拡大を認める症例は積極的に治療適応と考えられるようになった. カテーテル手術が施行困難とされる症例(欠損孔径が38 mm以上,前縁以外の周囲縁が乏しいなど,また部分肺静脈還流異常など修復が必要なほかの形態異常を合併する症例)では,外科手術を選択することになる.適応を慎重に判断された二次孔欠損のカテーテル治療の成績は,外科手術と同等と報告されている184). 4.1.3 学校心臓検診での注意点,抽出のための新しい心 電図所見 ASDに特徴的な心電図所見は従来から報告されており,不完全右脚ブロック(とくにV1誘導のrsR′パターン),右軸偏位,左側胸部誘導のT波異常(V4の陰性T波もしくはT波不連続性),II,III,aVF誘導のcrochetage pattern(R波の頂点近くで急速に上下し,M型もしくはノッチを形成する特徴的な波形,とくにII誘導で特異度が高い),V6の幅広いS波,aVF誘導のST低下などがあげられている. 推奨表18 心筋炎の管理指導区分の条件と観察間隔に関する推奨とエビデンスレベル 管理指導区分の条件管理指導区分観察間隔推奨クラスエビデンス レベル 急性期を過ぎて活動性が消失した有症状の急性心筋炎患者C 禁1~3ヵ月I C急性期を過ぎて活動性が消失した無症状の急性心筋炎患者D 禁またはE 可またはE 禁3~6ヵ月IIa C 有症状の慢性活動性心筋炎患者C 禁1~3ヵ月I C 無症状の慢性活動性心筋炎患者D 禁またはE 可またはE 禁3~6ヵ月IIa C