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p.83 抽出テキスト

症の遺伝学的検査に関する推奨を示す.表42 に示すさまざまな後天的因子がAT,PC,PS 活性値および抗原値に影響を及ぼす.それら後天的因子の存在を評価したうえで遺伝性血栓性素因の精査を行うべきかどうかを考える必要がある.また表43 のごとく抗凝固薬の種類や測定方法により活性値に影響を及ぼす527).年齢において,6 歳以下の新生~小児期でのAT,PC,PS 活性の正常下限値は,成人の正常下限値よりも低いことが報告されている528).6 歳以下の患者(もしくは家族)の活性値を測定する場合は,正常下限値の違いに留意する必要がある. 3 遺伝学的検査

AT 欠乏症,PC 欠乏症,PS 欠乏症の遺伝学的検査は,保険診療として行うことができる(各々1 検査につき5,000点の保険点数2023 年3 月時点).AT 欠乏症疑いの場合SERPINC1 遺伝子,PC 欠乏症疑いの場合PROC 遺伝子, PS 欠乏症疑いの場合PROS1 遺伝子を調べる.遺伝学的検査を行う際には,患者背景(発症年齢,発症形態,家族歴など),スクリーニング検査での活性値および抗原値,および後天的因子による低下の有無を総合的に評価して遺伝学的検査を行うかどうか検討する必要がある.「指定難病327:特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る.)」の診断基準において遺伝子検査は,診断のDefinite の一項目としてとりあげられている.

4 遺伝子診断上の留意点

AT 活性値,PC 活性値,PS 活性値の低下を認め,過去の報告において因果関係が明らかな遺伝子バリアントを同定できれば,遺伝性血栓症の確定診断となる.しかしながら,AT,PC ,PS の遺伝学的検査においても病的バリアントが同定できない場合もある.遺伝子バリアントが同定されない症例おいても遺伝性血栓症を完全に否定することはできない.患者背景と照らし合わせて診断を総合的に行うことが求められる.現時点では,遺伝子バリアントの相違による疾患リスクの層別化はなされていない.

表42 AT,PC,PS 活性値および抗原値が低下する後天

的因子

後天的因子低下する活性値/ 抗原値

ワルファリンなどの抗ビタミンK 製剤の内服PC,PS胆道閉鎖など胆汁分泌低下にビタミンK 吸収障害PC,PS肝硬変などによる肝臓自体での蛋白産生障害PC,PS,AT DIC PC,PS,AT急性期血栓症に伴う消費PC,PS,AT妊娠PS経口避妊薬などのエストロゲン製剤の使用PS大手術後,熱傷ATネフローゼ症候群AT未分画へバリン,L-アスパラギン酸の投与AT

表43 内服の抗凝固薬によるAT,PC,PS 測定値に与える影響

凝固検査測定方法トロンビン阻害薬(ダビガトラン) FXa 阻害薬(リバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバン)抗ビタミンK 製剤

(ワルファリン)

PC 活性凝固時間法偽高値偽高値(リバーロキサバン)~

影響なし低下

合成基質法影響なし影響なし低下

PS 活性凝固時間法偽高値偽高値(リバーロキサバン,

エドキサバン)~影響なし低下

AT 活性合成基質法(トロンビン法)偽高値影響なし影響なし

合成基質法(Xa 法)影響なし偽高値影響なし

(門平靖子ら. 2018 527)より改変)