p.9 抽出テキスト
2 本ガイドラインの適用範囲 本ガイドラインの適用範囲は診療の一環として行う遺伝学的検査であり,日本医学会「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」1)に基づく.診療の一環として行う遺伝学的検査については,有用性が確立されているものについてその臨床使用について論を待たないが,有用性は確立していないがその可能性が高いと考えられるもの,あるいはその区別が現段階では不明確なものが存在する.後者のような遺伝学的検査については “ 患者の不利益を最小限にとどめ,患者の利益を最大限に尊重する” という前提に基づいて十分な検討を行い,患者,家族へその可能性について十分な説明を行い実施する.特にその有用性が未確立な遺伝学的査は,研究の範疇との分離は容易ではないため,研究と判断される場合は,「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針(2021 年施行・2023 年改訂)」2)を遵守し,施設あるいは中央における倫理審査委員会による評価・承認を得て実施する必要性がある. 3 推奨クラスとエビデンスレベル エビデンスレベルの決定においては,日本循環器学会の先行する各種ガイドラインとの整合性を保つように留意した.海外のエビデンスに基づいた資料を調査するとともに,わが国における遺伝学的検査・診療の実施体制・医療資 源・保険制度なども十分に検討を行い,外部評価委員の見解も含めて班員・協力員全体で議論のうえ,決定した. 推奨度とエビデンスのグレードは,米欧のガイドラインを参考しつつ日本循環器学会ガイドライン作成の手引き(改訂版2020 年3 月12 日発行)に準拠し,推奨の程度をクラス I,IIa,IIb,III(No benefit),III(Harm)に(表1),その根拠のレベルをレベル A,B,C に分類した(表2). 第2章 遺伝学的検査に関する指針 近年,次世代シーケンス(next-generation sequencing: NGS)を用いた遺伝学的検査の実施拡大に伴い,生殖細胞系列遺伝情報の取り扱いへの対応が求められるようになった.遺伝情報には不変性,予測性,共有性,およびあいまい性という特性がある.この特性ゆえ,これが漏えいした場合には,本人および血縁者が被る被害および苦痛は大き なものとなるおそれがある3).遺伝学的検査を実施する際の指針として,「医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」1)が2022 年3 月に改訂された.また「診療において実施するマイクロアレイ染色体検査のガイダン 表1 推奨クラス分類 クラス I手技・治療が有効,有用であるというエビデンスがある,あるいは見解が広く一致しているクラス IIaエビデンス・見解から,有効・有用である可能性が高い.クラス IIbエビデンス・見解から,有効性・有用性がそれほど確立されていない.クラス III No benefit手技・治療が有効・有用でないとのエビデンスがある.あるいは見解が広く一致している.クラス III Harm手技・治療が,有害であるとのエビデンスがある.あるいは見解が広く一致している. 表2 エビデンスレベル レベル A複数のランダム化比較試験またはメタ解析で実証されたもの.レベル B単一のランダム化比較試験またはランダムではない大規模な臨床試験で実証されたもの. レベル Cランダム化介入でない小規模な臨床試験,後ろ向き研究,登録研究などの結果,または専門家の間での合意に基づくもの.