p.55 抽出テキスト
慢性活動性心筋炎は,突然死,うっ血性心不全症状,不整脈,遷延する易疲労,呼吸困難,体重増加不良などの症状があり,拡張型心筋症の病態を呈する.不顕性に発症し発病時期がはっきりしない型と,急性心筋炎が遷延する型とがある.治療困難で予後不良の疾患である. 学校心臓検診が行われる数年間のみの不整脈や心筋障害の所見が発見される場合は,可能性として心筋炎の関与が考えられる. 3.5.2 1次検診抽出基準 1次検診抽出基準を以下に示す. (1) 感冒罹患中または罹患後に頻脈,不整脈,浮腫,呼 吸困難,意識低下,失神,心拡大などの心不全症状がみられた場合には運動参加を見合わせ,循環器専門医を受診させる. (2) 胸部聴診で,洞頻脈,心音の微弱,奔馬調律を聴取 する.完全房室ブロックを伴う例では極度の徐脈となる. (3) 心電図はST-T変化,異常Q波,低電位,脚ブロッ ク,房室ブロック,心室期外収縮の多発や心室頻拍など多彩な所見が短時間に変化しながら出現する. 3.5.3 2次以降の検診で必要な診察・検査項目 2次以降の検診では,問診,聴診,12誘導心電図,心エコーを行う. 3.5.4 2次以降の検診で専門医紹介を必要とする所見 以下に該当する場合は専門医に紹介する. (1) 心電図: 脚ブロック,房室ブロック,期外収縮の頻 発や心室頻拍などの不整脈,ST-T変化,異常Q波,低電位(2) 問診票: 胸痛,動悸,失神など比較的突発的な症状 3.5.5 管理指導区分決定のための取扱い 急性心筋炎と判断される例は,すべて入院治療とし,下記のような精査を行う. (1) 心エコー: 心室や心房の拡大,壁運動の低下,心嚢 液の貯留,一過性心筋肥厚,乳頭筋不全による房室弁逆流(2) 心臓核医学検査: 急性期に67Ga心筋シンチグラフィ, 99mTc心筋シンチグラフィでの陽性像, 111In-抗ミオシン抗体の集積像,急性期から遠隔期にかけての201Tl心筋シンチグラフィでの欠損像による病変部位の診断(3) 心臓MRI: Gd造影によるLGEにおける信号強度の増強像,T2強調画像で炎症部位の浮腫を反映した 高信号の確認が重要(4) 心内膜下心筋生検: 炎症性細胞の浸潤,心筋細胞の 融解や変性,断裂,消失,間質の浮腫や線維化急性心筋炎では,光学顕微鏡下の評価で,大小の単核細胞の集簇あるいは浸潤とそれに近接する心筋細胞の融解消失や壊死が観察される.線維化の有無は問わない.心筋生検を施行できない場合においても,通常は高感度心筋トロポニンの上昇を伴い,発症から30日未満に施行された心臓MRIで浮腫を示唆する所見を認める. 慢性活動性心筋炎では,心筋壊死を含めた心筋細胞傷害を認める.本所見を認めない場合においても,心筋細胞傷害を反映するトロポニン値の持続的上昇,あるいは心筋組織における強い炎症を反映するテネイシンC(4C8)の陽性所見や,CD3陽性T細胞 ≧24/mm 2(5.8個/HPF)の浸潤所見を呈する場合は,慢性活動性心筋炎の可能性がある175). 3.5.6 管理指導区分の条件と観察間隔 管理指導区分の条件と観察間隔を以下に示す. (1) 急性期を過ぎて活動性が消失したと判断されれば, 拡張型心筋症の項に準じて運動許容条件を判断する.無症状: DまたはE(観察間隔: 3~6ヵ月),有症状:C(観察間隔: 1~3ヵ月) (2) 慢性活動性心筋炎では,無症状: DまたはE(観察間 隔: 3~6ヵ月),有症状:C(観察間隔: 1~3ヵ月).原則として高強度の運動や学校の運動部は禁止する.心筋炎の「診断」および「管理指導区分の条件と観察期間」に関する推奨とエビデンスレベルを推奨表17,18にそれぞれまとめた. 推奨表17 心筋炎の診断に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 心臓MRI 検査を行うことを考慮する. IIa A 心内膜下心筋生検を行うことを考慮する. IIa C