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p.36 抽出テキスト

1 不整脈の管理

1.1 皮下植込み型除細動器(S-ICD)植込み とその後の管理

1.1.1 概念

小児および先天性心疾患においても,不可逆的な原因による突然死二次予防に関しての植込み型除細動器(ICD)の植込みは推奨クラスIである60).しかしながら,体格の小さい患児,または解剖学的に静脈アクセスが限られている先天性心疾患患児に対する経静脈ICD植込みは困難であることも多く,心外膜ICD植込みは侵襲性が高いことから避けられることも多かった.

わが国では2016年2月に皮下植込み型ICD(S-ICD) (EMBLEMTM)が使用可能となり,静脈アクセスが不要なこと,リードの耐久性が高いこと,体重20~30 kg以上であれば使用可能であることなどから,小児患者への植込みも積極的に行われるようになった.小児のS-ICD対象疾患として多いのは,心筋症,遺伝性不整脈,先天性心疾患,冠動脈疾患などである.S-ICDの場合,ショック後の最長30秒間のバックアップペーシングを除いてペーシングはできないため,徐脈性不整脈に対するペーシング治療が必要な患児あるいは抗頻拍ペーシング治療が必要な患児への使用は適さない.

S-ICDは本体とICDリードから構成される.ICDリードは通常は胸骨左側(あるいは右側)の皮下に,本体は左第5および第6肋間近傍の中腋窩腺レベルで前鋸筋と広背筋の間に植え込まれる.リードに付随する2つの電極と本体から記録される3種類の皮下心電図ベクトルのうちの1つをセンシングベクトルとして使用し,心拍数およびQRS波形から速い心室頻拍(VT)および心室細動(VF)の検知を行う.速いVTおよびVFを検出した場合は,80 Jの二相性ショックが送出される.

1.1.2 小児に関する安全性・有効性などのデータ

S-ICD植込み前の体表心電図による患者スクリーニングの適合率は80%前後であり,植込み後の適切作動の発生率は9~27%,不適切作動の発生率は7~25%,合併症の発生率は4~27%と報告されている61).

Silvetti らは欧州におけるレジストリ研究(The SIDECAR project)を行い,患者81人に関するデータを報告しているが,基礎疾患としては心筋症47%,先天性心疾患20%,特発性心室細動12%,遺伝性不整脈12%であり,一次予防適応は59%であった.フォローアップ期間の中央値は19ヵ月で,除細動の不成功はなく,適切作動の発生率は17%,不適切作動の発生率は13%(上室頻拍40%,T波のオーバーセンス40%,ノイズなどのオーバーセンス20%)であった.外科的再介入を要する合併症の発生率は9%であり,three-incision法による植込みとBMI< 20がリスク因子であった62).

一方,Moriらはわが国におけるレジストリ研究(SAVE- CHILDREN registry)を行い,患者61人に関するデータを報告している.基礎疾患は不整脈疾患54%,器質的心疾患45.9%であり,88.5%が二次予防適応であった.フォローアップ期間の中央値は27ヵ月で,適切作動の発生率は26.2%,不適切作動の発生率は21.3%(洞頻拍30.8%,T波のオーバーセンス30.8%)であった.この研究では,植込み時年齢6歳,体重22 kgの1例に急性期のデバイス感染を認めたためデバイスの摘出を行ったが,慢性期にはリードの破損やデバイス感染のような合併症を認めなかった63).

わが国のレジストリは欧州のレジストリと比較して,心筋症や先天性心疾患の基礎疾患の割合が少ない一方,二次予防適応の割合が大きく,適切作動の発生率が高いという特徴がある.

1.1.3 植込み時の体格

小児のS-ICD植込みを安全に行える体格に関して記載された指針やガイドラインは,現時点では存在しない.報告されている症例を概観すると,体重30kg以上の症例が

第2章 疾患別の管理