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因子(診断時年齢,最大壁厚,HCM の家族歴の有無,突然死の家族歴の有無,左室のリバースカーブの形態の有無)と1 つの陰性予測因子(高血圧の有無)の項目を用いてスコア化される.このスコアの上昇に相関して,サルコメア遺伝子原因変異の検出率が高まることが示されている229).本スコアは日本人患者においても有用であることが検証された230). 1.2 遺伝学的検査の課題 前述のように,HCM に対する遺伝学的検査の実施は臨床上少なからず有用性があると考えられる.しかし,検査対象の家系情報が限られるなどの理由から,実際には同定されたバリアントが真の原因であるか判定することが困難である場合も多い.今後はバリアントの病原性判定法を含めた遺伝学的診療システムの構築,遺伝学的検査の精度保証,臨床情報とリンクした遺伝子解析結果のデータベース構築などが必要となる. 2 拡張型心筋症(DCM) DCM発症には遺伝要因が関与している.ラミン(LMNA),タイチン(TTN),βミオシン重鎖(MYH7),心筋ナトリウムチャンネル(SCN5A),転写因子EYA4(EYA4),RNA結合モチーフタンパク20(RBM20)に関しては,DCM 家系の連鎖解析から責任染色体座位が判明しさらに原因変異同定に至った.しかし,DCM では連鎖解析に足る大家系が少ないこともあり,その他に関しては,候補遺伝子アプローチにより同定された「原因変異」である.そのため変異とDCM との因果関係の証明が十分でないケースも散見される.現在までに約40 種類の遺伝子に「原因変異/pathogenic variant」が報告されている(表22) 218, 230a).心機能に関与するいかなるパスウェイが障害を受けても結果としてDCM の病態(心筋細胞障害,細胞死,線維性置換)をきたしうると考えられる.すなわち,各バリアントは,力発生低下,カルシウム感受性低下,力伝達低下,カルシウム再取り込み低下などさまざまな機序を介して最終的に心機能低下を惹起すると考えられる.このように原因遺伝子のラインナップからみてもDCM はヘテロな発症原因・発症機序が混在した疾患カテゴリーであることがわかる.また,患者と同じ変異を有している血縁者でも患者と症状・重症度が異なる事例が経験されるので遺伝学的検査結果の解釈の際には注意が必要である. 2.1 ラミンA/C 遺伝子変異 DCM の原因遺伝子の中で最もエビデンスが確立しているのは,ラミン遺伝子 (LMNA)である.ラミンは核膜内側構成タンパクでありメカノセンシング,シグナル伝達,核-細胞質間輸送,DNA 複製を制御する.ラミン変異陽性のDCM は房室ブロックを合併するのが典型的である.したがって,伝導障害を合併するDCM ではラミン遺伝子の検査が強く勧められる.わが国における検討でも,ラミン遺伝子のtruncating mutation が50 歳未満の刺激伝導系障害,60 歳未満の心房性不整脈および左室駆出率(LVEF)低下(50% 未満)のリスクであることが明らかになっている231).近年,ラミン変異による心筋症はarrhythmogenic cardiomyopathy という疾患カテゴリーとして注目されている.ラミン変異陽性は心室頻拍(ventricular tachycardia: VT)等の心室性不整脈の予測因子としてきわめて優れており232),ICD 早期植込みを判断する根拠として有効と考えられる.また,ラミン変異陽性DCM は初期薬物治療に関する反応性(逆リモデリング)が不良で,心不全の進行,突然死が多く予後不良であることも確認された233).このように,ラミン遺伝子変異の検出は,DCM 患者の予後予測にも有効である. 2.2 タイチン遺伝子変異 タイチンはサルコメアのZ 帯からM 帯までをつなぐ巨大弾性タンパク(35991 アミノ酸)であり,受動的張力を制御するだけでなく心筋張力のセンサーとしてはたらく234).タイチン遺伝子(TTN)の選択的スプライシングにより異なる大きさのタイチンアイソフォームができる.心臓発生の過程で,また病態に応じてアイソフォームシフトを起こすことがタイチンの大きな特徴である.大きいN2BA タイチンはPEVK 繰り返し配列(受動的張力を制御する)を有する全長アイソフォームであり,よりcompliant な(伸びやすい)心筋,一方,小さいN2B タイチンはPEVK 繰り返し配列を一部欠いたアイソフォームであり,よりstiff な(伸びにくい)心筋と関係している. DCM の「原因変異」としてTTN 変異が最も高頻度であり,C 末端欠損型タイチンタンパクの生成を惹起するtruncating variant が家族性DCM の25%,孤発性DCMの18% にみられる234).そもそもtruncating variant は理論上,タンパクの構造・機能に影響を及ぼすので原因変異として妥当と思われるが,実際には浸透率は低く,cosegregation(血縁者解析でバリアント陽性者がDCM 発症,