p.10 抽出テキスト
各研究間で統一されていないという問題点が指摘されている22). また,ICD 植込み後の高齢者121 人に関する報告23)では,併存疾患から予測死亡率を算出するスコアであるチャールソン併存疾患指数(Charlson Comorbidity Index: CCI) 24)が高いほど生存率が有意に低く,CCI が0 ~1,2 ~ 3,4 以上の症例における5 年生存率は,それぞれ78%, 57%,29% であった.高齢者でのICD 適応を検討する際には,フレイルや認知機能,および併存疾患を考慮し,個々の症例に応じた適応を検討することが必要である. 1.2 致死性不整脈の危険因子とICD 適応(表3) ICD の一次予防適応決定においては,患者個々の致死性不整脈による突然死のリスクと非不整脈死のリスクを検討する必要がある.近年,両リスクを勘案したスコアリングが発表されている.MADIT-ICD ベネフィットスコアでは,8 つの心室不整脈危険因子(LVEF ≦25%,心房性不整脈,脈拍>75 拍/ 分,血圧<140 mmHg,心筋梗塞, 75 歳未満,男性,非持続性心室頻拍[NSVT]の既往),7つの非不整脈死危険因子(ICD か両室ペーシング機能付き植込み型除細動器[CRT-D]か,NYHA 心機能分類≧II,糖尿病,(body mass index[BMI]<23 kg/m 2,心房性不整脈,LVEF ≦25%,75 歳以上)から一次予防ICD の有用性を検討するスコアリングシステムが提唱されている(https://is.gd/madit) 17). 同システムでのスコアが高い群(76 ~100)においては,致死性不整脈発生のリスクが非不整脈死リスクの約3 倍であった(20% vs. 7%,P <0.001).また,Dauw らは心臓再同期療法(CRT)患者475 人において,MADIT- ICD ベネフィットスコアの有用性を検討し,観察期間34 ヵ月(中央値)でベネフィットスコアが最低/ 中間/ 最高の群における致死性不整脈の発生率はそれぞれ1.8%/4.1%/14.4%,非不整脈死は19.4%/14.6%/3.3% であったと報告した25).このように,MADIT-ICD ベネフィットスコアは,CRT 患者における除細動機能の必要性の検討についても有用な可能性がある. しかし,本スコアリングシステムには,基礎となるデータに突然死のリスクが低いとされているアジア人がほとんど含まれていないこと26-29)や,RCT の組み入れ基準を満たさない症例(複数の合併症を持つ症例や心機能が比較的保たれている症例)が含まれていないという限界が指摘されている30). また,Seattle Proportional Risk Model: SPRM(http:// depts.washington.edu/sprm/about.php)を使用した不整脈死のリスクと全死亡の予測を用いたICD 適応も提唱されて いる.SPRM はICD 非植込みの心不全患者9,885 人から患者背景をもとに作成された突然死と非突然死の予測モデルであり,NYHA 心機能分類,糖尿病,ジゴキシンの使用,年齢,BMI,LVEF,収縮期血圧,血清ナトリウム値,血清クレアチニン値を評価因子として使用する31). Bilchick らは,NCDR を用いて,SPRM の妥当性を検討した32).低心機能心不全患者(LVEF ≦35%)98,846 人(ICD 植込み87,914 人,非植込み10,932 人)において, SPRM により算出されたリスクに基づき,5 群に分けて比較を行った.ICD による死亡率低下に関しては,その効果がもっとも低い群では19% であったのに対して,もっとも高い群では40% と,約2 倍の差があった.Fukuoka らは, SPRM の本邦の心不全患者に対する妥当性を検討し,低心機能症例(LVEF ≦35%)667 人において,SPRM で突然死リスクが高い症例では,ICD により30% の死亡率低減が期待できることを報告している33). このように,致死性不整脈のリスクと非不整脈死のリスクを勘案したスコアリングの有用性が示されているが,これらのリスク層別化スコアは,今後本邦のデータをもとに検証されるべきである.実際の適応決定においてはスコアリングのみでなく,致死性不整脈リスクを考慮したICD のメリット,併存疾患などを考慮した患者予後を踏まえ, ICD の有益性を総合的に判断する必要がある.また情報を十分に提供し,患者中心の意思決定を行うことが重要である. 1.3 虚血性心筋症 本邦の虚血性心筋症患者では,心筋梗塞後の突然死リスクが低いという考えが広まっていたことから34, 35),ガイドラインでICD 適応となっている患者におけるリアルワールドでの使用率が低いことが示されている36). 一般的に,一次予防症例は二次予防症例に比べICD の作動率が低いとされる37).しかし,ICD 植込み後の虚血性心筋症患者493 人のうち,背景因子を調節した266 人(一次予防症例,二次予防症例各133 人)について検討したNippon Storm のサブ解析では,2 年間のICD 適切作動率はそれぞれ15.3%,23.9% であり,有意差を認めなかった(P =0.114) 38).虚血性心筋症患者392 人(一次予防165人,二次予防227 人)を対象にしたJID-CAD registry でも,一次予防群および二次予防群のICD 適切作動率は同程度であった(P =0.576) 39).このように,本邦の虚血性心筋症では,ICD 適切作動率は一次予防症例と二次予防症例で変わらず,虚血性心筋症患者でのICD の一次予防