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p.49 抽出テキスト

2.3 フレイル(表21)

フレイルとは,一般的には加齢に関連した生理機能の低下によってもたらされる,全身的な虚弱状態と定義される.フレイルの有病率は年齢とともに上昇し,85 歳以上では35.1% と報告される385).フレイル患者はさまざまな慢性疾患を併存しやすく,心不全,認知症,COPD,糖尿病,慢性腎臓病などの有病率が高い.また,転倒リスクが高く,低栄養やポリファーマシーの患者も多い.したがって,このような背景を持つフレイル患者への抗凝固療法は難しいというのが一般的な考え方であり,超高齢のフレイル患者への抗凝固療法は避けられる傾向にあった.

ANAFIE レジストリでは,登録患者のうち厚生労働省の定めた基本チェックリスト386)によるフレイル評価を行った2,951 人を,健常群(基本チェックリスト8 点以下959 人),プレフレイル群(9 ~14 点924 人),フレイル群(15 点以上1,068 人)に分け,検討した.それぞれの群に対して,抗凝固療法は95.6%,94.7%,94.1% に施行されていた387).各群の全死亡率は1.45%/年,2.56%/年,7.15%/年であり(P<0.001),患者背景を反映していた.また,脳卒中/ 全身性塞栓症発症率は1.20% /年,1.67% /年,2.37% /年(P=0.025),大出血発生率は0.76% /年,0.63% /年, 1.41% /年であった(P=0.029).多変量モデルにおけるフレイル群の補正後HR(健常群に対して)は,脳卒中/ 全身性塞栓症が1.05(P=0.857),大出血が1.69(P=0.155)であり,いずれも有意差は示されなかった.上記のフレイルと患者アウトカムの関係は,おおむねENGAGE-AF でみられた傾向と同様であった388).

ANAFIE レジストリのデータは,75 歳以上の心房細動患者に対し,フレイルの有無によらず95% の患者に抗凝固療法(6 割がDOAC)を施行した結果を示している.フレイル患者を対象とした抗凝固療法の効果に関するデータは不足しているが,一般に抗凝固療法により脳梗塞が約1/ 3 に減少する389)ことを考えると,抗凝固療法を施行しなかった場合の脳卒中/ 全身性塞栓症発症率は上記の約3 倍と見積もることができる.フレイル患者は多くの併存疾患を有するため出血リスクが高い事実は確認できるものの,抗凝固療法による塞栓症予防のメリットの方が大きいことを再認識すべきである.フレイル患者に対しては,DOACは減量基準に該当することが多く387),ワルファリンよりも安全性においてメリットが大きい可能性がある388). 2.4 認知症(表21)

認知症は,認知機能の低下により自立した日常生活に支障が生じた状態を指し,疾患というよりは症候群としてとらえられている.心房細動患者に対する抗凝固療法を行ううえで,認知機能の低下は大きな障壁となる.認知機能低下例では転倒および外傷による頭蓋内出血,服薬間違い,低アドヒアランスなどの問題が多くみられるからである390).とくに経口抗凝固薬がワルファリンのみであった時代においては,用量調整の煩雑さや頭蓋内出血リスクの高さなどから,認知機能低下患者への抗凝固療法は難しいと考えるのが一般的であった.しかし,DOAC の登場により高齢者への抗凝固療法が簡便になっており,このような患者に対する抗凝固療法を再検討すべき状況にある.

ANAFIE レジストリでは,全登録者のうち2,963 人に対し,登録時にミニメンタルステート検査(MMSE)を行い,正常認知機能群(MMSE≧24 点)と認知機能障害群(同≦23 点)の2 群に分けて比較した391).認知機能障害群は正常認知機能群に比べ,年齢が高く(83.9 歳 vs. 80.7 歳, P<0.001),心不全(44.7% vs. 29.4%,P<0.001)や脳血管障害(35.5% vs. 23.0%,P<0.001)の有病率が高かった.認知機能障害群の全死亡率は正常認知機能群の約4 倍(9.49% /年 vs. 2.38% /年,P<0.001)であったが,脳卒中または全身性塞栓症(2.11% /年 vs. 1.65% /年,P=0.307)や大出血(1.30% /年 vs. 0.75% /年,P=0.090)には有意差を認めなかった.本結果は,前項のフレイル患者のデータと同様に,正常認知機能群,認知機能障害群ともに90%以上に抗凝固薬が投与された患者群の成績である.

認知機能障害を対象とした抗凝固療法の効果に関する明確なデータはないものの,一般に,抗凝固療法が行われていなければ脳梗塞発症率が約3 倍となる389)と見積もると,大出血への懸念よりも脳梗塞予防のメリットのほうが大きいことが再認識される.服薬管理が簡便にできるDOACを用いることを前提に,認知機能が低下した高齢心房細動患者に対しても抗凝固療法を検討することが望ましい.その際,家族や施設,訪問服薬指導など,服薬管理をサポートする環境を確認する必要がある.

2.5 ポリファーマシー(表21)

ポリファーマシーとは,単に服用する薬剤数が多いことではなく,それに関連して薬物有害事象のリスク増加,服薬過誤,服薬アドヒアランス低下などの問題につながる状態をさす.心房細動は高齢者に多く,さまざまな心血管疾