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p.54 抽出テキスト

3.5 心筋炎172-177)

3.5.1 概念

心筋炎は心筋を主座とした炎症性疾患であり,さまざまな病態が含まれる疾患群である.感染,薬物への曝露,免疫系の賦活化などの結果として生じ,炎症細胞浸潤と心筋細胞傷害(炎症細胞に近接する心筋細胞の変性および壊死)を病理学的な特徴とする.心膜まで炎症が及ぶと,心

膜心筋炎と呼ばれる.心筋炎の臨床像,臨床経過は幅広いスペクトラムを呈する.

日本循環器学会「2023年改訂版 心筋炎の診断・治療に関するガイドライン」では,従来の同ガイドライン(1996年版,2004年版,2009年版)で「慢性心筋炎」と表記していた疾患概念を「慢性活動性心筋炎」として再定義している.

急性心筋炎の多くはウイルスなどの感染を契機に発症し,発症から30日未満で,心筋生検にて活動性心筋炎の特徴を呈する.病因としては,B型コクサッキーウイルスなどのエンテロウイルスによる感染がもっとも多い.急性心筋炎は若年者の心臓突然死の重要な原因で,日本小児循環器学会の希少疾患サーベイランス152)でも,9年間で478人のうち約10%が死亡している.心筋炎の多くは上気道感染症や消化器感染症などの先行感染症ののち,数日して,全身倦怠感,不機嫌,呼吸困難など,非特異的な症状で発症することが多い.初発症状が不整脈(ストークス・アダムス発作で発症する完全房室ブロック,心室頻拍または上室頻拍)のこともある.

慢性活動性心筋炎は発症から30日以上,持続的に心筋炎症が残存し,心筋壊死を含めた心筋細胞傷害を伴うものと定義する.しばしば心不全や不整脈をきたし,拡張型心筋症に類似した病態を呈する.不顕性に発病して慢性の経過をとるものと,急性心筋炎が持続遷延するものとがある.

推奨表15 心筋症の診断に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

心筋症患者の第1 度近親者に対する臨床的スクリーニングを行う. I B肥大型心筋症患者において遺伝学的検査*を行う. I B肥大型心筋症患者の原因変異が同定された場合,第1 度近親者に遺伝学的検査を行う. I B心筋症患者において心臓MRI 検査を行うことを考慮する. IIa B小児心筋症患者は専門施設にて総合的な評価ならびに診療を行うことを考慮する. IIa C *2024年10月時点で,わが国では心筋症に対する遺伝学的検査は肥大型心筋症を除き保険未収載である.

推奨表16 心筋症の管理指導区分の条件と観察間隔に関する推奨とエビデンスレベル

管理指導区分の条件管理指導区分観察間隔推奨クラスエビデンス

レベル

高リスクの肥大型心筋症患者A 禁,B 禁またはC 禁1ヵ月I C胸痛や失神などの症状がある例および閉塞型の肥大型心筋症患者B 禁またはC 禁1ヵ月I C

有症状の拡張型心筋症患者C 禁1ヵ月I C

無症状の拡張型心筋症患者D 禁6ヵ月* I C

有症状の拘束型心筋症患者C 禁1ヵ月I C

無症状の拘束型心筋症患者D 禁1~3ヵ月I C有症状の心機能が低下した心筋緻密化障害患者C 禁1ヵ月I C無症状の心機能が低下した心筋緻密化障害患者D 禁3ヵ月* I C *心機能低下に対する内服治療を実施している患者については,この限りではない.