p.58 抽出テキスト
5.2.1 第1 段階:急性期の管理(図12) 急性期に適切な心拍数調節または洞調律維持を行い,血行動態を安定させる.血行動態が破綻している場合は,緊急に電気的除細動を行って洞調律化を図る. 5.2.2 第2 段階:増悪因子の管理(図12) 併存疾患を適切に治療し,食生活習慣を改善することで,心房細動の発症および進行に関連する心血管イベントのリスクを減少させる.心房細動患者における合併症の発症には,併存疾患(心血管代謝危険因子としての高血圧,心不全,冠動脈疾患,糖尿病,睡眠時呼吸障害など)の存在,および好ましくない生活習慣(肥満,喫煙,過度のアルコール摂取,身体活動不足など)が大きく関係している.第2段階の増悪因子の管理には,これらの併存疾患・生活習慣の特定と適切な管理が含まれる. たとえば,体重減少,禁煙,過剰なアルコール摂取量の削減,定期的な身体活動など修正可能な危険因子を改善することは,心房筋リモデリングの抑制のほか,心房細動の再発抑制をもたらす.RACE 3(RCT)では,発症1 年以内の持続性心房細動と心不全を有する患者を対象に,高血圧,脂質異常症,心不全,食事指導,心臓リハビリテーションなどの危険因子に対する標的治療介入(119 人)を行ったところ,対照群(126 人)と比較して洞調律維持率が有意に 高かった(75% vs. 63%,オッズ比1.765,95%CI 下限値1.021,P<0.042) 461).一方,カテーテルアブレーション術後の心房細動患者に対して積極的な血圧低下のみを行った研究からは,心房細動再発を抑制する効果は認めなかった(HR 0.94,95%CI 0.65 ~1.38,P=0.763) 462).このことは,心房細動の再発抑制と予後改善目的には単独の危険因子是正ではなく,包括的な改善が必要であることを示唆している. 本フォーカスアップデートでは,心房細動の発症および再発リスクを低減するために,高血圧,糖尿病,睡眠時呼吸障害などの併存疾患の治療,および肥満,喫煙,過度の飲酒など生活習慣の改善の指導を推奨することにした(表28,推奨クラスI). 5.2.3 第3 段階:脳梗塞の予防(図12) 脳梗塞のリスクを評価し,高リスクの患者には経口抗凝固薬を投与する.これによって脳梗塞を予防する.心房細動は脳卒中の発症リスクを約5 倍に高める463).このリスクは,心房細動患者に一様ではなく,脳梗塞発症の危険因子およびそれらの修飾因子の存在によって高くなる464).以前は,心房細動が発作性であっても持続性であっても血栓塞栓症のリスクは同程度と認識されていたが,近年,持続性 図12 心房細動の包括管理 第1 段階: 急性期の管理急性期に適切な心拍数調節または洞調律維持を行い,血行動態を安定させる 第2 段階 :増悪因子の管理併存疾患の治療・食生活習慣の改善によって,心房細動の発症および進行に関連する 心血管イベントのリスクを減少させる 第3 段階: 脳梗塞の予防脳梗塞のリスクを評価し(CHADS2 スコアなど),リスクのある患者には抗凝固薬を投与し,脳梗塞を予防する 第4 段階 :症状の改善リズムコントロール(洞調律維持)およびレートコントロール(適切な心拍数調節)を行い,症状の改善を図る ・抗不整脈薬・電気的除細動・カテーテルアブレーション手術・メイズ手術・β遮断薬・ジギタリス製剤・Ca 拮抗薬(非ジヒドロピリジン系) (低心機能症例では使用不可) リズムコントロールレートコントロール 患者・家族と適宜話し合いどちらのコントロールを 行うか決定する