p.32 抽出テキスト
患者に対するカテーテルアブレーションの有効性については,単施設研究レベルで数多く報告されており295),カテーテルアブレーションによるHFpEF 患者の洞調律維持率は非心不全患者およびHFrEF(EF <50%)患者と同等であることや296),洞調律維持率および心不全入院回避率, QOL 改善度が薬物治療に比して有意に高いことがメタ解析でも示されている297).RCT に基づいたエビデンスはいまだ乏しいが,CABANA のLVEF>50% 患者に限定した事後解析では,カテーテルアブレーションは薬物治療に比し死亡率を60% 減少させたと報告されている(3.3% vs. 8.6%,HR 0.40,95%CI 0.18 ~0.88) 282).さらに,HFpEF合併心房細動患者に対するカテーテルアブレーション(16人)と薬物治療(15 人)の効果を比較したRCT では,対象患者は限定的ではあるものの,カテーテルアブレーションは薬物治療に比し6 ヵ月後の血行動態(肺毛細管楔入圧[PCWP],心拍出量[CO])および運動耐容能(peak VO2),QOL を有意に改善させた.特にカテーテルアブレーション群において,洞調律を維持できた患者の75%は血行動態的に心不全から正常の状態に回復しており, HFpEF 患者における洞調律維持の重要性が示されている298). 以上のように,心不全を合併した心房細動に対するカテーテルアブレーションの有効性が高いことが示されているが,その病態は多様であり,心機能,NYHA,基礎心疾患,心房細動持続期間など患者背景に応じてカテーテルアブレーションの適応を判断する必要がある.特に重症心不全に進行した心房細動が合併している症例においては,安易にカテーテルアブレーションを施行することが予後を悪化させてしまう可能性もある.また複雑な手技や高齢者,多くの合併疾患(心不全,腎機能障害,高血圧など)はアブレーション手技に関連する周術期の合併症リスクを高めるため,症例ごとに慎重な対応が望まれる299, 300). これらのエビデンスを踏まえ,本フォーカスアップデートにおいては前回から一部変更を加え,「明らかな基礎心疾患をともなわず,心房細動起因性の低左心機能が強く疑われる心房細動患者において,心機能を改善させ死亡率や入院率を低下させるためのカテーテルアブレーション」を推奨クラスI,「心不全の要因となる合併疾患がなく心機能が保たれた心不全(HFpEF)を有する心房細動患者において,死亡率や入院率を低下させるためのカテーテルアブレーション」を推奨クラスIIb とした(表16). 表16 心不全をともなう心房細動に対するカテーテルアブ レーションに関する推奨とエビデンスレベル推奨クラスエビデンス レベル 明らかな基礎心疾患をともなわず,心房細動起因性の低左心機能が強く疑われる心房細動患者において,死亡率や入院率を低下させるために,カテーテルアブレーションを行うI Cガイドラインにもとづく標準的心不全治療が行われている,LVEF の低下した心不全(HFrEF)を有する心房細動患者の一部において,死亡率や入院率を低下させるためにカテーテルアブレーションを考慮するIIa A心不全の要因となる合併疾患がなくLVEF の保たれた心不全(HFpEF)を有する心房細動患者において,死亡率や入院率を低下させるためにカテーテルアブレーションを考慮してもよいIIb B