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p.47 抽出テキスト

2 抗凝固療法高リスクの 高齢患者への対応

心房細動患者の脳梗塞予防のための抗凝固療法は,2011年に最初のDOAC であるダビガトランが登場してから10 年が経過し,DOAC は本邦の日常診療に着実に浸透した371).その間,抗凝固療法の施行にあたってさまざまなリスクを有する高齢患者に関するデータも集積されてきている.また本邦では,後期高齢者である75 歳以上の心房細動患者を高齢者として扱い,多くの臨床研究が行われている359, 372).本項では,そうした抗凝固療法高リスク高齢患者への対応について,最新のエビデンスをまとめた.

2.1 腎機能障害

心房細動と腎機能障害は合併することが多いだけでなく,心房細動は腎機能障害の進行を助長し,逆に腎機能が低下すると心房細動の発症率が増加する.腎機能障害は脳梗塞および大出血双方の危険因子であるため,適切な抗凝固療法を行うことが肝要である.しかし,DOAC はいずれも腎臓で排泄されるため(腎排泄率はダビガトラン80%,エドキサバン50%,リバーロキサバン35%,アピキサバン27%),CCr 25 または30 mL/分未満の腎機能障害患者はDOAC の大規模RCT において除外対象となり,リアルワールドデータも乏しかった.

添付文書用量のアピキサバンを内服している75 歳以上の日本人心房細動患者3,015 人を対象としたJ-ELD AF レジストリにおいて,455 人(15.1%)が15 mL/ 分≦CCr < 30 mL/分であり,ほとんどの患者(97.4%)が低用量服用基準に該当した373).この患者群における脳卒中または全身性塞栓症の年間発症率は1.67% であり,CCr ≧50 mL/分(1,165 人,38.6%)の1.76% と同等であった.入院を要する出血の年間発生率は,CCr ≧ 50 mL/分の1.39% に比べて,15 mL/分≦CCr <30 mL/分では3.13% と高い傾向がみられた(HR 2.00,P=0.075).一方,年間全死亡率と心血管死亡率は15 mL/分≦CCr <30 mL/分でそれぞれ7.87%,2.62% であり,CCr ≧50 mL/ 分の1.75%, 0.46% に対して有意に高かった.

ANAFIE レジストリのサブ解析において,75 歳以上の日本人非弁膜症性心房細動患者26,202 人中,CCr ≧50 mL/分,30 mL/分≦CCr <50 mL/分,15 mL/分≦CCr <30 mL/分,CCr <15 mL/分の割合は,それぞれ44.2%,41.1%,13.2%,1.5% であった374).脳卒中または全身性塞栓症,大出血の発生率はいずれも腎機能低下が

進行するにつれて上昇し,CCr ≧50 mL/分 vs. 15 mL/分≦CCr <30 mL/分はそれぞれ,2.6% /年 vs. 4.0% /年(HR 1.31.P =0.032),1.8% /年 vs. 2.8% /年(HR 1.12,P = 0.439)であった.

DOAC 群とワルファリン群の比較では,30 mL/分≦ CCr <50 mL/分における脳卒中または全身性塞栓症の発症率は,2.7% /年 vs. 3.8% /年(HR 0.75,P = 0.024),大出血の発生率は1.7% /年 vs. 2.8% /年(HR 0.64,P = 0.003)であり,いずれもDOAC はワルファリンと比較して有意に低かった.一方,15 mL/分≦CCr <30 mL/分における脳卒中または全身性塞栓症の発症率は3.6% /年 vs. 4.0% /年(HR 0.89,P=0.541),大出血の発生率は2.4%/年 vs. 3.5%/ 年(HR 0.67,P =0.065)といずれも同等であった.

また,抗凝固薬を投与していない群とワルファリン群の比較では,15 mL ≦CCr <30 mL/分における脳卒中または全身性塞栓症の発症率は5.9%/年 vs. 4.0%/年(HR 1.80, P =0.047)と非投与群のほうが高かったが,大出血の発生率は2.3%/年 vs. 3.5%/年(HR 0.65,P=0.306)と有意差を認めなかった.

腎機能障害患者は高齢者が多く,フレイルをともなっていることも多い.また,高血圧,糖尿病,虚血性心疾患,心不全などの併存疾患の合併率も高い.これらは薬物代謝能の低下を助長するだけでなく,ポリファーマシーとなることによって,薬物相互作用による抗凝固薬血中濃度上昇の懸念が高まり,ワルファリンの国際標準比(INR)を至適域で維持することが困難になる.

DOAC の大規模RCT のメタ解析において,30 mL / 分≦CCr <50 mL/分群ではDOAC はワルファリンよりも脳卒中/ 全身性塞栓症,大出血いずれのリスクも低下させることが示されていたが375),ANAFIE レジストリの結果は,これと矛盾しないものであった.CCr <30 mL/分を対象としたDOAC とワルファリンを比較したRCT は存在しないが,ANAFIE レジストリの結果は,CCr <30 mL/分においてDOAC が少なくともワルファリンと同等以上の有効性と安全性を有することを示した.アピキサバンとエドキサバンは,大規模RCT の腎機能サブ解析にて30 mL/分≦CCr <50 mL/分における大出血リスクが低かったこと376, 377)を踏まえると,15 mL/分≦CCr <30 mL/分においてDOAC を使用する際には,これらを選択することは妥当と考えられる376, 377).

このように,中等度~重度腎機能障害患者に対するDOAC のリアルワールドデータが集積されてきた.維持透析導入後の患者においてDOAC は禁忌であり,ワルファ