p.28 抽出テキスト
4 児童生徒の突然死予防 4.1 自動体外式除細動器(AED)を用いた救 急蘇生ガイドラインの学校保健への影響 わが国の心肺蘇生ガイドラインである,日本蘇生協議会の「JRC蘇生ガイドライン」は,国際蘇生連絡協議会(ILCOR)が5年ごとにレビューするConsensus of Science and Treatment Recommendation(CoSTR)に準拠しており, CoSTRの改訂は2015年まで5年ごとに実施されてきた.しかし一方で,ILCORに新しいエビデンス・レビューの仕組み(重要な研究結果が公表された場合にはその都度評価する持続的エビデンス評価)が2015年に導入されて以降,心肺蘇生にかかる研究のさらなる活性化とあいまって重要な研究結果が継続的に発信されるようになったことから, CoSTRも従来の5年に一度のアップデートでは最新化が追いつかないという状況が生じた.そのため2017年以降「JRC蘇生ガイドライン2020」作成に至るまでに29本ものシステマティック・レビューがILCORの複数の専門部会から発信された.そのCoSTRのサマリーは,2017年以降,毎年発表されている(https://www.ilcor.org/publications). それらに準拠した「JRC蘇生ガイドライン2020」は各領域でさまざまなアップデートがなされているが,小児の一次救命処置(BLS)に関するおもな変更点は以下のとおりである29, 30). 4.1.1 反応の確認 小児・幼児の特性を加味した医療用BLSアルゴリズムにおいて,「反応はあるか?の判断に迷う場合」や「わからない場合」も「反応なし」とみなすことを明記し,アルゴリズムの先に進めない事態を回避できるようにした. 4.1.2 呼吸の確認 上記アルゴリズムの「正常な呼吸・確実な脈拍があるか?」について,「死戦期呼吸」であると誤認することがあることなどから,「ふだんどおりの呼吸かどうか判断に迷う場合」や,さらに「わからない場合」も「呼吸なし」とみなすことを明記し,躊躇して胸骨圧迫に着手できない事態を回避できるようにした. 4.1.3 AEDのパッド/モードの名称変更 初期のAEDは8歳以上,体重25kg以上が対象であったが,のちに「小児用」として1歳以上を対象とした出力減衰パッド/モードが市販され,従来のものを「成人用」と区別したため,いくつかの問題点が指摘された.たとえば,厳密に適用しようとすれば,小学2年生の場合,誕生日の前か後かで「小児用」と「成人用」を使い分ける必要があるなど,混乱のもととなった.そのため,わが国では,「成人用」パッド/モードの適応を小学生以上とし,混乱を回避してきた. 今回さらに「小児用パッド/モード」は「未就学児用パッド/モード」,「成人用パッド/モード」は「小学生~大人用パッド/モード」と規定し,製品上の名称を統一するよう記載した.これにより,今後順次新しい名称での商品となり,現場で迷うことなくより適切なパッド/モードを選択できるようになった. BLSアルゴリズムは,より適切な救命処置ができるよう,判断基準や表現を明確化し,わかりやすさを重視した改訂がなされている.つねにアップデートを心がけてほしい(つねに最新版のガイドラインを参照することが望まれる) (推奨クラスIb,エビデンスレベルC). 4.2 COVID-19(新型コロナウイルス感染症)パンデ ミックがバイスタンダーCPR/AEDに与える影響 COVID-19パンデミックは社会・医療に甚大な影響を与え,心肺蘇生においてもwith/post COVID-19時代には傷病者がCOVID-19感染者であることを前提とした体制が求められるようになった.そのため,「JRC蘇生ガイドライン2020」においても,補遺としてCOVID-19への対応がまとめられている.おもな要点は以下のとおりである. ・ COVID-19が流行している状況では,すべての心肺停 止の傷病者に感染の疑いがあるとして対応・ 成人の心停止については,人工呼吸を行わず,胸骨圧 迫とAEDを実施・ 小児の心停止については,講習を受けて技術があり意 思があれば人工呼吸を実施しかしながら,COVID-19パンデミックの前後で, OHCA患者の転帰に以下のような変化があったことが指摘されている. COVID-19パンデミック期間中(2020~2021年)のOHCAのPAD発生率および転帰について,月次推移をプレパンデミック期間(2016~2019年)と比較した解析31)(新生児および自宅発生を除いたOHCA 22,182人が対象)に