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p.18 抽出テキスト

S-ICD は本邦において,経静脈ICD 植込み適応があり,静脈アクセスが困難,もしくは感染の高リスクであり,徐脈に対するペーシング,VT に対する抗頻拍ペーシングやCRT の必要のない患者において,推奨クラスI とされている5).S-ICD に加えて,リードを胸骨下に留置する血管外植込み型除細動器(EV-ICD)が開発され,本邦でも2024年2 月現在治験が行われている.EV-ICD のリードは胸骨下の心臓近傍に留置され,徐脈に対するペーシングや抗頻拍ペーシングが可能で,かつS-ICD よりも低エネルギーでの除細動が可能である.しかし,経静脈ICD に比較してペーシング閾値が高いため,持続的にペーシングを要する患者には適さない.胸骨下のリード留置の際は,心筋損傷や気胸などを回避するため,多方向からの透視画像により,その位置を確認する.リードには2 つのコイルと2 つのリング電極があるため,複数のセンシング・ペーシングベクトルの選択が可能である.

多施設前向き単一アーム試験(316 人)におけるEV-ICD植込み時除細動成功率は98.7%(エネルギー中央値15 J)で,術中合併症はなかったとされている.抗頻拍ペーシング成功率は50.8% であった.植込み後6 ヵ月時点での合併症は7.3% で,血腫,感染,疼痛,創部離開,リード移動,不適切作動が認められた.不適切作動は29 人に認められ,P 波のオーバーセンシングがもっとも多かった121).除細動不成功例において,CT 画像を解析した研究では,胸郭幅が大きいこと,心筋の最後面と胸骨の距離が長いこと(背骨寄りに位置),心臓の位置が低位であることなどの解剖学的要素が原因と推定されたが,多変量解析では有意差はなかった122).EV-ICD についてはさらなる研究によるエビデンスの蓄積が必要と考えられる.

6 刺激伝導系ペーシング(CSP) (表7)

徐脈に対する右室心尖部ペーシング(RVP)は心拍数維持効果は得られるものの,非同期的収縮を生じ状態を悪化させる可能性があり(図4),ペーシング率の増加(ペーシング率>20 ~40%)にともない,LVEF の低下や心不全増悪などの心血管イベントが増加することが報告されている123-125).右室心尖部以外に右室中隔ペーシングが試みられてきたが,心血管イベントの抑制効果は示されなかった126).

心室ペーシングにともない経時的にLVEF の低下が生じる病態はペーシング誘発性心筋症とよばれ,ペースメーカ植込み症例の12 ~20% に認められる127).高い心室ペーシング率,ペーシングQRS 幅>160 ms,術前のLVEF の

低下などがペーシング誘発性心筋症の危険因子として報告されており,特にLVEF が軽度~中等度に低下した症例でその影響は顕著である128, 129).

右室心尖部や中隔の局所心筋ではなく,刺激伝導系を直接捕捉するヒス束ペーシング(HBP)は,動物実験130)や臨床例131)で生理的な興奮伝播様式が保持されることが示されて期待されたが,手技成功率が低いことが大きな課題であった132).近年,デリバリーカテーテルを活用したリード留置が可能となり,HBP のみならず左脚領域を直接捕捉することにより生理的な興奮伝播様式を保持するCSPの手技成功率の向上ならびに臨床的有用性が徐々に明らかとなり,ふたたびCSP の可能性に注目が集まっている(図5 98, 101, 129, 132-141)).

6.1 定義

CSP は,刺激伝導系(ヒス束,右脚,左脚本幹ならびに左脚枝)を捕捉するペーシング法の総称である.ペーシン

表7 CSP の適応の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

徐脈性不整脈に対するCSP の適応ペースメーカ適応の房室伝導障害患者で,高頻度の心室ペーシング(>20%)が予測され,かつ軽度~中等度の左室収縮能低下(LVEF 36 ~50%)を認める場合,刺激伝導系ペーシングを考慮する

* IIa C

ペースメーカ適応の房室伝導障害患者で,高頻度の心室ペーシング(>20%)が予測され,かつ左室収縮能低下を認めない場合,ペーシング誘発性心筋症を回避する目的で,刺激伝導系ペーシングを考慮してもよい

* IIb C房室ブロック作製術を必要とする症例に対して,刺激伝導系ペーシングを考慮してもよい

* IIb C CRT の代替療法としてのCSP の適応心臓再同期ペーシング適応の左脚ブロック,もしくは高頻度の心室ペーシング(> 20%)を必要とする患者において,通常の経冠静脈的左室リードペーシングが無効,または何らかの理由により確立できない場合,刺激伝導系ペーシングを考慮する

* IIa C *:2024 年2 月現在,左脚領域ペーシングに対するルーメンレスもしくはスタイレットルーメンのある経静脈リードは,いずれも保険適用外使用