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p.37 抽出テキスト

多く,20~30kgの症例が散見される62-72).Bordacharらは,体重25~30kg以上,年齢8~9歳以上が通常の植込みを行う体格であると記載している73).前述の日欧2つのレジストリ研究の結果から,体格の小さな症例,やせた症例は創部離開やデバイス感染のリスクがあると考え,適応判断や植込み後の注意深い経過観察を行う必要がある.

1.1.4 学校生活における注意点

植込み後の生活上の注意は,ほかの植込み型心臓電気デバイス(CIEDs)と同様である.学校行事などで飛行機に乗る機会が増加しているため,空港で保安検査を受ける際にはICD手帳を提示して金属探知機を用いない方法で検査を受けるように指導を行う.なんらかの症状がある場合あるいはデバイスからピープ音が発生した場合には,医療機関で受診するよう指示する.ピープ音は電池消耗あるいはショックインピーダンス異常などの状態で発せられることが多い.

運動に際しては,本体およびリードを物理的に損傷する可能性のある格闘技,球技,鉄棒などの競技を避ける,あるいはこれらの競技を行う場合にはプロテクターの使用を考慮する必要がある.運動時に洞性頻拍あるいはT波のオーバーセンスにより不適切作動を起こす可能性がある.事前に運動負荷試験を行い,不適切作動を起こさないかを確認することも考慮する.不適切作動を起こす場合には,治療ゾーンの変更,センシングベクトルの変更,運動制限をするなどの対応を検討する.その他,基礎心疾患に応じた運動制限が必要となる.

家庭や学校で救命処置が必要になった場合には,通常どおりに心肺蘇生を行うことは可能であるが,以下の内容に注意を要する.

・ 胸骨圧迫中にS-ICD本体からショックが送出された場

合には,救助者は電流(刺痛)を感じることがある.・ 胸骨圧迫が一時的にセンシングに干渉し,治療の遅延

を生じる可能性がある.・ AEDを使用する場合には,除細動パドルをS-ICD本

体およびリードの真上に位置させることは避け,可能な範囲で遠くに離す.・ 胸骨圧迫あるいはAED使用後はリードおよび本体に

問題がないかデバイスのチェックを行う必要がある.

1.1.5 植込み型除細動器の今後の進歩

リードを胸骨下に留置する血管外植込み型除細動器(EV-ICD)が開発され,わが国でも2024年10月にAurora EV ICDTMが薬事承認されている.EV-ICDの本体はS-ICDと同様に左側胸部に,リードは胸骨背面の前縦隔右室前面に留置される.S-ICDよりも本体が小さく,低出力

での除細動が可能であり,抗頻拍ペーシングや心休止バックアップペーシングも可能である.P波のオーバーセンスが不適切作動の原因となることが多い74, 75).小児に対する有用性は未知数ではあるが,ICDのあらたな選択肢として期待されている.

1.2 ファロー四徴症術後の心室不整脈と 突然死

1.2.1 概念

ファロー四徴症術後の治療成績は年代とともに向上しているが,術後遠隔期には血行動態や電気生理学的な異常が問題となることも多く,運動耐容能の低下,心不全,突然死の原因となる.血行動態上の異常の代表格としてあげられるのは肺動脈弁閉鎖不全であるが,ほかに右室流出路狭窄,末梢肺動脈狭窄,左室あるいは右室機能不全,三尖弁閉鎖不全,上行大動脈拡大,大動脈弁閉鎖不全,遺残心室中隔欠損および心房中隔欠損などがあげられる76).一方,生涯における不整脈の発生頻度も高く77, 78),Khairyらの多施設共同観察研究によると持続性あるいは治療介入を要する不整脈の発生頻度は43.3%であり,心房不整脈は20.1%(心房内回帰性頻拍7.2%),心室不整脈は14.6%, CIED植込みが18.3%(ICD 10.4%,ペースメーカ7.9%)と報告されている.また,ペースメーカ治療の適応の内訳は,洞不全が18.2%,房室ブロックが65.9%,徐脈頻脈症候群が15.9%であった.心房細動と心室不整脈の発生頻度は,45歳以降に明らかに増加していた79).

1.2.2 心室不整脈と突然死

ファロー四徴症術後の遠隔期の突然死発生率は0.15%/年であり80),その原因の大部分は心室不整脈とされており,その管理は重要である.1995年にGatzoulisらがQRS幅180 ms以上は突然死のハイリスクであると報告しているが81),これまでにさまざまな突然死の予測因子が報告されており,それらの予測因子を使用して非侵襲的に突然死のリスク評価をする方法については今なお一定の見解は得られていない.年代とともに手術方法が変化していることも,その要因になっていると考えられる82).これまでに報告されている突然死の予測因子を表14に示す78, 82).QRS幅に関して,近年の心臓電気生理学的検査(EPS)によるリスク評価の報告においてVTが誘発される症例の多くはQRS幅180 ms以下を示していることから,QRS幅180 ms以下を突然死の低リスクと考えるべきではないとされている78).