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p.21 抽出テキスト

左室のみでなく右室の興奮伝播も保持されるため147),右脚ブロック心不全患者においてもQRS 幅の短縮効果やLVEF の改善が示されている148).デリバリーカテーテルの改良によりHBP の手技成功率は92% 前後にまで改善されたが132),センシング不全(心房電位のオーバーセンス,心室電位のアンダーセンス)や,術後早期・遠隔期のペーシング閾値上昇と,それにともなうリード再留置(7 ~11%)がいまだ大きな懸念点である149-151).そのため,ペーシング依存症例に対してHBP を試みる際には,バックアップペーシング用のリード留置を検討する必要がある93, 146).

LBBAP の特徴は,リード留置の標的となる領域が広く,心室波高やペーシング閾値がHBP より優れている点である.LBBAP による左室興奮伝播時間はHBP と同等であり147),手技成功率は90 ~98% 前後と高い152-155).

徐脈性不整脈に対する初期のLBBAP 植込み成績を検討した本邦の多施設観察研究では,手技成功率は86.7%であり,心室中隔厚>11 mm,心室内伝導障害,重度の三尖弁逆流が手技不成功因子と報告された156).また,心不全患者に対するHBP とLBBAP の手技成功率は,房室伝導障害症例と比較していずれも10 ~20% 低いことも示されており,植込みに際しては心臓形態および心室内伝導障害の評価が重要である154-158).

LBBAP には心室中隔穿孔や中隔内血腫,冠動脈中隔枝の損傷といった特有の合併症が存在する.欧州の多施設レジストリでは,侵襲的治療介入を要した症例は限られていたものの,LBBAP 関連合併症が8.3% の症例で報告されている154).国内の多施設研究では,周術期のLBBAP 関連合併症が4%(いずれも心室中隔穿孔)で認められたが,治療介入を要した症例はなく,リードの再留置は安全に可能であった156).CSP を行う際には,心室中隔深部への留置にともなうリードの特有の挙動159),リード先端の電位変化160, 161),慢性期のリードパラメータ,ならびに起こりうる合併症を十分理解することが不可欠である.

6.3 CSP に用いるシステム

CSP の植込みには,先端のヘリックス電極が格納されていない特徴的な構造を有する細径(4.1 Fr)のルーメンレスリード(SelectSecure TM リード)がもっとも多く使用されている.一方,スタイレットルーメンのある経静脈リード(ルーメンリード)を留置する手法も試みられており,手技成績はルーメンレスリードと同等もしくはより優れていたとする報告もある154, 162).しかしながら,ルーメンリードを用いたLBBAP では,術後に左脚領域の捕捉が失われる症例がルーメンレスリードに比して有意に多い(32% vs. 12%)ことが多施設の観察研究で示されている163).また,リードの

ヘリックス電極の破損やリード断線も報告されている164, 165).

CSP リードの抜去については,ルーメンレスリードを用いたHBP において,植込み後中期(25 ± 18 ヵ月)の高い成功率(97%)が報告されている166).一方,LBBAP リードの抜去に関する報告は限定的であり167),中隔深部に長期留置されたLBBAP リード抜去の安全性に関しては,リードの種類を問わず今後の検証が必要である.なお,いずれのリードを用いたLBBAP も,国内においては2024 年2月現在保険適用外となることに留意が必要である.

6.4 徐脈性不整脈に対するCSP の適応

6.4.1 心機能正常の徐脈性不整脈 心室ペーシングの必要性が高いと予測される,心機能正

常かつ徐脈性不整脈症例に対するCSP の有用性は,複数の観察研究で検証されている.初期の報告では,心室ペーシング率が40% を超える症例において,CSP は従来のRVP と比較して心不全入院を減少させることが示された140, 149).最近では,心室ペーシング率が20% を超える症例においても,CSP は心不全増悪・CRT へのアップグレード・全死亡の複合エンドポイントを47% 低下させることが示されている168).また,LBBAP のみを対象とした観察研究では,LBBAP はRVP と比較して心不全増悪・CRT へのアップグレード・全死亡の複合エンドポイントを54% 低下させた169).

以上より,正常心機能症例において,心室ペーシング率が20% を超える,もしくは将来心室ペーシング率が増加すると予測される病態では,ペーシング誘発性心筋症を回避する目的でCSP を考慮してもよいと考えられる.ただし, CSP では刺激伝導系の障害,医原性の三尖弁閉鎖不全症,遅発性の心室中隔穿孔,血栓塞栓症153, 154, 170)などの合併症が報告されており,遠隔期の成績もまだ十分に明らかではない.そのため,心室ペーシング率の増加が見込まれない症例に対するCSP は推奨されない.

6.4.2 心機能軽度低下の徐脈性不整脈

ペーシング適応のある房室ブロック例で,かつ軽度~中等度の心不全(LVEF ≦50%)を対象としたBLOCK-HFでは,CRT はRVP と比較して主要エンドポイント(全死亡・利尿薬の経静脈投与を要する心不全増悪・左室収縮終末容積係数15% 以上の増加)を有意に低下させた138).一方,CSP はペーシングにともなうLVEF への悪影響がなく,ペーシング後にLVEF を有意に改善することが観察研