p.17 抽出テキスト
4 反射性失神に対する ペースメーカ治療(表6) 反射性失神に対するペースメーカ治療は,本邦では長い心停止(症状時>3 秒,無症状時>6 秒)が確認されている40 歳以上の患者で,かつ身体的圧上昇手技や起立調節訓練法などの他の治療が無効の場合にかぎり,2 腔型ペースメーカの適応が推奨クラスIIb とされている5). 近年,再発性の心抑制型反射性失神患者に対するclosed loop stimulation センサー付き二腔ペースメーカ(DDD-CLS)の失神再発抑制効果が報告された.CLS は右室リードによる心内インピーダンスの変化から心筋の収縮性を推定し,ペーシングレートを調整するアルゴリズムである. 小規模のランダム化オープン試験では,DDD-CLS 群における失神再発抑制効果が確認され109, 110),二重盲検試験 でもDDD-CLS の失神再発抑制および初回失神までの期間延長111, 112)やQOL 改善効果113)が報告されている.5 年間追跡した後ろ向き研究では,DDD-CLS は理学療法と比較し,失神リスクを有意に減少させた114).DDD ペースメーカ植込み後にヘッドアップチルト試験を行った多施設研究では,DDD-CLS はDDD と比較し,ヘッドアップチルトによる失神や血圧低下を抑制したことが示された115).反射性失神の初期段階からCLS センサーにより心拍数を上昇させて心拍出量を維持し,失神を予防したと考えられる. 以上のエビデンスより,本フォーカスアップデートでは, 40 歳以上の再発性心抑制型反射性失神患者に対してヘッドアップチルト試験を行い,心抑制型を示す場合に, DDD-CLS ペースメーカ治療を推奨クラスIIa とした. CLS の有無を比較したランダム化二重盲検試験はこれまでになく,長期成績も不明であり,今後大規模試験による検討が望まれる.なお,ヘッドアップチルト試験で,血圧低下反応を認める反射性失神に対する通常のペースメーカの予防効果は示されていないため116),従来通り推奨クラスIII とした. 5 植込み型除細動器の今後の進歩 皮下植込み型ICD(S-ICD)では,経静脈ICD に比較してリード関連合併症が3 割減少することがPRAETORIANの二次解析で示されたものの117),徐脈に対するペーシング,ならびにVT に対する抗頻拍ペーシングができないため,S-ICD の植込みを諦めざるを得ない場合があった.近年,S-ICD と専用のリードレスペースメーカを組み合わせてこの課題を解決するシステムが開発された.抗頻拍ペーシングが無効である場合,S-ICD から除細動を行う.動物実験ではS-ICDとリードレスペースメーカ間の良好な通信,ならびに抗頻拍ペーシング成功率が報告されている118-120). ヒトを対象とした多施設前向きの単一アーム試験は2024年2 月現在進行中であり,S-ICD とリードレスペースメーカの併用治療の安全性および有効性の結果が待たれる. 1 Roberts PR, ElRefai M, Foley P, et al. UK Expert Consensus statement for the optimal use and clinical utility of leadless pacing systems on behalf of the British Heart Rhythm Society. Arrhythm Electrophysiol Rev 2022 Apr:11: e19. PMID: 36304202 2 Crossley GH, Piccini JP, Longacre C, et al. Leadless versus transvenous single-chamber ventricular pacemakers: 3 year followup of the Micra CED study. J Cardiovasc Electrophysiol 2023; 34: 1015-1023. PMID: 36807378 文献 表6 反射性失神に対するペースメーカ治療の推奨と エビデンスレベル推奨クラスエビデンス レベル 40 歳以上の再発性心抑制型反射性失神で,かつヘッドアップチルト試験において心抑制型を示す症例に対し,DDD- CLS ペースメーカを考慮するIIa C 40 歳以上の再発性反射性失神患者で,心電図で心抑制型の自然発作(症状時>3秒の心停止,無症状時>6 秒)が確認され,かつ他の治療法が無効な症例に対し, DDD ペースメーカ治療を考慮してもよいIIb C 40 歳未満の反射性失神患者に対するペースメーカ治療は推奨されないIII No benefit C 40 歳以上であっても,心電図で失神発作がとらえられておらず,心抑制型と判断できない患者に対するペースメーカ治療は推奨されないIII No benefit C反射性失神で,40 歳以上であっても心電図で自然発作がとらえられておらず,ヘッドアップチルト試験において血管抑制型を示す患者に対して,CLS 機能を有さないペースメーカ治療は推奨されないIII No benefit C