p.43 抽出テキスト
図9 HELT-E2S2 スコアによる経口抗凝固薬の有無別の脳梗塞発症率OAC:経口抗凝固薬(Okumura K, et al. 2021 352)より) A B C D E 0 点1 点2 点 3 点≧4 点 HR 0.19,95%CI 0.02 〜1.59, P =0.08 脳梗塞累積発症率脳梗塞累積発症率HR 0.73,95%CI 0.37 〜1.43, P =0.35 HR 0.46,95%CI 0.26 〜0.80, P =0.005 HR 0.49,95%CI 0.27 〜0.87, P =0.01 HR 0.58,95%CI 0.37 〜0.93, P =0.02 OAC あり OAC なし OAC あり OAC なし OAC あり OAC なし OAC あり OAC なし OAC あり OAC なし 日日日 日日リスク人数 OAC なしOAC あり リスク人数OAC なしOAC あり リスク人数OAC なしOAC あり リスク人数OAC なしOAC あり リスク人数OAC なしOAC あり 準とするか」であるが,その決定には大出血などを考慮したネットクリニカルベネフィットに関する解析が必要であろう. また,もう1 つの課題として,「2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」3)ではCHADS2 スコア1 点以上の患者に抗凝固療法の開始を推奨してきたが,この判断基準をHELT-E2S2 スコアに置き換えることが妥当なのかについても検討しなければならない. HELT-E2S2 スコアには,CHADS2 スコアの構成因子のうち年齢(75 歳以上),高血圧,脳卒中既往の3 つが含まれるが,糖尿病,心不全の2 つは含まれない.しかし,糖尿病や心不全が脳梗塞の独立危険因子として同定されなかったとしても,それぞれの中には高リスクな患者が内包されている(後述).したがって,CHADS2 スコア1 点以上の患者に抗凝固療法開始を推奨する現行のガイドラインの判断基準は依然として十分な妥当性があると考えられる. 一方で,HELT-E2S2 スコアの構成因子のうち,CHADS2スコアに含まれないBMI 18.5kg/m2 未満,持続性/ 永続性心房細動については,すでに「2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」3)において抗凝固療法開始を考慮して よい「その他のリスク」に実質的に含まれている(現在はBMI については低体重[≦50 kg]で記載).以上より,本フォーカスアップデートにおいては,「心房細動における抗凝固療法の推奨」のフローチャート(「2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン」図12)を変更せず現状維持とし,今後さらなる検証データの蓄積をまつことが妥当であると判断した.以上をふまえ,各リスクスコアに関する推奨を表19 に示す. 以下に,HELT-E2S2 スコアの登場を踏まえた各危険因子の考え方について概説する. 1.3.1 高血圧 高血圧はCHADS2 スコアとCHA2DS2-VASc スコアの両方に含まれ,3 つのレジストリの統合解析においても脳梗塞の独立危険因子として同定されている. 高血圧の脳梗塞への影響を考えるとき,血圧の管理状況が大きく左右することが知られる.J-RISK では,ベースラインの収縮期血圧(SBP)≧150 mmHg の患者は<150 mmHg の患者に対し,脳梗塞発症リスクの有意差は認め