p.59 抽出テキスト
表28 心房細動患者におけるリズムコントロールに関する 推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル リズムコントロールの有効性を高めるために,高血圧,糖尿病,睡眠時呼吸障害などの併存疾患の治療,および肥満,喫煙,過度の飲酒など生活習慣の改善を行うI B発症早期の心房細動患者において,リズムコントロール療法を考慮するIIa A表29 リズムコントロールが望ましいと考えられる心房細 動の患者像1 症状(動悸,眼前暗黒感,胸部不快感など)が強い2 心房細動が持続することで,心不全の発症・増悪が危惧され る3 心房細動発症関連の併存疾患が比較的少ない4 左房径が高度に拡大していない,および心房内伝導遅延が少 ない(心房筋のリモデリングが軽度である) 5 患者がリズムコントロールを希望する 心房細動は発作性心房細動よりもリスクが高いことが明らかになってきた.最近のメタ解析では,持続性心房細動は発作性心房細動と比較して血栓塞栓症の増加(HR 1.38, 95%CI 1.19 ~1.61,P<0.001)と関連することが明らかになっている465).本邦で行われたJ-RISK 352)でも,持続性/ 永続性心房細動は,脳梗塞発症に寄与する独立した危険因子とされた(詳細については第3 章1.1 参照).心房細動患者における脳梗塞発症のリスク評価は,簡便性と実用性,そして正確性のバランスを考慮する必要がある466, 467).「2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」 3)では,心原 性脳梗塞のリスク評価はCHADS2 スコア(心不全,高血圧,年齢75 歳以上,糖尿病,脳梗塞や一過性脳虚血発作の既往) 468)を基本としたが,本フォーカスアップデートにおいてはCHADS2 スコアおよびHELT-E2S2 スコアを用いたリスク評価を推奨する(表19). 抗凝固薬の内服は心房細動患者の心原性脳梗塞発症と死亡のリスクを低減する469).経口抗凝固薬には,ビタミンK 拮抗薬(ワルファリン)とDOAC があるが,投与の簡便性,効果の安定性,食事や他の薬剤との相互作用の少なさ,頭蓋内出血の少なさなどからDOAC が望ましく411, 470, 471),ワルファリンはDOAC が使用できない場合の使用に留めるべきである. 一方,出血リスクがきわめて高い患者にDOAC を投与すべきか否かについては,長らく議論されてきた.この問題を解決するため,出血への懸念から既存の経口抗凝固薬の承認用法・用量での投与が困難な80 歳以上の日本人非弁膜症性心房細動患者を対象に,エドキサバン15 mg 1 日1 回投与の脳卒中または全身性塞栓症の発症抑制効果が検証され,プラセボに対する優位性が確認された412)(詳細については第3 章2.7 参照).また,長期的な抗凝固療法が必要ではあるが,出血リスクが高く抗凝固療法が適切ではない患者においては,左心耳閉鎖デバイスを用いた経皮的左心耳閉鎖術や胸腔鏡下左心耳閉鎖術を症例に応じて考慮してもよい472). 5.2.4 第4 段階:症状の改善(図12) 洞調律維持(リズムコントロール)および適切な心拍数調節(レートコントロール)を行い,症状の改善を図る.リズムコントロールは洞調律へ復帰・維持させる治療戦略である.抗不整脈薬,電気的除細動,カテーテルアブレーション,メイズ手術がリズムコントロールの主たる手段である.洞調律の復帰・維持は,心房細動の症状に加え,運動能力284)とQOL の向上473),LVEF の改善282),左房径減少285),入院イベントの減少474)にも有効である. 近年,心房細動に対するアブレーションテクノロジーの進歩は目覚ましく,その有効性と安全性は著しく向上している.LVEF の低下した心不全(HFrEF)を合併した心房細動症例を対象としたCASTLE-AF 283)において,カテーテルアブレーションによるリズムコントロールは薬物治療(レートコントロール)に比較して全死亡(HR 0.53,95%CI 0.32 ~0.86,P=0.01),心不全増悪による入院(HR 0.62, 95%CI 0.43 ~0.87,P=0.007)を有意に抑制した.一方,前述したEAST-AFNET 4 271)では,割付から2 年後のアブレーション施行率は19.4% とそれほど高くなく,抗不整脈薬が投与されていた患者の割合が45.7% であったことから,早期の心房細動に対する抗不整脈薬の有用性が示された. 表29 にリズムコントロールが望ましいと考えられる患者像を示す.これらの患者に対しては,カテーテルアブレーションや抗不整脈薬を用いたリズムコントロールを積極的に考慮すべきであろう.年齢に関しては,韓国のコホート研究において475),早期リズムコントロールによる改善効果が高齢になるにしたがって減弱し,75 歳未満の心房細動患者でより有益であったことに留意する. EAST-AFNET 4 271)の結果を鑑みると,少なくとも発症早期の心房細動患者においてはリズムコントロールを優先すべきであることから,本フォーカスアップデートでは,発症早期の心房細動患者に対し,症状およびQOL の改善の