p.86 抽出テキスト
臨床診断FH の 6% と高頻度に認めている.E32K 変異がLDL 受容体による FH ヘテロ接合体に合併すると FH ホモ接合体類似の臨床像を呈するが,薬物治療への反応性はLDL 受容体の FH ホモ接合体に比べると良好である.同様に V4I 変異を FH の 6% に認め,V4I 変異が LDL 受容体変異に合併すると FH ホモ接合体類似の臨床像を呈する535).臨床上 FH ホモ接合体と区別することは困難な場合があるが,LDL 受容体と PCSK9 変異をそれぞれの対立遺伝子に持つ場合は遺伝学的にはホモ接合体ではなく,ダブルヘテロ接合体となる. 2.3 LDL Receptor adapter protein 1 (LDLRAP1) LDL 受容体のエンドサイトーシスにアダプター蛋白として関与し,遺伝子変異を両親から受け継いだ場合にARHとして発症する.ARH は巨大な黄色腫が認められ,顕著な高 LDL-C 血症から FH ホモ接合体が疑われるが,両親に高 LDL-C 血症が認められないときに疑うべき非常に稀な疾患である543, 544).本疾患は FH ホモ接合体として扱う. 3 FH の診断 FH は高 LDL-C 血症,アキレス腱肥厚や皮膚黄色腫,および家族歴により診断する(表44,45) 537, 538).アキレス腱肥厚は視診,触診にて診断するが,診断に迷うときはX 線撮影もしくは超音波検査を行い,アキレス腱の最大径を測定し,X 線撮影の場合には男性で8.0 mm 以上,女性で7.5 mm 以上で肥厚ありと診断し,超音波検査の場合には男性で6.0 mm 以上,女性では5.5 mm 以上で肥厚ありと診断する.皮膚・腱黄色腫は手,肘,膝関節などの伸側に好発する.家系内に早発性冠動脈疾患の発症を認めることが多く,家族歴を正しく聴取することが,正しい診断をするうえできわめて重要である.また,FH と診断された場合,必ず血縁者の診断(cascade screening)を検討する. FH ホモ接合体の多くは血清総コレステロール値600 mg/dL 以上,小児期からみられる皮膚・腱黄色腫と動脈硬化性疾患,両親が FH へテロ接合体である特徴を有する.黄色腫のために小児期に皮膚科を最初に受診することがあり,この時点で皮膚科医が FH ホモ接合体を見逃さないことがきわめて大切である.FH ヘテロ接合体の重症例と区別が困難な場合もあり,FH ホモ接合体の確定診断には,遺伝学的検査が必要である538). FH 関連遺伝子の病的バリアントがある場合,FH と診断 する.FH(ヘテロ接合体およびホモ接合体)に対する遺伝学的検査は,2022 年4 月より保険適用になった. 4 FH における遺伝カウンセリング 遺伝学的検査・診断に際して,必要に応じて適切な時期に遺伝カウンセリングを実施する.遺伝カウンセリングは情報提供だけではなく,患者や血縁者の自発的選択が可能となるような心理的社会的支援が重要であることから,当該疾患の診療経験が豊富な医師と遺伝カウンセリングに習熟した者が協力し,チーム医療として実施することが望ましい.遺伝カウンセリングの内容について,記載内容がプライバシー等を損なうおそれがある場合には,通常の診療録とは切り離して記載・保存するなど,慎重な対応が求められる.FH の基本型は常染色体顕性遺伝(優性遺伝)性疾患であるので,ここでは3 つの病因遺伝子(LDLR, APOB,PCSK9)異常について説明する.子がFH ヘテロ接合体であればどちらかの親がFH ヘテロ接合体である.片親がFH ヘテロ接合体であれば50% の確率で子もFHヘテロ接合体となり,両親ともにFH ヘテロ接合体であれば,子は75% の確率で発症(25%:FH ホモ接合体, 50%:FH ヘテロ接合体)する.FH ヘテロ接合体患児の両親ともに臨床的に異常の見つからない時には,患児に起きた突然変異,両親の症状が軽い,あるいは養子等で真の血縁関係がないなどの可能性を考える必要がある.出生前診断や着床前診断も一部で試みられているが,たとえFH ホモ接合体であっても知的異常がなく治療法も存在するので,慎重に考える必要がある. FH の遺伝学的検査施行,遺伝カウンセリングを行うことについて,単一のランダム化介入試験が行われ,LDL-C値の低下に対して有効であるとのエビデンスがある(表46) 545)(推奨クラスI,エビデンスレベルB) 表46 FH に対する遺伝カウンセリングと遺伝学的検査に ついての推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 家族性高コレステロール血症に対して遺伝学的検査を実施するとともに遺伝カウンセリングを実施する. I B