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p.44 抽出テキスト

られなかった(HR 1.41,P=0.097) 354).一方で, J-RHYTHM レジストリにおいて,ベースラインのSBP ≧ 136 mmHg(第4 四分位)の患者における脳梗塞発症リスクは<116 mmHg(第1 四分位)の患者に対し同程度であったが(HR 1.01,P=0.968),脳梗塞発症時にもっとも近い血圧を考慮すると,同じSBP で分割した際は上昇が認められた(HR 2.80,P<0.001)

355).拡張期血圧(DBP)につ

いても,イベント発生リスクが高まる血圧(80 mmHg 以上,第4 四分位)は65 mmHg 未満(第1 四分位)に対しリスクが上昇していた(HR 1.65,P=0.046)

355).つまり,脳梗塞

発症の危険因子としての高血圧は,経過中の血圧管理状況によって大きく影響されるといえる.

たとえ高血圧であっても,SBP ≦136 mmHg,DBP < 80 mmHg 未満に常に管理できている場合355),実質的な脳梗塞発症リスクは低い可能性がある.一方で,SBP,DBPのいずれかが管理不十分である場合,実質的な脳梗塞発症リスクは非常に高まると考えられる.それと同時に,血圧管理不良は脳出血発症の危険因子ともなるため,抗凝固療法開始に先立って十分な血圧管理を行うことが重要である.

1.3.2 BMI 18.5 kg/m 2 未満,持続性/ 永続性心房細動

低BMI または低体重が脳梗塞発症の危険因子となるか否かについて,これまでに国内のレジストリで検討が行われてきた.J-RHYTHM レジストリでは18.5kg/m 2 未満での塞栓症のHR(対18.5 ~24.9 kg/m 2)は1.22(95%CI

0.63 ~2.38)であり,増悪させる傾向を認めるものの有意

差はなかった356).Fushimi AF レジストリでは,体重50 kg 未満の低体重での脳卒中または全身性塞栓症のHR(対50 kg 以上)は2.19(P<0.01)であった357).この危険因子の解釈として,癌やCOPD などの悪性疾患と関連するサロゲートマーカーである可能性や,過度の低体重であることそのものが,神経体液因子の活性亢進や内皮機能低下,血小板活性亢進,全身の炎症活性亢進などをもたらし,凝固活性を促進するなどの可能性が考察されている357).こ

れらの国内レジストリの結果を受けて,「2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」では「体重50 kg 未満」を抗凝固療法考慮可能な危険因子に加えた.

持続性/ 永続性心房細動は,過去の大規模臨床試験のサブ解析などを根拠に358),発作性心房細動と塞栓症発症リスクは同等であるという考えが広く認識されていたが,近年,発作性心房細動と比べて脳梗塞発症リスクが高いというデータが複数報告されるようになり,考えが見直されつつある.ANAFIE レジストリでは,持続性/ 永続性心房細動の脳梗塞発症リスクは発作性心房細動に比較して上昇がみられた(それぞれのHR 1.64/1.68,いずれもP<0.001) 359).Fushimi AF レジストリでは,発作性心房細動から持続性心房細動に移行したときの脳梗塞発症リスクがもっとも高く(持続性心房細動に移行しない発作性心房細動に対しHR 4.10,P<0.001),すでに持続性心房細動以上に進行したケースに対しても上昇していた(HR 2.20,P=0.025) 360).

持続性/ 永続性心房細動は左房リモデリングの進行と密接に関連しており,この左房リモデリングには,加齢,高血圧,心不全など,他の危険因子が複雑に関連しあっている.左房リモデリングは,組織障害をきたすという観点からはVirchow の3 徴のうち「内皮障害」と関連すると考えられる.一方で,心房細動の持続時間そのものがVirchowの3 徴のうち「血液の停滞」と関連している.このように,「持続性/ 永続性心房細動」という病型は,心房細動の血栓形成の本質的な病態と深く関わっている.持続性/ 永続性心房細動もまた,「2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」3)ですでに,抗凝固療法が考慮可能な危険因子に加えられている.

1.3.3 糖尿病,心不全

CHADS2 スコアに含まれる糖尿病と心不全はHELT- E2S2 スコアに含まれない.しかし,前述のように,糖尿病や心不全が脳梗塞発症に関する独立危険因子として同定されなかったとしても,それぞれのなかには高リスク患者が含まれていることに留意する必要がある.

心房細動患者における糖尿病の脳梗塞発症リスクを,糖尿病の背景別に検討した複数の報告がなされている. ATRIA の検討では,発症3 年未満の糖尿病の脳梗塞発症リスクは,糖尿病非発症者と変わらなかった361).また,糖尿病合併心房細動患者を対象とした検討では,糖尿病発症から5 年未満の脳梗塞発症リスクに比して,5 年以上10年未満の脳梗塞発症リスクは同等(HR 1.20,P=0.12)である一方で,糖尿病発症から10 年以上の脳梗塞発症リス

表19 心房細動患者における心原性塞栓症のリスク評価の

推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

CHADS2 スコアを用いるI B

HELT-E2S2 スコアの使用を考慮するIIa B CHA2DS2-VASc スコアの使用を考慮してもよいIIb B