p.22 抽出テキスト
究やメタ解析で示されている132, 171).房室ブロックかつ軽度~中等度の心機能低下例のみを対象とした小規模のRCT や観察研究では,CSP はRVP と比較してLVEF を有意に改善させた172, 173).また,RVP からCRT またはCSP へアップグレードした症例を対象としたメタ解析においても,CSP はRVP と比較してLVEF を有意に改善させ,その効果はCRT と同等であることが確認された174).CRTでなくCSP を選択する利点は,リード本数が2 本と少ないため,デバイス感染や静脈閉塞のリスクを低減できる可能性があり175, 176),より長い電池寿命が期待できる点である. 以上より,ペースメーカ適応の房室伝導障害患者で,高頻度の心室ペーシング(>20%)が予測され,かつ軽度~中等度の左室収縮能低下を認める場合は,患者の病態を踏まえたうえでCSP を考慮してもよいと考えられる. 6.5 刺激伝導系障害と心不全を有する (CRT 適応)症例 HBP は,CRT と比較して心室内伝導や血行動態指標を有意に改善し,LVEF の改善や逆リモデリング効果に優れていることが観察研究やランダム化クロスオーバー試験で示されている158, 177-181). CRT 適応患者に対するLBBAPの手技成功率は高く(82 ~97%) 182-184),同一患者内でCSP(HBP,LBBAP)とCRT の効果を比較した研究では, HBP とLBBAP の有効性は同等で,CSP はCRT よりも有意に電気的同期不全を解消し,血行動態を改善した147). CRT 適応症例を対象とした複数の観察研究・小規模ランダム化クロスオーバー試験・メタ解析では,LBBAP はCRT よりもQRS 幅の短縮効果が高く,LVEF を有意に改善し,全死亡や心不全入院を減少させた185-192). また,CRT 適応症例に対してCSP を第一選択治療として行った群とCRT 治療群を比較した観察研究では,CSPはCRT より心不全入院を有意に減少させたが,CSP の手技成功率は有意に低かった(84.4% vs. 94.7%) 193).さまざまな臨床研究において,CRT 適応症例に対するCSP の可能性が示されているが,大規模なRCT によるCRT との比較検証はされていない.また,CSP の効果を検証した臨床試験の多くは,LBBB や高頻度の右室ペーシングを必要とする症例が対象であり,非LBBB 症例に対するCSP の有効性は明らかではない148, 194). 一方,CRT は,複数の大規模試験で予後改善効果が示されており,伝導障害をともなった心不全患者に対する確立されたペーシング治療である137, 195, 196).そのため,CRT適応症例(特にLBBB 例)に対しては,現状CRT が第一選択治療となる5).しかしながら,解剖学的に至適な冠静脈が存在しない症例,リード留置が技術的に困難な症例, 横隔神経刺激や高ペーシング閾値のためCRT の継続が困難な症例,CRT による十分な効果が得られない症例(ノンレスポンダー)が一定数存在する. Sharma らは,冠静脈へのリード留置困難例もしくはCRT ノンレスポンダー例に対するHBP の有効性を検証し,高い手技成功率ならびにQRS 幅の短縮,LVEF の改善,心不全症状の改善を報告した171).また,LBBAP においても同様の結果が多施設観察研究で示されている197).そのため,LBBB もしくは高頻度の心室ペーシングを必要とするCRT 適応症例において,左室リードを用いたCRT が無効な場合や何らかの理由により確立できない場合,CSP を考慮してもよいと考えられる. CRT やCSP 単独では十分に電気的な同期不全の解消が得られない症例に対しては,CSP と冠静脈洞内からの左室ペーシングを組み合わせたCRT(His-optimized CRT: HOT-CRT,LBB-optimized CRT: LOT-CRT)が試みられている198, 199).本手法は,電気的同期不全をより改善させることが示されており,CRT ノンレスポンダー例に対する新たな治療選択肢として期待されている.CSP は,原則として植込み型両室ペースメーカ(CRT-P)デバイスを用いて行う必要がある.CRT-D デバイスを用いて行う場合には,通常と異なるリードやポートの使用が必要となり143),2024年2 月現在保険適用外使用となる. 6.6 房室ブロック作製術を必要とする症例 房室ブロック作成後のペーシングにおいて,CRT はRVP と比較してLVEF を保持することが複数のRCT で示されている200, 201).一方,CSP においても,房室ブロック作製術を要する症例を対象としたRCT で同様の効果が示されている202).また,永続性心房細動の心不全患者(LVEF ≦40%)では,CSP はCRT よりもLVEF を有意に改善することが確認されている203). 以上より,房室ブロック作製術を要する症例に対するペーシングには,CSP を考慮してもよいと考えられる.なお,デバイス植込みが房室ブロック作製術に先行して行われる際には,LBBAP リード留置の方がHBP リード留置よりも周術期ならびに遠隔期のリード関連有害事象を減少させ,確実な房室ブロックの作製に有用であることが報告されている204).