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p.38 抽出テキスト

1.2.3 EPSによる突然死のリスク評価

2022年の欧州心臓学会(ESC)のガイドライン83)では, EPSによるファロー四徴症術後の突然死のリスク評価は,不整脈症状に伴い非持続性心室頻拍(NSVT)を認める場合には推奨クラスIIa,不整脈症状は認めないが複数の突然死のリスクを認める場合には推奨クラスIIb,外科的あるいは経皮的肺動脈弁留置術(TPVI)に先行するアブレーション治療を含めて施行する場合には推奨クラスIIbとされている.この場合の突然死のリスク因子としては,中等度の右室あるいは左室機能障害,cMRIにおける広範囲の右室瘢痕,Q R S 幅180 m s 以上,高度のQ R S fragmentationの4つが定義されている83).

1.2.4 心室不整脈とカテーテルアブレーション

先天性心疾患術後のVTはマクロリエントリー性単形性VTであることが多く,弁輪,心室切開部,補綴物などの無興奮性組織に縁取られた遅伝導性解剖学的峡部(SCAI)が不整脈基質となる.カテーテルアブレーションの目標は, VTの非誘発に加えて,このような不整脈基質を同定して伝導途絶を得ることであり,それにより遠隔期の再発を抑制することができる.SCAIの同定は洞調律中でも可能であり,血行動態が破綻するVTを誘発することなく治療することも可能である.先天性心疾患術後VTアブレーションの観察研究において,VT非誘発およびSCAIの伝導途絶を治療のエンドポイントとした場合,急性期成功率は57 ~74%であり,平均33~46ヵ月の経過観察期間で再発を認めなかったと報告されている84, 85).ファロー四徴症術後の遠隔期VTの解剖学的峡部(AI)

となりうる部位は,1右室切開線-三尖弁輪間/右室流出路パッチ-三尖弁輪間,2右室切開線-肺動脈弁輪間,3 VSDパッチ-肺動脈弁輪間,4VSDパッチ-三尖弁輪間であるが,ファロー四徴症術後の遠隔期VTの大部分は3を遅伝導路とするVTである86, 87).わが国でも2023年からTPVIの施行が開始されたが,Harmony TM TPVあるいはSAPIEN 3 は右室側のスカートが長いため,TPVI後はこのような解剖学的峡部へのアブレーションが困難となる可能性がある.このことを念頭に置き,術前のEPSおよびアブレーションの必要性を検討すべきである78).

また,外科的クライオアブレーションの有効性に関して, Sandhuらの観察研究では肺動脈弁置換術(PVR)時に31人に対してクライオアブレーションが施行されたが,術後に施行されたEPSで14人(45%)にVTが誘発され,ICD植込みが施行された88).SCAIの伝導途絶の確認を伴わない外科的アブレーションが不整脈基質を根治できている保証はなく,むしろ正常組織を傷害することで遅延伝導を作成している可能性もある.したがって,術後3~12ヵ月に治療効果判定のためのEPSを施行することにより突然死のリスク評価を行うことは,予後改善につながる可能性がある78).

1.2.5 学校生活上の注意点

手術成績が向上している現代においては,小児期に持続性VTや突然死を認めるハイリスク患児は減少していると推定されるが,高学年になるにしたがって体育の授業や運動部活動での運動強度が増加するため,注意が必要である.とくにNSVTを疑う動悸,めまい,失神などの症状がある場合には,早期にリスク評価が必要である.しかし,患児本人が自発的に症状を保護者や医療従事者に伝えない可能性があることを念頭に置き,ていねいな問診を心がける必要がある.また,定期的に運動負荷検査やホルター心電図検査を行うことが望ましいと考えられる.

表14 ファロー四徴症術後遠隔期における突然死の予測因子

年齢高年齢根治術時の高年齢PVR時の高年齢

手術手技先行するシャント術Transannular repair(低リスク)経心室切開手術回数不整脈NSVT既往

心機能障害心不全症状あり運動耐容能低下左室収縮障害・拡張障害右室収縮障害心電図QRS幅拡大QRS fragmentation cMRI広範囲RV LGE (Krieger EV, et al. 2022 78), Habib E, et al. 2023 82)を参考に作表)