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p.56 抽出テキスト

5 心房細動と生活習慣管理・ 包括管理

5.1 心房細動と生活習慣管理

心房細動は,高齢者のみならず高血圧など生活習慣病を有する中高年層に多く,血栓塞栓症,脳卒中,心不全などの合併症を引き起こす411).そのため,心房細動患者においては,心房細動そのものの治療だけでなく,併存疾患や心血管発症リスクを減らすための管理・指導も重要である.「2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」3)においても,心房細動患者の併存疾患・生活習慣管理(心不全,心臓弁膜症,高血圧,糖尿病,閉塞性睡眠時呼吸障害,慢性腎臓病,肥満,喫煙)について言及している.本フォーカスアップデートでは,生活習慣管理として新しいエビデンスが報告されているアルコールとカフェイン,身体活動を加えた.

5.1.1 アルコールとカフェイン

従来,過度のアルコール摂取は心房細動誘発の危険因子であることが知られている433-436).また,アルコールの過剰摂取は,抗凝固療法中の出血の危険因子である437).「2020年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」

3)においては,心房

細動患者における出血性合併症のリスク評価をHAS- BLED スコアを用いて行うことを推奨しているが(推奨クラスI),アルコール多飲は同スコア構成因子の1 つである.さらに,心房細動患者におけるアルコールの過剰摂取は血栓塞栓症の発症や死亡リスクを増加させる438).最近のRCT では,常用飲酒している心房細動患者において,禁酒は心房細動再発を抑制することが報告されている439).

以上から本フォーカスアップデートでは,心房細動発症予防および抗凝固療法を考慮する心房細動患者においてはアルコールの過剰摂取を避けるための助言と管理を行うべきとした(表26,推奨クラスIIa).

一方,カフェイン摂取は,心房細動発症の契機となる上室期外収縮発生の危険因子と考えられる440).「2020 年改

訂版不整脈薬物治療ガイドライン」3)では上室期外収縮がQOL を損なう場合には,カフェイン摂取の制限を推奨している(推奨クラスI).しかし,近年は適切なカフェイン摂取習慣は心房細動のリスクを高めず441, 442),むしろ1 日1 ~3 杯の習慣的なコーヒー飲用は心房細動発症リスクを軽減する443)との報告もある.ただし,カフェイン摂取は心房細動とは無関係の動悸症状を増加させる可能性があることに留意すべきである444).

5.1.2 身体活動

これまでの多くの臨床研究により,適度な運動・身体活動は心血管系の健康に有益であることが示されている445).しかし,一部の運動競技者では心房細動発症率が高い傾向があり,複数の小規模な臨床研究では,激しい身体活動(おもに持久競技)が心房細動発症を増加させることを報告している446-448).一方,少数例での検討ではあるが(対照25 人 vs. 運動療法26 人),心房細動患者に対して運動療法を行わないと,経過とともに心房細動累積持続時間(心房細動バーデン)は増加するが,適切な運動療法は心房細動バーデンを有意に抑制した449).これらを踏まえると,心房細動の発生や再発を予防するために積極的に運動を行うように奨励するべきである.ただし,特に50 歳以上の場合,心血管系への負荷が大きい過度の持久運動(マラソンや長距離トライアスロンなど)は避けるべきであろう.

一方,慢性心不全患者に対する心臓リハビリテーションの有用性が注目されている.興味深いことに,心不全を合併した心房細動患者では,心臓リハビリテーションによって運動耐容能およびQOL が改善すると報告されている450).「2021 年改訂版心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン」451)においては,運動耐容能が低下した,または心不全を合併する心房細動患者に対し,運動耐容能とQOL の改善を目的に運動療法を考慮することが推奨されている(推奨クラスIIa).ただし,心拍数コントロールがついていない頻脈性心房細動患者に対する運動療法は,相対的禁忌であることに注意する451).

心房細動と身体活動に関しては,どの程度の運動・身体活動が効果的なのか十分に解明されていない.一般的には,患者の心拍数や血圧の反応,症状の出現などをモニタリングしながら,適切な運動強度を維持することが推奨される.本フォーカスアップデートでは,心房細動患者に対して心房細動発症または再発を予防するために適度な身体活動を指導することを推奨する(表27,推奨クラスIIa).

表26 心房細動患者のアルコール摂取に関する推奨と

エビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

アルコールの過剰摂取を避けるための助言と管理を考慮するIIa B