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p.55 抽出テキスト

表25 心房細動に対する心拍数調節療法の薬物治療の推奨

とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

ジギタリス製剤ジゴキシン血中濃度を定期的に管理している場合,心拍数調節またはQOL の改善を目的としたジゴキシンの経口投与を考慮してもよいIIb C【改変箇所】ジギタリス製剤の第2 項目(頻脈性心房細動患者に対する長年に渡る心拍数調節 推奨クラスIII,エビデンスレベルC)を上記(ジゴキシン血中濃度を定期的に管理している場合,心拍数調節またはQOL の改善を目的としたジゴキシンの経口投与を考慮してもよい 推奨クラスIIb,エビデンスレベルC)に変更(2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン.2020 3)を改変)

連することが示された.これらの結果を受け,「2021 年JCS/JHFS ガイドラインフォーカスアップデート版急性・慢性心不全診療」では,ジギタリス製剤の長期間の使用を推奨クラスIII(Harm)と記載した427).また,ジギタリス製剤はβ遮断薬に比して予後改善効果が劣性であることから426),「2020 年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」3)では,心機能低下にともなう心房細動の心拍数調節においてはβ遮断薬を第1 選択,ジギタリス製剤を第2 選択と位置づけた.

このような状況のなか,2020 年に発表されたランダム化オープンラベル試験であるRATE-AF 428)で,これまでと異なる結果が報告された429).本試験の対象患者は,心不全症状(NYHA 心機能分類II 以上)を有する永続性心房細動患者(160 人,平均心拍数100 ± 18 拍/ 分)である.ジゴキシン群(平均161μg /日)とビソプロロール群(平均3.2 mg /日)の2 群に均等に割り付け,内服加療により心拍数100 拍/ 分以下を目標に用量調整を行い(効果が乏しい場合他剤併用は可),QOL 改善効果が比較検討された.

6 ヵ月の時点の安静時心拍数(ジゴキシン群76.9 ± 12.1拍/ 分 vs. ビソプロロール群74.8±11.6 拍/ 分,P=0.40)に差はなく,QOL も両群で同等の結果であった.さらに, 12 ヵ月の時点でのNT-proBNP 中央値はジゴキシン群960 pg/mL,ビソプロロール群1,250 pg/mL(P=0.005),日々の活動度や治療満足度,NYHA 心機能分類などの副項目においてジゴキシン群の方が良好であった.有害事象においても,ジゴキシン群の方が少なかった(25% vs. 64%,P <0.001).

これまで,心不全合併心房細動の心拍数調節において, β遮断薬に対するジギタリス製剤の優位性を示す報告はなかった.しかし,心不全合併心房細動に対するβ遮断薬使用は,メタ解析により予後改善効果に疑問が投げかけられていることも受け430),β遮断薬を優先的に使用するのではなく,他の薬剤もバランスよく使用するべきと報告されたのである429).ただし,本研究は症例数が少なく,永続性心房細動のみを対象とし,あくまでもQOL や症状の改善効果を評価した研究である.長期の予後改善効果を検討していないことから,ジギタリス製剤を優れた薬剤と単純に評価すべきものではない.

一方で,ジギタリス製剤が予後不良と関連するという報告は観察研究やRCT の後付け解析が多く,ジギタリス製剤と患者背景の交絡をみているのではないかとの指摘がある430).また,ジギタリス製剤のRCT では予後に影響しないことがメタ解析で示されている431).

以上を踏まえ,本フォーカスアップデートでは,ジギタリス製剤の長期間の使用を推奨クラスIII(harm)とまではいえないと考え,推奨クラスIIb(使用可能)に変更した(表

25 3)).

ジギタリス製剤を使用する際の注意点ジギタリス製剤は半減期の長い腎排泄の薬剤で,かつ血中濃度の治療域がきわめて狭いことから,注意を要する.とくに,高齢者は低体重で腎機能が悪いことが多く,ジギタリスの効果が強まるリスクがあるため,年1,2 回血中濃度の測定を行い,副作用を疑う嘔気や食思不振などの症状を確認する.洞調律心不全患者を対象としたRCT の後付け解析において,ジゴキシン開始から1 ヵ月後の血中濃度が1.2 ng/mL 以上では死亡率が高いことが報告されており429),死亡率を減少させることが示された0.5 ~0.8 ng/ mL で管理することが推奨された429).副作用予防の観点から,心房細動患者に使用する際も同様にジゴキシン開始後の血中濃度を測定すべきであり,その後も長期的に使用するならば,定期的にジゴキシンの血中濃度を測定し,適切な血中濃度が維持されていることを確認していくことが望ましい.

心アミロイドーシスや閉塞性肥大型心筋症が基礎疾患にある場合は,使用は禁忌とされている.2020 年度版心アミロイドーシス診療ガイドラインでも推奨クラスIII とされており432),ジギタリス製剤はアミロイド蛋白と結合するため薬剤の感受性が亢進し,致死性不整脈をきたす可能性がある.また,ジギタリス製剤はP-糖蛋白質を基質とするため,アミオダロン,ベラパミル,利尿薬(スピロノラクトン,トルバプタン)などの薬剤においては血中濃度上昇の恐れがあるため併用に注意を要する.