p.56 抽出テキスト
口集団における頻度が低く,DCM 原因変異として既報のバリアント,あるいは,家系におけるco-segregation が示されたバリアントを診療上意義のあるバリアントと判断するのが現実的な対応と考える. 二次性心筋症との鑑別を行ううえで,DCM の全エクソーム解析による遺伝学的検査(既報の原因遺伝子を含む)が推奨される.ラミンA/C 遺伝子変異の検出の有用性に関しては,日本人におけるエビデンスが確立しているので推奨クラスI とした.他の遺伝子変異に関しても今後の研究が進み,日本人におけるエビデンスが確立すれば,推奨クラスI となりうる.なお,2023 年10 月時点ではDCM の遺伝学的検査,遺伝カウンセリングは保険償還されない(表23,24). 3 不整脈原性右室心筋症(ARVC) 3.1 疾患概念 ARVC は,主に右室を主体とした心筋の線維脂肪化を原因とし,右室由来の心室不整脈および右室の拡大をきたす疾患である.最近は不整脈原性心筋症(arrhythmogenic cardiomyopathy: ACM)の1 つとして分類されている238).罹患頻度は2,000 ~5,000 人に1 人程度で,男性の頻度がやや高いとされている239).激しい運動がARVC の進行に影響を与えるため240),欧米などではスポーツ選手の突然死の原因として重要視されている. 3.2 診断 平均的なARVC の発症年齢は30 ~40 代で,VT/心室細動(ventricular fibrillation: VF)とそれに伴う失神や心肺停止で診断されることが多い.日本では学校心臓検診が普及しているため,心電図異常で診断されることもある. ARVC の診断は2010 年のTask Force Criteria 241)に基づいて実施される.「2022 年改訂版不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン」242)の表34 に示すように,この診断基準は6 つの項目から成り立っており,それぞれの項目に大基準と小基準が設定され,基準を満たす項目数によって,Definite(確定),Borderline(境界),Possible(可能性)の3 段階で診断される.6 つ目の項目は家族歴であり,家系内にARVC 患者がいることのみならず,病因となる遺伝子変異が同定された場合も大基準に含まれる. 3.3 ARVC の原因 ARVC の主な原因は,細胞間接着に寄与するデスモゾーム(図3)をコードする遺伝子の変異である.デスモゾームは細胞膜上に発現しているDesmoglein とDesmocollin,細胞内に存在するPlakophilin とPlakoglobin,そしてDesmoplakioin の5 つのタンパクで構成されている.心臓で発現しているこれらのタンパクをコードする遺伝子が, DSG2,DSC2,PKP2,JUP とDSP であり,いずれの遺伝子変異もARVC の原因として報告されている243).他にもサルコメアや細胞骨格と関連した遺伝子がARVC の原因として報告されているが,最近のClinGen 244)の検討で, 表24 DCM における遺伝カウンセリングの推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 拡張型心筋症患者に対しての遺伝カウンセリングを行う(血縁者の診断[cascade screening]にかかわらず). I B遺伝子診断を受ける際の遺伝カウンセリングを行う(遺伝子診断の意義および生じうるリスクについての説明). I B心血管疾患の遺伝学に精通した者による遺伝カウンセリングを考慮する. IIa B 表23 DCM における遺伝学的検査の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル ラミン A/C 遺伝子変異の検出を行う. I B発端者において原因変異が確定した家系における,血縁者の当該原因変異有無の検査を行う. I Bタイチン,RBM20,ホスホランバン,フィラミンC,BAG3,デスミン,デスモプラキン,SCN5A 遺伝子変異,および肥大型心筋症にかかるサルコメア遺伝子変異など原因変異の検出を考慮する. IIa B