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p.52 抽出テキスト

は,患者背景にかかわらずエドキサバン15 mg の有用性が示されたが,特に90 歳以上やCCr <30 mL/ 分の患者では出血に注意すべきことが示された.エドキサバン15 mgの保険適用は,ELDERCARE-AF の登録基準を踏襲したものとなっているが,これを満たさない患者におけるエビデンスはない.添付文書に則って患者選択をするよう心掛けるべきである.

またELDERCARE-AF は,ランダム化前の8 週間以内に抗凝固療法が行われていない患者のみが対象となっていた.適正用量でDOAC を投与していた患者を,ELDERCARE- AF の登録基準を満たすからという理由で15 mg に減量することが妥当か否かについても,エビデンスがないことに留意すべきである.

こうしたELDERCARE-AF 登録基準に合致する患者が,実臨床の現場でどのくらいいるのかを検討したFushimi AF レジストリのデータでは416),合致例は全体の12.8%, 80 歳以上でCHADS2 スコア2 点以上の患者の52.9% であった.実臨床における合致例は多く,非合致例と比較して高齢で合併疾患も多く,あらゆるイベントの発生率も有意に高かった.合致例でも,登録時点では48.8% に抗凝固薬が処方されていたが,経時的にみると年率15.5% で抗凝固薬が中止されていた.同様に,ANAFIE レジストリの検討でも417),合致例(全体の22.0%)は,非合致例と比較してイベント発生率が高く,脳梗塞/ 全身性塞栓症(2 年間の累積3.8% vs. 2.8%),大出血(2.8% vs. 1.8%),全死亡(12.5% vs. 5.4%),心血管死(4.3% vs. 1.4%),といずれも有意に高かった.合致例でも89.0% に抗凝固薬が処方されており,DOAC 投与群のほうがワルファリン投与群に比べて,イベント発生率が低い傾向がみられた.

3 第Xa 因子(FXa)阻害薬に対する 特異的中和薬

FXa 阻害薬(アピキサバン,エドキサバン,リバーロキサバン)に対する中和薬であるアンデキサネット アルファが使用可能となった(図10).DOAC(直接トロンビン阻害薬,FXa 阻害薬)とワルファリン,つまり経口抗凝固薬すべてが中和薬を持つに至ったことは,専門診療科を問わず全医師が認識しておきたい.非大出血などに対する安易な中和薬使用は控えるべき一方で,生命を脅かす出血または止血困難な出血の発現時は,経口抗凝固薬内服患者すべてに中和薬が適切に投与されるべきである.

アンデキサネット アルファは,改変型遺伝子組み換えによるFXa のデコイ蛋白であり,FXa が本来持つプロトロンビンからトロンビンへの触媒作用を不活化するよう改変さ

れている.アンデキサネット アルファが投与されると, FXa 阻害薬は本来の標的であるFXa ではなく,アンデキサネット アルファに結合する.このことによりFXa の機能が保持され,FXa 阻害効果は中和される.

アンデキサネット アルファはFXa 阻害薬に対し,高用量,低用量の2 種類の投与法を行うことで,1 剤でFXa 阻害薬3 剤の中和薬として機能する(図11).FXa 阻害薬内服から18 時間以内の急性大出血症例に対してアンデキサネット アルファを投与した国際共同第III 相ANNEXA-4 418)の最終報告419)(日本人19 人を含む479 人)によると,アンデキサネット アルファ急速静注後,アピキサバン群172 人(93%),エドキサバン群28 人(71%),リバーロキサバン群132 人(94%)のFXa 阻害作用が示され,中和効果は2時間の持続静注終了まで保たれていた.アンデキサネットアルファの血中半減期は約4 時間であるため,静注終了後は徐々に中和効果は減弱し,80% の症例で良好な止血を得た.10% の症例で投与後に塞栓症イベントが発生したが,すべて経口抗凝固薬再開前であった.本フォーカスアップデートでは,心房細動患者において,早急にFXa 阻害薬の効果を是正する必要がある生命を脅かす出血または止血困難な出血時におけるアンデキサネット アルファ投与を推奨する(表24).

先行して臨床使用可能となった,ダビガトランに対する中和薬であるイダルシズマブの投与法と中和効果時間を図11 に示す.急速静注で24 時間の中和効果が維持されるイダルシズマブに対して,アンデキサネット アルファは急速静注後,2 時間の持続注射を行うことで投与期間中和効果を発現する(図11).具体的には,FXa 阻害薬の最終投与から8 時間未満は,リバーロキサバンとエドキサバンは高用量投与,アピキサバンは低用量投与,FXa 阻害薬の最終投与から8 時間以上経過している場合は,すべて低用量投与となる.アンデキサネット アルファは,血漿中でヘパリンの抗IIa 活性および抗Xa 活性を用量依存的に無効化するため,ヘパリン投与下でのアンデキサネット アルファ使用時は活性化凝固時間(ACT)などのモニタリングを要する.

アンデキサネット アルファを使用する状況を考えると,投与量を確認することに時間を取られることで投与開始が遅れることは避けるべきである.アンデキサネット アルファを,まず負荷用量2 バイアル(400 mg),30 mg/分で投与開始し,投与終了までに該当する用量(高用量か低用量)を確認する.高用量であれば,負荷用量終了後,同じ負荷用量をもう一度繰り返した後に持続注射へ移行し,低用量であれば,1 回の負荷用量終了後,持続注射へ移行する使