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p.66 抽出テキスト

り疾病形成がなされると考えられてきたが,遺伝子改変マウス326)の解析さらに類縁疾患に見出される遺伝子変異の研究成果からTGFβ-smad シグナル系の慢性的な活性化が生じることにより病態形成がなされると考えられている. FBN1 遺伝子に検出されたバリアントがpathogenic か否かについてはClinGen FBN1 Expert Panel ガイドライン327)を参照されたいが,文献的にはナンセンス変異,ミスセンス変異,欠損・挿入, スプラインシング異常等,多彩な病的バリアントが報告されるが,ミスセンス変異については蛋白質のジスルフィド結合に関与するシステイン残基が関与するバリアントが病的意義が高いといわれている.また新生児期から早期発症・表現型も重度であることが多い新生児Marfan 症候群の場合,エキソン23-32 のバリアントが多いと言われている328).

また,わが国からの最近の報告では,フィブリリン1 の発現量が低下する遺伝型(ハプロ不全型:HI 型)とフィブリリン1 の機能が低下する遺伝型(ドミナント・ネガティブ型:DN 型)とに大別した場合,前者で大動脈瘤の拡大速度が速く,後者で相対的に遅いが,しかし後者DN 群の中でエキソン25-36,43-49 内でのシステイン残基に関連した変異は進行が速いとの報告がある329).

現在,Marfan 症候群の遺伝子診断は保険償還されており,FBN1 のみならず後述するTGF-smad 系の遺伝子群,家族性胸部大動脈瘤・解離(familial thoracic aortic aneurysm and dissection: FTAAD)関連遺伝子群についてパネル解析がなされることが多い.特に小児あるいは若年者においてはMarfan 症候群および類縁疾患において表現型が揃っていないことが少なくないため,早期から治療介入を行う点でも遺伝子診断を行う意義が高い.ただしバリアントが検出されないことで大動脈(結合織)疾患を否定することにはならないため,その点に留意を要する(表33).

1.1.3 診断基準

2010 年Ghent 基準の改訂版(revised Ghent nosology) 330)が提唱され,大動脈表現型(バルサルバ洞拡大(年齢・体格から考えられる平均的径からの偏移,すなわちZ score を求め331, 332),Z score が2 あるいは3 以上のものを有意な拡張とする,そのほか大動脈解離,大動脈瘤・解離に対するグラフト置換術などの外科治療後など)と水晶体

偏位,家族歴・遺伝子異常が特に重視されることとなり,従来診断基準の項目にあった身体的・整形外科的特徴,僧帽弁逸脱,皮膚所見,肺病変,硬膜拡大などはsystemic score としてスコア化し7 点以上の場合に身体所見ありとする診断法となった.本基準の概要は以下の通りである.

以下のいずれかを満たす場合,Marfan 症候群と診断する330).【家族歴がない場合】1大動脈拡大かつ水晶体偏位2大動脈拡大かつFBN1 異常3大動脈拡大かつ全身スコア7 点以上4水晶体亜脱臼かつ大動脈拡大を生じるFBN1 異常【家族歴がある場合】1水晶体亜脱臼かつ家族歴2全身スコア7 点以上かつ家族歴3大動脈拡張かつ家族歴

なお全身スコアは以下の項目について加点7 点以上を有意とする.

・ 手首徴候陽性かつ親指徴候陽性:3 点一方のみの場合1 点・ 鳩胸:2 点漏斗胸あるいは胸郭非対称は1 点・ 足部変形:2 点   偏平足のみは1 点・ 気胸:2 点・ 硬膜拡張:2 点・ 寛骨臼突出症:2 点・ 上節下節比の低下かつ指極長/ 身長比の増大(重度の

側弯がない):1 点・ 側弯あるいは胸腹部後弯:1 点・ 肘関節伸展障害:1 点・顔貌特徴:1 点(長頭,頬骨低形成,眼球陥凹,下顎後退症,眼瞼裂

外下方傾斜のうち3 つ以上)・ 皮膚線条:1 点・ -3D以上の近視:1点・ 僧帽弁逸脱症:1 点

1.1.4 心臓血管系の異常

先述の診断基準にも示したように,バルサルバ洞拡大,大動脈解離・大動脈瘤(特に胸部)が主な表現型であるが僧帽弁逸脱も頻度が高い.稀に僧帽弁輪石灰化,肺動脈拡張などが観察される.

表33 Marfan 症候群における遺伝学的検査の推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

Marfan 症候群の確定診断のための遺伝学的検査を行う. I B