p.73 抽出テキスト
慎重な対応が望まれる. 2.6 治療および生活管理など 身体表現型にそって治療を行う.大動脈拡大の進行予防にはβ遮断薬が用いられることが多いが,Marfan 症候群へのアンジオテンシン受容体拮抗薬のような特異性のある薬剤に関するエビデンスに乏しい. 大動脈拡大,大動脈解離および瘤に対して人工血管を用いた外科手術が行われるが詳細は「2020 年改訂版大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン」337)を参照されたい. 運動制限は特に大動脈の拡大がある場合や解離を伴う場合には,重い物を持ち上げる,息こらえの必要な運動,激しい運動は回避するよう指導する. 2.7 着床前診断 対象とならない.わが国での実施はない. 2.8 予後 最近の手術成績は遠隔成績を含めて良好で,心血管病変を発症しても適切な外科手術および薬物療法・日常生活の管理により長期生存も可能であるが,身体表現型がなく突然の大動脈解離あるいは瘤破裂などで発症した場合,救命困難となることも少なくない. 2.9 類縁疾患・鑑別 他の身体所見を伴う症候性大動脈瘤・解離として, Marfan 症候群(FBN1),TGFβ受容体・リガンドおよびその細胞内情報伝達系であるsmad 群の遺伝子異常に伴うMarfan 症候群類縁疾患(Loeys-Dietz 症候群),血管型Ehlers-Danlos 症候群(EDS)などが鑑別にあがる.それぞれ該当項目を参照されたい. 3 血管炎,末梢動脈疾患 3.1 血管炎(大動脈,中小動脈を含む) 3.1.1 高安動脈炎 高安動脈炎はアジア,中近東での症例が多い一方,北米ではメキシコを除き報告が少ない.また,稀ながら家系内発症も見られるため,遺伝的要因の関与が推測されていた. HLA-B*5201 との関連(オッズ比2 ~3 程度)はわが国での研究で古くより指摘されており388-390),海外でも同様の結果が得られている391, 392).これに加え,東アジアにみられる稀なアレルであるHLA-B*6701 もHLA-B*5201 と独立して高安動脈炎に関連していることがわが国の2 施設から報告されている393, 394). 2013 年にわが国および海外から高安動脈炎のGWAS 解析2 報が同時に発表され,IL12B が人種差を超えた疾患感受性領域と同定された390, 392).IL12B 領域SNP のオッズ比は1.75 程度と,他の自己免疫疾患の疾患感受性遺伝子と比べ高く,疾患の重症度とも関連することが示唆されている390, 395, 396).IL12B は乾癬,クローン病の疾患感受性遺伝子でもある.2018 年のわが国からのGWAS では,新規にPTK 2B,LILRA3/LILRB2,DUSP22,KLHL33, HSPA6/FCGR3A,chr21q22 が疾患感受性領域として同定された397).海外のGWAS では,HLA とIL12B の他, FCGR2A/FCGR3A,IL6,RPS9/LILRB3,chr21q22, PTK2B,VPS8,SVEP1,CFL2,chr13q21 が報告されている392, 398, 399). 3.1.2 巨細胞性動脈炎 高安動脈炎とともに,改訂版チャペルヒルコンセンサス会議(Chapel Hill Consensus Conference: CHCC)分類2012 で大型血管炎と分類される400).高安動脈炎はわが国に多く欧米に少ない一方,巨細胞性動脈炎はわが国に少なく欧米に多い.1998 年のわが国での疫学調査では50 歳以上の有病率は1.48 人/10 万人と米国の200 人,スペインの60 人と比較して少ない401).巨細胞性動脈炎はHLA- DRB1*0401,HLA-DRB1*0404 との関連が報告されている402, 403).このアレルは欧米白人に多く日本人に少ないことが,わが国に本疾患が少ない理由である可能性がある.巨細胞性動脈炎と高安動脈炎は病理学的に共通した特徴もあ