p.48 抽出テキスト
てんかん薬を必要とすることが多い.約50% に先天性心疾患を合併し,ASD,VSD,PDA,肺動脈弁狭窄(pulmonary valve stenosis: PVS)など,単純型心疾患が多い.わが国の22 人の検討では,ASD が13 人(59%)と最も多く, PVS 6 人(27%),PDA 5 人(23%)で,複雑型心疾患は認められなかった.欠失の大きさや部位と心疾患の程度に相関は明らかではなかった.また,36% に高コレステロール血症が認められた158). 1.9 5p 欠失症候群 1.9.1 疾患概念 5 番染色体短腕の部分欠失により,小頭,成長障害,精神発達遅滞,筋緊張低下,顔貌上の特徴をきたす染色体異常症候群. 1.9.2 診断 G 分染法による染色体検査では欠失が同定されないことがある.5 番染色体短腕のプローブを用いた染色体検査(FISH 法)で検出されるが,検査会社では行われていない.マイクロアレイ検査(アレイCGH 法)で染色体ゲノムコピー数異常を検出し,本症候群を診断することができる.マイクロアレイ検査は保険収載され,検査会社に依頼して行うことができる. 1.9.3 頻度 出生15,000 ~50,000 人に1 人. 1.9.4 遺伝的要因 5 番染色体短腕の腕間または端部の欠失で,欠失範囲は560kb から40Mb まで幅広い.単純欠失が約80 ~90%を占め,精子形成時の染色体切断に由来することが多いとされ,欠失が起きる染色体の80 ~90% は父親由来である. 10 ~15% は不均衡型転座,その他,少数例で腕間欠失(3~ 5%),モザイク(1.4%),逆位(0.5%),環状染色体(0.5%)による159). 1.9.5 再発率 単純欠失の場合,再発率は低い.不均衡型転座による5p 欠失症候群の場合は,親が均衡型転座保因者である可能性があり,次子の再発率は上昇する.母が均衡型転座保因者の場合は約10%,父が均衡型転座保因者の場合は約5% の再発率である. 1.9.6 症状・予後・管理 成長障害,精神発達遅滞,筋緊張低下,猫が鳴くような甲高い泣き声を新生児期,乳児期から認め,小頭,眼間開離などの特徴的な顔貌を呈する.年齢が進むにつれ,低下していた筋緊張はむしろ亢進する.側弯の頻度も高い.約30% に先天性心疾患を合併し,ASD,VSD,PDA など,単純型が多い159).心疾患の責任領域として,5p 中間部の3.6Mb 領域が候補に挙げられている160). 2 遺伝子の病的バリアントによる 先天性心疾患 2.1 Alagille 症候群 2.1.1 疾患概念 細胞内シグナル伝達分子Jagged 1 の機能低下により,肝内胆汁うっ滞,先天性心疾患,骨格異常,眼の異常,特徴的な顔貌をきたす常染色体顕性遺伝(優性遺伝)疾患. 2.1.2 頻度 出生30,000 人に1 人. 2.1.3 遺伝的要因 細胞内Notch シグナル伝達系に関与するJagged 1 タンパクをコードするJAG1 遺伝子(20p12.2),およびJagged 1 の受容体をコードするNOTCH2 遺伝子(1p12)の病的バリアントが同定されている.典型的な臨床症状を呈する大半の症例で,病的バリアントが検出される.約70% は新生突然変異で,表現型と遺伝子型の相関は認められない161, 162).Notch シグナルはあらゆる細胞間相互作用に関与しており,その障害は多臓器にわたる多彩な症状の原因となる.遺伝子検査は保険収載され,公益財団法人かずさDNA 研究所・かずさ遺伝子検査室28)で受託している. 2.1.4 症状・予後・管理 生後6 ヵ月以内に黄疸,灰白色便,肝脾腫などの胆汁うっ滞症状を認める.肝臓内の小葉間胆管の減少が特徴的であるが,6 ヵ月未満の乳児では,肝臓病理組織では明らかではないことがある161).無症状の肝機能障害から移植を要する肝不全まで,重症度は多様.広く突出した前額部,落ちくぼんだ眼,小さくとがった顎などの顔貌上の特徴を