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p.59 抽出テキスト

有し,心機能障害・腎機能障害・脳血管障害を示すものを古典型Fabry 病と呼ぶ.一方で,発症年齢が中年期と比較的遅く症状が心臓に限られる遅発性の心亜型Fabry 病も存在する264).

心病変はHCM 様の形態をとり,臨床的にHCM とされた患者の1% 前後を本疾患が占めると報告されているため,左室肥大を有する患者ではFabry 病を鑑別に挙げる必要がある265-268).

男性患者の場合には血漿や白血球のαガラクトシダーゼ活性の低下を証明することで診断できる.一方で,女性患者の場合にはヘテロ接合体となるため,臨床症状は軽症から重症までさまざまな表現型をとりうることに加え,酵素活性は正常値を示す場合もある269).したがって,女性患者においては酵素活性のみでは診断困難な症例が存在するため,遺伝学的検査が有用となる.

本症に対する疾患修飾療法として,現在,酵素補充療法と薬理学的シャペロン療法が利用可能である.薬理学的シャペロン療法は,有効と考えられる変異(amenable mutation)に適合する場合のみに使用されるため,治療法選択においても遺伝学的検査が重要となる.

4.4 ミトコンドリア病

ミトコンドリアの構造や機能に関与する遺伝子の異常が原因で酸化的リン酸化が障害されることにより生じる疾患である.1/5,000 ~10,000 の有病率とされ,ミトコンドリア病患者で心病変を認めるものは20 ~25% とされる270, 271).心病変としては,HCM 様,DCM 様,拘束型心筋症様のいずれの病型もとりうる272, 273).

ミトコンドリアDNA はすべて母親から子へ引き継がれる.そのため,ミトコンドリアDNA の変異を原因とする場合には,母系遺伝の遺伝形式をとる.患者の細胞内では正常型,異常型のミトコンドリアDNA が混在する,いわゆるヘテロプラスミーの状態となる.閾値効果,すなわち細胞内のミトコンドリアDNA の変異率が一定を超えると,症状が発症するとされる.ただし,各組織や臓器によっても障害の閾値は異なるとされる274).

ミトコンドリア病をきたす核遺伝子変異としてこれまでに250 種類以上が報告されており,遺伝形式は常染色体顕性遺伝(優性遺伝),常染色体潜性遺伝(劣性遺伝),X連鎖性遺伝などすべての遺伝形式が報告されている.この核遺伝子変異によって発症する場合には小児期の発症が多

いことも知られている275).

厚生労働省の診断基準276)において,遺伝学的検査を除いた臨床所見だけでは診断が困難なケースも存在する.そのため,その他の臨床所見からミトコンドリア病が疑われるケースにおいては,遺伝学的検査を考慮すべきであると考えられる.一部のミトコンドリア病の遺伝学的検査は保険償還されている.

4.5 Pompe 病

Pompe 病は常染色体潜性遺伝(劣性遺伝)形式をとる疾患であり,GAA 遺伝子の異常により,酸性αグルコシダーゼの活性が低下あるいは欠損することで,ライソゾームへのグリコーゲン貯留が生じる疾患である277).結果として,心筋症と筋力低下,肝腫大などを発症する.完全酵素欠損症である古典型Pompe 病においては,急速に進行する心肥大をきたす.未治療では呼吸不全,心不全により1 歳までに死亡する.残存酵素活性を有する遅発型Pompe 病の場合,心筋症の合併は少ない278, 279).

4.6 Danon 病

Danon 病はライソゾーム関連膜プロテイン2(LAMP2)遺伝子異常が原因で発症するX 連鎖性遺伝形式をとる疾患である.骨格筋障害,心筋症,知的障害を3 主徴とする280).LAMP2 遺伝子異常のヘミ接合体である男性患者の場合は女性患者と比較して早期発症かつ重篤な転帰を辿るとされる281, 282).心筋症としては心肥大の形式をとることが多いとされ男性症例では約90% がHCM 様病態を呈するが,進行するとDCM 様となる.女性患者では,男性と比較しDCM 様形態をとることが多いと報告されている283).

4.7 筋ジストロフィー

Duchenne 型およびBecker 型筋ジストロフィーはX 連鎖性遺伝形式をとり,ジストロフィン遺伝子(DMD)異常を原因とする.いずれも骨格筋の筋力低下を示す疾患であるが,心筋症としてDCM 様形態をとりうる284).