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p.50 抽出テキスト

患や生活習慣病と密接に相関するため,服薬数は必然的に増加する.服薬数の多い心房細動患者に対して抗凝固薬投与を控える必要があるのか,あるいは,特別な減量基準を設定する必要があるのか否かは明らかではない.

高齢心房細動患者において,薬剤数を最小限とすべきという議論はあるが,高齢心房細動患者における多剤併用は負の側面のみを有するものとはいえない.心血管系危険因子である高血圧,糖尿病,慢性腎臓病などへの治療介入や,心筋梗塞や心不全などに対する予防的介入は,多くの高齢患者に対して生命予後改善や症状緩和につながるものである.

心房細動患者を対象としたDOAC の大規模RCT のサブ解析では392,393),薬剤数の増加にともなっての脳卒中または全身性塞栓症の増加は認められなかったが,大出血と全死亡の増加が認められた.大出血と全死亡の増加は,多剤併用患者において,さまざまな併存疾患を有するマルチモービディティー394),多数の慢性疾患を有するフレイル患者395)が多いという側面を表している.一方で,血栓性イベントの増加を認めなかったことは,投与された薬剤が効果を発揮して血栓性イベントを抑制しているという側面を示していると考えられる.

多剤併用患者に対しても,抗凝固療法の効果についてのデータは不十分である.ANAFIE レジストリ396)における服薬数中央値は6 剤で,5 剤以上の多剤併用患者397)が約6 割を占めていた.服薬数により0 ~4 剤,5 ~8 剤,9 剤以上の3 群に分割して検討を行ったところ398),いずれの群でも90% 以上に抗凝固薬が投与されていた.脳卒中または全身性塞栓症発症率はそれぞれ1.5% /年,1.7% /年, 1.8% /年(P=0.780)と有意差はなかったが,大出血発生率は0.8% /年,1.1% /年,1.7% /年(P<0.001)と9 剤以上で有意な増加を認めた.一方で,ELDERCARE-AF サブ解析399, 400)において抗凝固療法施行群のプラセボ群に対する脳卒中または全身性塞栓症予防効果を示すHR は高リスク群(高齢,腎機能障害)ほど小さかった.有意な交互作用は認めないものの,少なくとも同等以上の予防効果が得られることが示唆された.

多剤併用患者には高齢,腎機能障害が多いこともあわせて考えると,抗凝固療法により脳卒中または全身性塞栓症は,前項と同様に約1/ 3 程度,あるいはそれ以下にまで減少すると推測される.したがって,ポリファーマシー患者に対しても,出血の増加に十分に注意しながら抗凝固療法を行うべきである.

多剤併用患者に対して抗凝固療法を行う際に特別な減量設定が必要かどうかについて,ワルファリンはさまざまな薬剤との間に相互作用を有する401)うえに,毎回の採血による用量調整を行う必要がある.DOAC は他の薬剤との相

互作用が少ない薬剤であるが,例外として,ダビガトランの減量推奨やエドキサバンの減量基準には,ベラパミルやアミオダロンなど一部のP 糖蛋白阻害薬併用が含まれる.このように,心房細動患者の抗凝固療法においては,他剤併用による血中濃度変動への対応が,添付文書に定められた用量設定にすでに組み込まれている.

ANAFIE レジストリにおいて,薬剤数9 剤以上群で増加したイベントとして,消化管出血(1.3% /年,2.0% /年 vs. 3.1% /年,P<0.001)と転倒骨折イベント(4.5% /年, 6.6% /年 vs. 9.2% /年,P<0.001)があった.頭蓋内出血発生率の高いワルファリンを使用する際には,特に転倒に注意する.また,消化管出血を予防するうえでも402),転倒による頭蓋内出血を予防するうえでも403),抗血小板薬・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)など出血リスクを高める可能性のある薬剤の併用はできるだけ回避すべきである.このように,抗凝固療法は添付文書用量での投与を行いつつ,多剤併用患者に併存しやすい出血リスクを可能なかぎり回避することが重要である.

以上,服用薬剤数の多い高齢心房細動患者に対しても,原則として添付文書通りの抗凝固療法を行うべきである.一方で,服用薬剤数の多い高齢心房細動患者に対して抗凝固療法を行う際には,心血管疾患予防の必要性に十分配慮しつつ薬剤数(および用量)を最小限とし,出血リスクを高める可能性のある薬剤の使用を最大限回避するように配慮すべきである.

2.6 抗血小板薬使用(表22)

動脈硬化性疾患を合併する心房細動症例に対しては,これまで抗凝固薬と抗血小板薬の併用療法が行われてきた.本邦発の大規模臨床試験であるAFIRE 404)では,安定型冠動脈疾患を合併する心房細動患者において,抗凝固薬単剤群と抗凝固薬+抗血小板薬併用群(本試験では抗凝固薬はリバーロキサバンが用いられた)が比較され,抗凝固薬単剤の優位性が示された.国内外のガイドラインでもこうした患者においては抗凝固薬単剤が推奨クラスI とされた.

AFIRE では,併用群で全死亡リスクが高いことが示されたが,その一因として大出血後の心血管イベントの増加が考えられ,特に大出血後30 日以内に多いことが明らかとなった405).サブグループ解析においては,特に血栓リスクの高い患者においても単剤が優位であるのかが検証され,心筋梗塞や末梢動脈疾患既往のあるような動脈硬化高リスク集団406),心不全既往のある集団407),多枝病変