p.23 抽出テキスト
7 Mid-range QRS に対するCRT CRT は複数のRCT において,適切な薬物治療を行ってもLVEF が低下した中等度~重度の心不全を有し,かつQRS 幅が120 ms 以上の症例において,その有効性が示されてきた205-210).これらのRCT やメタ解析では,完全左脚ブロック(CLBBB)波形,幅広いQRS(150 ms 以上)がCRT の有用性を予測し205-212),QRS 幅が120~150 ms のmid-range QRS 症例ではCRT の効果が十分でない,いわゆる“ ノンレスポンダー” になる確率が高くなるとされている211, 212).一方,より高いCRT 効果を得るための臨床的特徴として,性差,体格(人種の違いを含む),心臓の大きさなどが提唱されており,これらを考慮すれば,mid-range QRS 症例に対してもCRT を有効に利用できる可能性がある134, 195, 213-217). しかし,このような臨床的特徴の解釈についてはコンセンサスが得られておらず,各学会ガイドラインでのmidrange QRS の定義やCRT の推奨クラスには差があるのが現状である93, 146, 218, 219)(表8).本フォーカスアップデートを作成するにあたり,「不整脈非薬物治療ガイドライン(2018 年改訂版)」5)作成以降に報告された研究結果をふまえ,推奨分類の見直しを行った. 7.1 CRT の適応に関するQRS 幅の下限 CRT が推奨されるべき心不全患者のmid-range QRS の下限については,以前より議論の分かれるところである. Yu らは,LVEF ≦35% かつQRS 幅が狭い症例の中に心エコー図(組織ドプラ)にてdyssynchrony を認める症例が存在することを報告し,CRT のレスポンダーとなり得ることを示唆した220, 221).しかし,その後の多施設前向き研究(PROSPECT)において,心エコー図上のdyssynchronyがCRT レスポンダーを高率に予測することは難しいと報告された222). さらに2013 年には,LVEF ≦35%,QRS 幅≦130 msかつ心エコー図でdyssynchrony を認めた症例を対象としたRCT であるEchoCRT の結果が示された223).本試験では全例にCRT デバイスを植込んだうえでCRT-on 群とCRT-off 群の2 群を比較した.両群間で一次エンドポイント(心不全入院+死亡)の発生率に有意差は認めず(HR 1.2,95%CI 0.92 ~1.57,P=0.15),死亡率はCRT-on 群のほうが有意に高かった(HR 1.81,95%CI 1.11 ~2.93,P= 0.02).以上の結果より,QRS <130 ms の症例におけるCRT の有効性は低いと判断され,ESC およびCCS のガイドラインでは,推奨クラスIII とされた93, 219). 一方,EchoCRT の発表後,120 ms ≦QRS 幅<130 msであっても,CRT の有効性を示唆する報告が相次いで発 表8 各学会ガイドラインのmid-range QRS に対するCRT 植込みに関する推奨(洞調律の場合) ガイドライン推奨クラスエビデンス レベルQRS の形態LVEF(%)QRS 幅(ms)NYHA 心機能 分類その他 2023 HRS/APHRS/LAHRS 146) I A LBBB ≦35 120 ~149 II ~IV女性など IIa B-R LBBB ≦35 120 ~149 II ~IV IIb B-NR非LBBB ≦35 120 ~149 III ~IV III B-R非LBBB ≦35 120 ~149 I ~II 2022 AHA/ACC/HFSA 218) IIa B-NR LBBB ≦35 120 ~149 II ~IV IIb B-NR非LBBB ≦35 120 ~149 III ~IV 2021 ESC 93) IIa B LBBB ≦35 130 ~149 - IIb B非LBBB ≦35 130 ~149 - 2017 CCS 219) I A LBBB <35 130 ~149 II ~IV III - LBBB <35 <120 ~129 II ~IV HRS:米国不整脈学会,APHRS:アジア太平洋不整脈学会議,LAHRS:ラテンアメリカ不整脈学会,AHA:米国心臓協会,ACC:米国心臓病学会,HFSA:米国心不全学会,ESC:欧州心臓病学会,CCS:カナダ心臓血管学会,-:記載なしエビデンスレベルA:複数のRCT またはメタ解析で実証されたもの,B:単一のRCT またはランダム化介入でない大規模な臨床試験で実証されたもの,B-R:1 件以上のRCT から得られた質が中等度のエビデンス,B-NR:1 件以上の適切にデザインされ,実施された非RCT,観察試験,症例登録試験から得られた質が中等度のエビデンス