p.85 抽出テキスト
て重要な役割を果たす.臨床診断された FH ヘテロ接合体の6 ~8 割で原因遺伝子の変異が確認されている535, 536).高LDL-C 血症に加え,これらの遺伝子に病原性変異が確認されれば確定診断となる.診断基準は表44,45 の通りで必ずしも遺伝学的検査は必須ではない537, 538).遺伝学的検査はFH の診断をより確実なものとするが,遺伝学的検査ができる施設は限られている.また,発端者の遺伝子診断学的検査がなされている場合は,家族のFH 診断も確実となる. FH ホモ接合体は対立遺伝子双方にLDL 受容体,アポB-100,または機能獲得型のPCSK9 の異常をもつものと定義される.ARH はlow-density lipoprotein receptor adaptor protein 1(LDLRAP1)遺伝子の病原性変異に起因する常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)性疾患で,そのホモ接合体は臨床的にはFH ホモ接合体の表現型となり,FH ホモ接合体に含められる. 近年,上述のようなLDL 受容体およびその関連蛋白の稀少病原性遺伝子変異に伴うFH に加えて,LDL 代謝に関与する遺伝子座の高頻度遺伝子多型の重積に伴う,いわゆる多因子FH(polygenic FH)の存在が示唆され報告されている539).しかし,現時点で既知のいかなる組み合わせを考慮しても,高頻度遺伝子多型の重積のみで,いわゆるFH を発症する根拠は存在せず,FH の発症に関わるという よりFH(およびその他の高LDL-C 血症)の表現型に影響を与えていると考えられる. 2.1 LDL 受容体 FH の原因遺伝子として,最初に同定されたのがLDL 受容体であり,FH の5 ~6 割は LDL 受容体の病的遺伝子変異が原因である.これまでに世界で1,000 種以上の病原性遺伝子変異が FH の原因として報告されている540).わが国に限っても100 種以上の変異が報告されている541). LDL 受容体は,細胞表面に存在し,LDL 中のアポリポ蛋白B100 と結合して細胞内にLDL を取り込んでいる. 2.2 Proprotein convertase subtilisin/ kexin type 9(PCSK9) PCSK9 は元々は神経栄養因子として知られていたが, LDL 受容体が正常なFH 家系から連鎖解析でコレステロール代謝に大きく関わることが明らかになった542).PCSK9は LDL 受容体の分解に関与し,機能獲得型変異は LDL受容体を減少させて高 LDL-C 血症をきたす.PCSK9 機能獲得型変異は,必ずしも FH のような高度の高 LDL-C血症をきたすとは限らず,わが国では軽度機能獲得型で, LDL-C 上昇も比較的軽症な E32K 変異を一般人の 1 ~ 2%, 表44 成人(15 歳以上)FH の診断基準 1.高LDL-C 血症(未治療時のLDL-C 値180 mg/dL 以上) 2.腱黄色腫(手背,肘,膝等またはアキレス腱肥厚)あるいは皮膚結節性黄色腫3.FH あるいは早発性冠動脈疾患の家族歴(第一度近親者) • 他の原発性・続発性脂質異常症を除外した上で診断する. • すでに薬物治療中の場合,治療のきっかけとなった脂質値を参考にする. • アキレス腱肥厚はX 線撮影により男性 8.0 mm 以上,女性7.5 mm 以上,あるいは超音波により男性 6.0 mm 以上,女性 5.5 mm 以上にて診断する. • 皮膚結節性黄色腫に眼瞼黄色腫は含まない. • 早発性冠動脈疾患は男性55 歳未満,女性65 歳未満で発症した冠動脈疾患と定義する. • 2 項目目以上を満たす場合にFH と診断する. • 2 項目以上を満たさない場合でも,LDL-C が 250 mg/dL 以上の場合,あるいは 2 または 3 を満たし LDL-C が 160 mg/dL 以上の場合はFH を強く疑う. • FH 病原性遺伝子変異がある場合はFH と診断する. • FH ホモ接合体が疑われる場合は遺伝学的検査による診断が望ましい.診断が難しいFH ヘテロ接合体疑いも遺伝学的検査が有用である. • この診断基準はFH ホモ接合体にも当てはまる. • FH と診断した場合,家族についても調べることが強く推奨される. (Harada-Shiba M, et al. 2023 537)より) Copyright©2023 Japan Atherosclerosis Society. CC BY-NC-SA表45 小児(15 歳未満)FH の診断基準 1.高LDL-C 血症(未治療時のLDL-C 値140 mg/dL)以上,複数回確認) 2.FH の家族歴(親または同胞) 3.親のLDL-C が180 mg/dL 以上または早発性冠動脈疾患の家族歴(祖父母または親)他の原発性・続発性高LDL-C 血症を除外し, • 項目1 と2 で,FH と診断する. • 項目1 と3 で,FH 疑いと診断する。本人のLDL-C180 mg/dL 以上の場合はFH と診断する. • 項目1 のみでも,250 mg/dL 以上はFH,180 mg/dL 以上はFH 疑いと診断する. • LDL-C が250 mg/dL 以上の場合や黄色腫が認められる場合,ホモ接合体を鑑別する. • 本人にFH の病原性遺伝子変異がある場合はFH と診断する.親または同胞にFH 病原性遺伝子変異が判明すればFH の家族歴(項目2)に加える. • 早発性冠動脈疾患は,男性55 歳未満,女性65 歳未満で発症した冠動脈疾患と定義する. • FH 疑い例は更なる精査や脂質低下療法が必要である. (Harada-Shiba M, et al. 2023 538)より) Copyright©2023 Japan Atherosclerosis Society. CC BY-NC-SA