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p.78 抽出テキスト

く認められ489, 490),加えてPCSK9 阻害薬の予後改善効果が有意に高かったということが,アリロクマブ491)とエボロクマブ492)でそれぞれ報告されている.医療コストに関しては,マルコフモデルを用いたモデルによる評価で,標準的な治療法にPRS を加えることによりコスト削減効果と疾患関連イベント抑制効果があることが示唆されている493).これらより,将来的にPRS が虚血性心疾患に対する治療プロトコルの向上や薬剤選択,治療方針決定に寄与できることが期待される.

一方,PRS は比較的新しい概念であるため疾患分離能や解釈の正確性,コストも含めた使用の適用,倫理的な問題も含めて日常診療に応用するために解決しなければなら

ない課題は多い494-497).とくにPRS 研究の多くは欧米人を中心に行われてきたことから,ゲノムの民族特異性という観点から,今後日本人の虚血性心疾患における高性能なPRS を創出するために日本人のためのゲノム情報を集積し独自の臨床エビデンスを構築しなければならない.虚血性心疾患におけるPRS に関しては,現時点ではガイドライン化するためのエビデンスが不足しているのが現状であるが,エビデンスの蓄積とともに将来的に虚血性心疾患リスク評価項目におけるPRS の有用性の確立ならびにガイドライン化が大いに期待される.

第12章 肺高血圧症

1 診断分類と遺伝学的検査

肺高血圧症における遺伝学的検査と遺伝カウンセリングについて,推奨クラスとエビデンスレベルを表39 にまとめる.肺高血圧症に対する遺伝学的検査は,わが国では本ガイドライン発行時点(2024 年3 月)において保険適用ではない.検査の実施にあたっては,肺動脈姓肺高血圧(PAH)では10 ~30 代の年齢で発症が多いことから,患者の人生設計にも影響する検査でもあることなどを総合的に考慮し,適切な遺伝カウンセリングに基づく実施が求められる.

肺高血圧症では,血行動態評価によって肺高血圧症と診断された後に,鑑別診断によって原因に応じた細分類を行う.第2 群肺高血圧症の原因となる左心性心疾患,第3 群肺高血圧症の原因となる肺疾患(低酸素血症を含む)の存在を検索し,これらが否定されれば,第1 群のPAH,または第4 群の慢性血栓塞栓性肺高血圧症の可能性が高いと判断される.原因と思われる基礎疾患や心血管系疾患の既往歴がない第1 群PAH のうち,既知のPAH 関連遺伝子に病的バリアントが確認されるか,または家族性発症がみられる症例は,遺伝性PAH と細分類される498-500).よって,

正確な診断分類のために,特発性/ 遺伝性PAH に対する遺伝カウンセリングと遺伝学的検査の実施が推奨される(推奨クラスI).

2 PAH 関連遺伝子

2.1 BMPR2 遺伝子

2.1.1 疫学と浸透率

PAH 関連遺伝子の種類を表40 479, 499, 500)に示す.これらの遺伝子のうち,BMP 受容体II 型(bone morphogenetic protein receptor type 2: BMPR2)遺伝子の頻度が最も高く,欧州のPAH コホートに属する1,000 人以上のPAH 患者の解析では約15% の患者にBMPR2 のバリアントが認められ,それ以外の遺伝子については各1 ~2% 以下であったと報告されている501).海外からの報告では,BMPR2 バリアント保有者がPAH を発症する生涯リスクは約20% との報告があり,浸透率は男性(14%)と比較して女性(42%)