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p.57 抽出テキスト

表27 心房細動患者の身体活動に関する推奨と

エビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

心房細動の発症または再発を予防するために,適度な身体活動の指導を考慮する(ただし,心房細動を誘発する可能性がある過度の持久運動は除く) IIa C

5.2 心房細動患者の包括管理: 4 段階の治療ステップ

2050 年には本邦の心房細動患者は約103 万人,総人口の約1.1% を占めると予測されている3).心房細動の有病率上昇は,おもに社会の高齢化および危険因子や併存疾患の増加によってもたらされ,心房細動が引き起こす脳梗塞や心不全などの合併症は,医療資源の不足や医療費上昇の原因となっている411, 452, 453).

これらを是正するために,1心房細動の早期診断,2個々の心房細動患者の特性把握,3包括的な管理,というアプローチが必要である.まず,1心房細動の診断は心電図記録による診断が基本であり,12 誘導心電図記録もしくは30 秒以上の単極誘導心電図記録で診断する.次に,2個々の心房細動患者の脳梗塞リスク,症状の程度,発作性か持続性かを含めた心房細動の持続時間,心房細動を発症・進展させる要因となる心筋の状態や心血管系の危険因子を評価する.そして,3心房細動患者の併存疾患および生活習慣を踏まえた統合的な治療介入を行う.「2020 年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」は,心房細動患者の急性期および慢性期の管理として5 段階の治療ステップ(第1 段階:急性期の管理,第2 段階:増悪因子の管理,第3段階:脳梗塞リスクの管理,第4 段階:心拍数の評価,第5 段階:症状の評価)を提唱した3).

近年,ESC から心房細動患者を対象に医療レベルや専門性を問わず,統合的な治療を行うことを目的としたABCパスウェイ(「A」Anticoagulation/Avoid stroke:抗凝固療法・脳梗塞予防,「B」Better symptom management:症状の改善,「C」Cardiovascular and Comorbidity optimization:増悪因子の検出と管理)が提唱された411).ABC パスウェイの実施は,全死亡,脳卒中/ 大出血/ 心血管死と初回入院の複合転帰の改善454),心血管イベント発生率の低下455, 456),医療関連コストの低下457)をもたらすことが報告されている.

リズムコントロールとレートコントロールに関しては,約20 年前に行われた,抗不整脈薬を用いて洞調律維持を積

極的に行ったリズムコントロール群と,症状軽減を目的として心拍数コントロールを行ったレートコントロール群を比較したAFFIRM 458)において,生命予後に有意差がなかったことから(HR 1.15,95%CI 0.99 ~1.34,P=0.08),レートコントロールはリズムコントロールに遜色のない安全な治療法であると認識されてきた.しかし,当時は心房細動に対するカテーテルアブレーションが普及しておらず,カテーテルアブレーションが広く行われている現在においては再評価の必要がある.

この課題について,発症早期(初回診断から1 年未満)の心房細動患者において,早期のリズムコントロール(抗不整脈薬またはカテーテルアブレーションを使用)とレートコントロールの有効性および安全性を比較検討したEAST-AFNET 4 271)(早期リズムコントロール群1,395 人vs. レートコントロール(通常治療)群1,394 人)では,早期リズムコントロールはレートコントロールに比較して心血管イベント発生(心血管死,脳卒中,心不全や急性冠症候群による入院)を有意に減らした(3.9/100 人年 vs. 5.0/100 人年,HR 0.79,96%CI 0.66 ~0.94,P=0.005).

さらに,心房細動患者22,635 人が登録された韓国のコホート研究では,心血管死亡,脳梗塞,心不全入院,急性心筋梗塞の複合エンドポイントについて2 年間追跡した.発症から1 年以内の発症早期心房細動患者ではリズムコントロール群のほうがレートコントロール群よりも複合エンドポイントが少なかったが(HR 0.81,95%CI 0.71 ~0.93, P=0.002),発症から1 年以上経過した心房細動患者では両群で差を認めなかった(HR 0.97,95%CI 0.78 ~1.20, P=0.76)

459).このような報告から,近年心房筋リモデリングなどの有害事象が進展する前の早期にリズムコントロールを行うことの重要性が指摘されている460).ただし,EAST-AFNET 4 271)においては初発の心房細動患者が多く,両群ともに2 年後の時点でリズムコントロール治療を受けていない患者が多かったことに留意しなければならない(早期リズムコントロール群34.9% vs. レートコントロール(通常治療)群85.4%).

このように,近年,リズムコントロールの重要性が再認識されてきたことを受けて,本フォーカスアップデートでは,「2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」3)における心房細動患者に対する5 段階の治療ステップに小改訂を行い,リズムコントロールとレートコントロールを並列で「第4 段階:症状の改善」として記載し,どちらの治療方法を選択するかについては個々のケースに応じて判断することとした.