p.24 抽出テキスト
表された.De Pooter らはLBBB 患者において,CRT の反応性をもっとも高く予測するとされる心エコー図上のseptal flash の発生率を検討し,QRS 幅120 ~130 ms を有する女性の6 割以上で同所見を認めたと報告している224).さらにEchoCRT のサブ解析において,左室拡張末期容積が小さい症例に対するCRT の有用性が示され214),性別,体格,左室サイズの評価がCRT を選択するプロセスに有用であることが示唆された. 欧米と比して体格が小さい心不全患者の多い本邦においては,CRT の反応性が海外と異なる可能性があり,いくつかの臨床研究が報告されている.Oka らは本邦の多施設CRT データベースを用い,対象をQRS 形態(LBBB,非LBBB)とQRS 幅により5 群に分け,イベント発生率(全死亡または心不全による入院の複合),ならびに心エコー図指標によるレスポンダー率を後ろ向きに解析した225). LBBB かつQRS 幅≧150 ms の患者におけるイベント発生率は28.9% ともっとも低く,レスポンダー率は74% ともっとも高かった.それに比して,120 ms ≦QRS 幅< 150 ms ではレスポンダー率が有意に低かったものの,半数以上(LBBB の51%,非LBBB の52%)に良好な反応が観察されたと報告している. Varma らは,CLBBB 症例におけるCRT を解析し,女性においては左室の容積で修正されたQRS 幅が,心エコー図で規定したCRT の有効性と相関することを示した213).また,他の研究では左室拡張末期容積で修正したQRS 幅が,特に体格の小さな女性においてCRT 症例の予後と有意な関係があったと報告されている216).5 つのRCT のメタ解析においても,性別,QRS 幅,心不全の病因,左室拡張末期径,身長が全死亡および心不全による初回入院に影響を与えることが示唆された215). さらにVarma らは,日本人を含むアジア人CRT 症例251 人(登録数の27%)を登録したレジストリであるAdvanced CRT のデータを解析し,アジア人は非アジア人に比べて症状スコアで定義した際のCRT のレスポンダー率が,120 ms ≦QRS 幅<150 ms およびQRS 幅≧150 ms の両群において有意に高かったことを報告した217).さらに,心臓死や心不全イベントをエンドポイントとした場合も,アジア人においては,120 ms ≦QRS 幅<150 msの群でCRT の有用性が示され,身長にて修正したQRS幅がCRT の有効性と強く相関していた. このように,CRT を推奨するQRS 幅の下限値設定についてはいまだ議論の余地のあるところであるが,CRT の有効性を示した多くのRCT の対象がQRS 幅≧120 msであったこと,体格の小さな症例が多い本邦においてはmid-range QRS症例でも反応性が期待できることを考慮し,本フォーカスアップデートのQRS 幅の下限を120 ms とし た.ただし,CRT の有効性はQRS 幅130 ms 以上において強固なエビデンスが存在することに留意するべきである226). 7.2 適応 洞調律のmid-range QRS におけるCRT 適応に関する推奨を表9,その条件についての一覧表を表10 に示す. 7.2.1 120 ms ≦QRS 幅<150 ms かつLBBB に 対する適応 前述の通り,性差はCRT の有効性に影響を与えることが示唆されている.RAFT,MADIT-CRT,REVERSE のメタ解析は,LBBB 症例における心不全入院または死亡に対するCRT の有益性について,QRS 幅120 ~180 ms の10 ms 刻みで層別化を行い,性差の影響を解析した227).その結果,120 ms ≦QRS 幅<130 ms 群では性差は認められなかったが,130 ms ≦QRS 幅<140 ms 群と140 ms ≦QRS 幅<150 ms 群では,女性においてのみ有益性が有意に高かった(相対リスク低減率は,それぞれ85%, 69%).しかしQRS 幅≧150 ms 群では,CRT は性差なく心不全と死亡および死亡単独を有意に減少させていた. CRT の反応性における性差の潜在的メカニズムは,解剖学的な違い,特に身長に関連している(身長が低いほどより大きな効果が認められる)可能性が考えられる213, 216, 227-234). 表9 mid-range QRS に対するCRT 植込みに関する推奨とエビデンスレベル(洞調律の場合) 推奨クラスエビデンス レベル LVEF ≦35% で,NYHA 心機能分類II ~ IV の心不全患者のうち,120 ms ≦QRS幅<150 ms かつLBBB で女性の場合にCRT 植込みを行うI A LVEF ≦35% で,NYHA 心機能分類II ~ IV の心不全患者のうち,120 ms ≦QRS幅<150 ms かつLBBB で男性の場合にCRT 植込みを行うことを考慮するIIa B LVEF ≦35% で,NYHA 心機能分類III ~IV の心不全患者のうち,120 ms ≦ QRS 幅<150 ms かつ非LBBB の場合にCRT 植込みを行うことを考慮してもよいIIb B LVEF ≦30% で,NYHA 心機能分類II の心不全患者のうち,120 ms ≦QRS 幅< 150 ms かつ非LBBB の場合にCRT 植込みを行うことを考慮してもよいIIb B