p.55 抽出テキスト
バリアント陰性者がDCM 非発症)を示せないものもある.また,TTN truncating variant は健常者の3% にみられ235),一般人口集団においても,心機能・心リモデリングに影響するリスク因子として作用する236).米国におけるPennMedicine Biobank コホート,Geisinger コホートでも, TTN truncating variant は併せて,それぞれ1.2%,0.6%にみられ,DCM 発症の遺伝的リスクであった.また, DCM 診断で補正しても,AF,心不全,LVEF 低下の有意なリスクとして作用していた237).さらにTTN truncating variant の周産期心筋症,アルコール性心筋症,抗がん剤心筋症など二次性心筋症の発症への関与も明らかになってきた.TTN truncating variant は単独でDCM を発症するような「効果の強い」variant から,他の遺伝要因や環境リスク因子が共存してはじめて発症するような「効果の弱い」variant まで幅広いと考えられる.この「効果の弱い」variant にストレス(アルコール,妊娠,抗がん剤)が追加されると二次性心筋症を発症する.DCM においても,「効果の弱い」variant の場合にはそれ単独で発症に至るには効果が 不十分であり,他の遺伝要因あるいは環境リスク因子が共存してはじめて心筋症発症に至るという可能性(2 ヒット仮説)を考慮した方がよいと思われる.以上のように,TTN truncating variant の臨床的意義を解釈する際には注意が必要である. 2.3 バリアントの病的意義判断 NGS の活用により,DCM 患者に多くのバリアントが同定されるようになった.遺伝学的検査で同定されたバリアントの病的意義を的確に判断して,遺伝子診断につなぐ「variant classification」のステップこそが今や遺伝学的検査の最大のボトルネックである.家系が小さい,血縁者ゲノムの解析ができない,などの理由により,疾患との因果関係を有する「原因変異」と判定されるに至らず,VUS に分類せざるを得ないバリアントも相当数存在する.一般人 表22 DCM との関連が報告されている遺伝子 遺伝子染色体座位遺伝様式 ○サルコメアcardiac actin(ACTC) 15q14 AD cardiac β-myosin heavy chain (MYH7) 14q11 AD cardiac troponin T(TNNT2) 1q32 AD cardiac troponin I(TNNI3) 19q13 AR cardiac troponin C(TNNC1) 3p21 AD α-tropomyosin(TPM1) 15q22 AD titin(TTN) 2q31 AD cardiac myosin binding protein C (MYBPC3) 11p11 AD cardiac α-myosin heavy chain (MYH6) 14q12 AD myosin light chain kinase 3(MYLK3) 16q11 AD ○Z 帯および関連分子αB-crystallin(CRYAB) 11q22 AD four and a half LIM protein 2(FHL2) 2q12 AD muscle LIM protein(CSRP3) 11p15 AD T-cap (telethonin)(TCAP) 17q12 AD cypher/ZASP(LDB3) 10q22-q23 AD α-actinin-2(ACTN2) 1q42-q43 AD BCL2-associated athanogene 3 (BAG3) 10q25-q26 AD nexilin(NEXN) 1p31 AD myopalladin(MYPN) 10q21 AD CARP(ANKRD1) 10q23 AD遺伝子染色体座位遺伝様式 ○細胞骨格δ-sarcoglycan(SGCD) 5q33 AD β-sarcoglycan(SGCB) 4q12 AD dystrophin(DMD) Xp21 X-linked desmin(DES) 2q35 AD fukutin(FKTN) 9q31 AD metavinculin(VCL) 10q22-q23 AD laminin-α4(LAMA4) 6q21 AD integrin-linked kinase(ILK) 11p15 AD lamin A/C(LMNA) 1q21 AD emerin(EMD) Xq28 X-linked ○イオンチャネル・カルシウムハンドリングphospholamban(PLN) 6q22 AD K ATP channel(ABCC9) 12p12 AD cardiac sodium channel(SCN5A) 3p21 AD ○転写因子Eya4(EYA4) 6q23 AD ○その他presenilin 1(PSEN1) 14q24 AD presenilin 2(PSEN2) 1q31 AD RNA binding motif protein 20 (RBM20) 10q25 AD ○ミトコンドリアmitochondrial DNA Mitochondria Maternal AD:常染色体顕性遺伝,AR:常染色体潜性遺伝森田啓行. 日内会誌 2014;103:285-292 230a)より改変(心筋症診療ガイドライン(2018 年改訂版 218)より)