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p.48 抽出テキスト

リンについても,心房細動アブレーション周術期,機械弁症例や脳梗塞二次予防など,例外的に使用せざるを得ない場合があるが,「2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」では原則禁忌として扱うとされている.

以上を踏まえて,本フォーカスアップデートでは,各腎機能障害の段階に応じて抗凝固療法の推奨を定めた(表20).抗凝固薬内服患者において1 年間で20% 以上CCrが低下する例が16.4% を占め378),腎機能障害患者において推算糸球体濾過量(eGFR)は経時的に1 ~2 mL/分/1.73 m 2/ 年低下する379)ため,定期的な血液検査による腎機能確認,具体的には「CCr 値/10」ヵ月に1 回(例:CCr 30 mL/分であれば3 ヵ月に1 回)行い,腎機能,肝機能,ヘモグロビンを適宜把握するなど,慎重な追跡が求められる.

2.2 低体重(表21)

心房細動患者における低体重は脳梗塞発症の危険因子である.HELT-E2S2 スコアにおいて,BMI <18.5(HR 1.55)は6 つの独立危険因子の1 つとして同定された352).また,低体重心房細動患者では,全死亡,心血管死の発生率が高いと報告されている356).

低体重は,加齢,フレイル,慢性腎臓病,癌など他の危険因子や併存疾患に付随することが多い380).そのため,低体重患者では抗凝固療法が差し控えられる傾向にある.ワルファリン使用の際には,INR 至適域を維持することが難しく357, 381),DOAC 使用においても,血中濃度が上昇して大出血をきたしやすくなる懸念がある382).

DOAC またはワルファリンを投与された低体重患者のアウトカムを比較した韓国の観察研究では,傾向スコアマッチングにより背景因子を補正した体重60 kg 以下の患者において,DOAC(14,013 人)は,ワルファリン(7,576 人)と比較して,脳梗塞(HR 0.591,P <0.0001)および頭蓋内出血(HR 0.554,P<0.0001)を含む大出血(HR 0.705, P<0.0001),全死亡(HR 0.705,P<0.0001)が少なかった.体重50 kg 以下においても,DOAC のワルファリンに対する優位性は一貫していた383).

添付文書用量のアピキサバンを内服している75 歳以上の日本人心房細動患者を対象としたJ-ELD AF レジストリにおいて,体重60 kg 超は1,019 人(33.7%),50 ~60 kg は1,126 人(37.2%),50 kg 未満は880 人(29.1%)と,60 kg以下が過半数を占めた.各群の脳卒中/ 全身性塞栓症発症率は1.69% /年,1.82% /年,1.23% /年(P=0.6),入院を要する出血は1.37% /年,1.73% /年,2.73% /年(P =0.154)であった.多変量解析で患者背景を調整すると,50 kg 未満の低体重は,脳卒中/ 全身性塞栓症,入院を要する出血

のいずれにおいても有意な危険因子ではなかった384).

血栓塞栓症の独立した危険因子である低体重の心房細動患者に抗凝固療法を行う意義は大きく,DOAC はワルファリンに比べ有効性,安全性のいずれにおいても優位性があり,使用が好ましい.その際,低体重ではeGFR 値より低値をとりやすいCCr を正確に把握する.また,体重が減量基準に含まれるDOAC もあり,不適切な高用量にならないよう留意する.

表21 抗凝固療法高リスクの高齢心房細動患者(低体重,

フレイル,認知症,ポリファーマシー)への対応の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

ポリファーマシー患者に対して抗凝固療法を行う際には,心血管疾患予防の必要性に十分配慮しつつ薬剤数を最小限とし,抗血小板薬やNSAIDs など出血リスクを高める可能性のある薬剤の使用を最大限回避するI B低体重の有無によらず抗凝固療法施行を考慮するIIa Bフレイルの有無によらず抗凝固療法施行を考慮するIIa B認知機能低下(MMSE ≦23 点)の有無によらず抗凝固療法施行を考慮するIIa B

表20 抗凝固療法高リスクの高齢心房細動患者(腎機能障

害)への対応の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

30 mL/ 分≦CCr <50 mL/ 分の軽度~中等度腎機能障害患者に対して抗凝固療法を行う(ワルファリンよりもDOAC を優先する) I A 15 mL/ 分≦CCr <30 mL/ 分の重度腎機能障害患者に対し,DOAC(ダビガトラン以外)を用いた抗凝固療法施行を考慮するIIa B CCr <30 mL/ 分かつ非透析導入の末期腎機能障害患者に対し,ワルファリンを用いた抗凝固療法施行を考慮してもよいIIb C維持透析患者に対してワルファリンを用いることは推奨されない* III No benefit B *: 心房細動アブレーション周術期,機械弁術後,脳梗塞既往の場合

は使用可