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5 患者および家族への説明 遺伝学的検査を行う場合,本人だけでなく家族にも血栓性素因を有することを認識してしまう可能性があることを伝えるべきである.また遺伝学的検査のメリットとして静脈血栓症を発症した本人は,疾患の病態把握や今後の治 療方針の一助となりうる.未発症の家族が病的バリアント保有者であると判明した場合,妊娠や手術などの血栓症発症リスクに応じて静脈血栓症の予防対策を行うことにつながる.遺伝学的検査を行う際に十分に本人および家族に説明が必要であり,遺伝カウンセリングの体制を備えていることが望まれる. 第14章 家族性高コレステロール血症 1 家族性高コレステロール血症(FH) 家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia: FH)は,LDL 代謝経路に関わる遺伝子の変異により引き起こされる遺伝病であり,1高LDL コレステロール(LDL-C)血症,2早発性冠動脈疾患,3腱・皮膚黄色腫を3 主徴とする.きわめて稀(わが国に数家系)に認められる常染色体潜性(劣性)高コレステロール血症 (autosomal recessive hypercholesterolemia: ARH)以外は顕性遺伝(優性遺伝)形式をとる. FH ヘテロ接合体は生下時から高LDL-C 血症を示し,早発性動脈硬化症による冠動脈硬化症の進展を認める529). FH ヘテロ接合体は,冠動脈疾患のリスクがきわめて高い疾患であり,未治療の男性で30 ~50 歳,女性で50 ~70歳の間に心筋梗塞,狭心症などの冠動脈疾患を認める530). FH ヘテロ接合体では,未治療の場合に冠動脈疾患発症リスクが非FH に比べて約13 倍高いとされている531).高LDL-C 血症自体は無症状であるので,高LDL-C 血症患者を診察する場合にはFH を常に念頭に置き,早期診断および適切な治療を行い,血縁者の診断(cascade screening)を実施することが若年死の予防につながる. 近年の分子疫学的研究のメタ解析によると,世界の一般人口における FH の頻度はおおむね300 人に 1 人程度存在すると考えられている532, 533).日本人においても他国と同様 300 人に1 人という 高頻度でFH ヘテロ接合体が存在し, 40 万人以上の患者がいると推定される.FH 患者を診療する医療従事者は,本疾患が主として常染色体顕性遺伝(優性遺伝)性疾患であることをよく認識し,その家族の診断と治療にも関わることが求められる. FH ホモ接合体は,生下時より顕著な高LDL-C 血症を示し,特徴的な皮膚黄色腫を有することが多い.頻度は一般人口の約30 万人に1 人とされている.アキレス腱黄色腫,角膜輪,全身性動脈硬化症は,小児期において著明に進行する.動脈硬化症は,冠動脈だけでなく大動脈弁にも進行し,特徴的な弁上狭窄,弁狭窄を形成する534).大動脈弁上狭窄,弁狭窄,冠動脈狭窄が,乳幼児期に出現し,進行して30 歳までに狭心症,心筋梗塞,突然死を引き起こすことが知られている. 2 FH の原因遺伝子 FH は,LDL 受容体経路に関わる遺伝子バリアントによるものである.FH の原因となるのは,LDL 受容体の病原性遺伝子変異のほか,アポリポ蛋白B-100(アポB-100)の病原性変異およびproprotein convertase subtilisin/kexin type 9(PCSK9)の病原性機能獲得型遺伝子変異(Gain-offunction mutation)で,いずれの分子もLDL 代謝におい