p.16 抽出テキスト
菌血症が認められた患者65 人を含む86 人について,デバイス抜去と同時にリードレスペースメーカを植込み,術後163 日の追跡を行った.感染の再発はなかった.死亡は25人(29%)で,そのうち88% は感染との因果関係はなかったが,9 人にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染またはカンジダ感染,3 人にリード抜去にかかわらず持続性感染を認めた105). Breeman らは,デバイス抜去前(4 人),抜去と同時(5人),抜去後(20 人)のタイミングでリードレスペースメーカ植込み術を施行した.32 ヵ月の追跡期間において,再感染は全例で認めなかったが,大腿動脈からの出血を2 人に認めた106).Bicongらも感染による抜去後にリードレスペースメーカ植込みを行った39 人を解析し,平均2 年間の追跡において再感染は認めなかったが,合併症3 人(穿刺部 血腫,大腿動静脈瘻,ペースメーカ症候群)が発生したと報告している107). デバイス抜去後のリードレスペースメーカ植込み(184人)と,初回リードレスペースメーカ植込み(995 人)を比較した多施設研究では,33 ヵ月の追跡期間において,植込み関連合併症(リード抜去後植込み群1.6% vs. 初回植込み群2.2%)や全死亡(5.4% vs. 7.8%)のいずれも有意差を認めなかった108). デバイス抜去後のリードレスペースメーカ植込みは有用であると考えられるが,長期的な成績に関してはさらなる研究が必要である. 2024 年2 月現在,本邦で承認されているリードレスペースメーカはVVI タイプ(MicraTMVR はタイン型, AveirTMVR はスクリュー型)とVDD タイプ(MicraTM AV)の2 種類である.VVI またはVDD という性質上,房室同期は100% ではなく,おもに徐脈性心房細動や高齢者に対して植込みが行われてきた.しかし,若年者に対してもデバイス感染,リード損傷,静脈閉塞などのリスク低減・回避が可能なリードレスペースメーカが再考されつつある.適応の判断は,1静脈アクセスや感染リスク,2心房ペーシングの必要性,3高い房室同期の必要性に基づいてなされることが多い1). リードレスペースメーカは右室内に本体が留置されるため,経静脈ペースメーカでの静脈内リードや前胸部皮下ポケットが不要である.このため,ペースメーカの合併症の原因の多くを占める皮下ポケットや,リードに関連する合併症が回避される.米国のメディケアのデータを用いたCED で,リードレスペースメーカにおいて,合併症が3 年間で3 割減少したことが示されている2).リードレスペースメーカ本体は血流の速い右室内に留置され,比較的早期に内皮化すること,血流の遅い静脈内に留置される静脈リードの表面積に比較して圧倒的に小さいこと,などから感染リスクが低減したと考えられている.そのためステロイドや免疫抑制薬などで治療されている患者,血液透析,デバイス感染既往,先天性心疾患や何らかの理由により鎖骨下静脈など通常のリードの経路が閉塞・狭窄している患 者,放射線治療中,血管内カテーテルやポートなどが留置されている場合や,留置予定でアクセスを確保しておく必要のある患者などでは,リードレスペースメーカが選択されることが多い. 本邦におけるリードレスペースメーカで2024 年2 月現在可能なモードはVVIR とVDD であり,いずれも心房刺激はできない.心房刺激や房室同期が必須で,心房リード挿入のリスクよりもそのメリットが大きい患者,または刺激伝導系ペーシングを必要とする患者においては,経静脈ペースメーカが推奨される.VDD のペースメーカではトラッキング可能な上限心房レートは115 拍/ 分程度であるため,活動性が高く,それを超えた頻拍が多い患者では,運動時に房室同期がなくなることが現行システムの限界である.特に,運動時の房室ブロックに対する治療としては,現段階ではリードレスペースメーカでは房室同期が維持されず,ペースメーカ症候群をきたす可能性も否定できないため,経静脈ペースメーカが推奨される.電池寿命は12年程度であるものの,次世代のものは寿命の延長が期待される.なお,MicraTMでは内皮化により抜去は難しいとされている.海外では成長期の小児へ,将来の経静脈ペースメーカまでのブリッジとして,リード断線や静脈閉塞のリスクのないリードレス植込みを行っている報告もあり,今後の適応の変化が予測される. リードレスペースメーカと経静脈ペースメーカをどう使い分けるか? PQ 1解説