p.68 抽出テキスト
る)における遺伝子解析において病的バリアントが同定される遺伝子頻度がTGFBR1 が20 ~25%,TGFBR2 が55 ~60%,SMAD3 が5 ~10%,TGFB2 が5 ~10%, TGFB3 が1 ~5% 345)と報告されており,これら遺伝子群をパネル解析する必要性が理解できる. 1.2.2 診断基準 Loeys-Dietz 症候群において,症状頻度の高い所見としては,心血管系症状(動脈瘤・動脈蛇行)と骨格症状(特徴的顔貌,側弯,漏斗胸または鳩胸,クモ状指趾,内反足)があげられるが,Marfan 症候群との鑑別が問題となることも少なくないため,この点からも遺伝子診断の意義が大きい.・ 心血管系:大動脈瘤・中小動脈瘤・蛇行,先天性心奇形(PDA,ASD,心室中隔欠損,BAV).・ 顔貌上の特徴:眼間開離,口蓋裂・二分口蓋垂,小顎・ 顎後退,頬骨低形成,眼瞼裂斜下,青色強膜,斜視,高口蓋,叢歯など.・ 骨格系:側弯,漏斗胸・鳩胸,細長い指,先天性内反足, 頭蓋骨縫合早期癒合による頭蓋変形,頸椎不安定症・頸椎骨奇形,関節過可動性,関節拘縮,扁平足など.・ 皮膚:静脈血管が透けてみえる薄い皮膚,ヘルニア,創 傷治癒遅延など.・ その他:水晶体偏位は認めない.気胸はありうるが低頻 度.脊髄硬膜拡張もしばしば認める.頭蓋骨縫合早期癒合症や水頭症に伴うものを除けば,知的発達は正常とされる. 1.2.3 心臓血管系の異常 バルサルバ洞拡大,大動脈解離・大動脈瘤(特に胸部)が主な表現型であるが,小児・乳児期発症が多く進行が一般的に速い.小さい大動脈径でも解離を発症するといわれるが,一方,個人差も大きく血管径が大きくとも解離しない例も存在する.ただしMarfan 症候群では小児期の大動脈解離は比較的まれであるのに対し,Loeys-Dietz 症候群では小児でも解離を発症する傾向があり注意を要する.またLoeys-Dietz 症候群では,総腸骨動脈,鎖骨下動脈,上腸間膜動脈,脳動脈,冠動脈などの分枝動脈にも瘤形成あるいは解離を生じることがあり,全身の血管スクリーニングが求められる.動脈蛇行が目立ち頭頸部の動脈で特に高頻度に認められる. 1.2.4 臨床検査・評価 胸部X 線検査,心電図,心エコー,CT あるいはMRI検査を行うが,心臓・大動脈だけではなく,脳を含めた全身の血管のスクリーングを行うことが肝要である.小児期 から評価を要することが多く,実施可能であればMRI のメリットが大きい. 1.2.5 注意すべき病状の進行 大動脈瘤・大動脈基部拡大の進行,大動脈解離の有無および分枝血管の瘤・解離について注意を要する. 1.2.6 治療および生活管理など Marfan 症候群と同様,β遮断薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬が使用される.大動脈拡大,大動脈解離および瘤に対し2020 年改訂版大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドライン337)に従いMarfan 症候群に比較し,より早期(拡大が少ない段階)に手術適応とする. 1.2.7 着床前診断 対象外でありわが国では実施されない. 1.2.8 予後 予後は,血管病変,特に大動脈病変に大幅に依存する.早期治療介入により大動脈合併症回避・予後改善につながる.一方,小児期に診断されないまま成人し,重篤な合併症である大動脈解離を発症し初めて診断される例も少なくない.Marfan 症候群と比較して血管表現型が重度であることが多くMarfan 症候群以上に慎重な経過観察と的確な時期の治療介入が求められる. 1.2.9 類縁疾患・鑑別 他の身体所見を伴う症候性大動脈瘤・解離として,先述のMarfan 症候群,この項で述べたTGFβ受容体・リガンドおよびその細胞内情報伝達系であるSmad 群の遺伝子異常に伴うもの,次項に詳述されている血管型Ehlers- Danlos 症候群が鑑別にあがる.加えて,Loeys-Dietz 症候群に類似した身体所見を有し大動脈表現型を示すX 染色体連鎖性遺伝形式をとるBGN 遺伝子変異346),COL1A1遺伝子またはCOL1A2 遺伝子の変異を認める骨形成不全症347)での大動脈疾患,そのほか表現型はEhlers-Danlos症候群に近似し,X 染色体連鎖性遺伝形式をとり異所性灰白質症を伴うFLNA 遺伝子変異348)などの報告もある.診断はそれぞれの臨床所見と当該病因遺伝子変異の同定によるが,現時点で未同定の病因遺伝子もあると考えられ,今後の研究の進展が期待される.