p.11 抽出テキスト
としての使用が十分でない可能性が示唆されている.またAn らは,MADIT-II の組み入れ基準を満たす虚血性心筋症患者(LVEF ≦30%)でのICD 適切作動率が3 年時に37% であったと報告している40). 2022 年の欧州心臓学会(ESC)ガイドラインでは, NYHA 心機能分類II ~III,LVEF ≦35% の心不全患者に対する一次予防ICD は推奨クラスI とされており, NSVT の有無は項目として含まれていない41).一方, NSVT は突然死予測因子かつICD 適切作動の危険因子であることが報告されている.過去のメタ解析の結果から, NSVT の心機能低下症例における突然死予測の特異度は89 ~97% と高く42),Makimoto らは一次予防ICD 患者において,ICD 植込み後の記録で32% にNSVT を認め, NSVT が記録された症例は,その後のICD 適切作動リスクが高かったと報告している43).また本邦の前向き登録研究JANIES-SHD(66% が虚血性心疾患)において,LVEFの低下およびホルター心電図でのNSVT の存在は,致死性不整脈イベントの独立予測因子であることが示されている44). 以上から,NSVT がとらえられた症例は致死性不整脈のリスクが明らかに高いものの,一方でNSVT の定義に関する問題がある.本邦での近年の虚血性心筋症患者における致死性不整脈発生率は欧米と同等と考えられ,心機能が低下している虚血性心筋症症例では,NSVT を認めなくても, ICD の使用を積極的に考慮する必要がある. 1.4 非虚血性心筋症(表3) 非虚血性心筋症の致死性不整脈リスクの層別化に,心臓MRI の遅延造影と遺伝子検査が有用であると報告されている.非虚血性心筋症に関する2,948 人のメタ解析では,一次予防ICD 症例において42% で心臓MRI での遅延造影を認め,致死性不整脈の年間発生率は遅延造影のある群ではそれがない群に比して有意に高かったが(17.2% vs. 2.1%,HR 7.8,P =0.007),遅延造影とLVEF に相関はなかった(P =0.22) 45).さらに,非虚血性心筋症1,020 人に関する検討でも,致死性不整脈発生は心臓MRI の遅延造影と有意に関連していたが,LVEF の低下(≦35%)との相関はなかった46).これらの結果は,非虚血性心筋症の致死性不整脈発生リスクをLVEF だけで予測することの限界を示していると考えられた. 遺伝子検査については,非虚血性心筋症487 人に対する検討において,37% に病原性遺伝子変異が確認され,特に核膜の裏打ち蛋白であるラミンA をコードする遺伝子(LMNA)の変異を有する症例では,突然死および致死性不整脈発生のリスクが有意に高かったと報告さ れている47). これらをふまえて,2022 年のESC ガイドラインでは,左室機能低下症例(LVEF <50%)において,以下の4 つのリスク(1失神,2心臓MRI の遅延造影,3電気生理学的検査で誘発された単形性VT,4LMNA/PLN/ FLNC/ RBM20 の病原性遺伝子変異)のうち2 つ以上を有する症例ではICD の適応が推奨されている41).適応を検討する際の致死性不整脈リスク評価に心臓MRI の遅延造影や遺伝子検査(2024 年2 月現在本邦保険未収載)を考慮することが重要である. 2 心臓サルコイドーシスに対するICD サルコイドーシスは原因不明の非乾酪性肉芽腫を特徴とする,全身性の炎症性疾患である48).罹患臓器のうち,肺病変の合併がもっとも高率であるが,約5% に心臓病変(心臓サルコイドーシス)を認め,サルコイドーシスによる死因の約半数が心臓病変によるものであった49, 50).近年,心臓のみに病変を有する心臓限局性サルコイドーシスの存在がクローズアップされ51),予後不良であることから52),鑑別診断の重要性が増している. 2.1 心臓サルコイドーシスの臨床像 心臓サルコイドーシスの臨床像は,左室機能障害による心不全,高度房室ブロックや致死性心室不整脈(VT/心室細動[VF])による心臓突然死に特徴づけられる53).完全房室ブロックは肉芽腫炎症54),VT/VF は組織線維化による瘢痕形成に起因することが多いが,炎症が直接関連する可能性も示唆されている55).本症は炎症が病態の首座であるため,治療の中心はステロイド剤を含む免疫抑制療法である56, 57).したがって,ICD の適応と判断された症例でも,十分な免疫抑制療法を施行する必要がある. 近年の国内外における比較的大規模な疫学調査では,本症における主要有害事象のなかでも,VT/VF や突然死の発生率が高いことが明らかとなった58, 59).また,一次予防ICD 植込み例での検討でも,拡張型心筋症と比較して, VT/VF がICD 植込み早期から頻回に生じることが報告されている60).フィンランドの351 人を対象とした多施設後ろ向き研究では,約14% に心臓突然死が認められ,死因の約80% を占めていた58).また,本邦における512 人を対象とした多施設後ろ向き研究でも,診断後5 年間におけ